月の形は、なぜ毎日変わるの?
― 欠けているのではなく、光る側を見ています
細い三日月、半分の月、まんまるの満月。月は毎晩、少しずつ形を変えます。けれど、月そのものが欠けたりふくらんだりしているわけではありません。月はいつでも、半分だけが太陽に照らされた球のままです。変わっているのは、その「光っている側」を私たちが見る角度のほうです。
夕方、西の空にほそい月がかかっています。数日後の同じ時刻に見上げると、今度は南の空で半分の月になっています。
さらに一週間ほどたつと、日が沈むころに東の空からまんまるの月が昇ってきます。形も、見える場所も、時刻もいっしょに動いていきます。
よく「地球の影が月を隠している」と説明されることがあります。けれど、それだと毎晩ぴったり同じ順番で形が変わることも、三日月がいつも夕方の西に出ることも、うまく説明できません。
理由は、大きく2つです
月は自分では光りません。太陽の光をはね返しているだけです。ボールに横から光を当てれば、当たった側だけが明るくなります。月も同じで、太陽に向いた半分がいつも昼、反対側がいつも夜です。この形は、けっして変わりません。
月は地球のまわりを回っています。そのため、地球から月を見る向きが毎日少しずつ変わります。光っている半分がまるごと見える日もあれば、ほとんど裏側にまわってしまう日もあります。この「見える割合」が、月の形の正体です。
つまり月の形は、月・地球・太陽という三つの位置関係だけで決まります。順に見ていきましょう。
光っている半分を、横から見るとどうなるか
手元にボールと懐中電灯があれば、すぐに確かめられます。暗い部屋でボールに光を当てると、光の側だけが明るく光ります。そのボールを持って、自分のまわりをぐるりと一周させてみてください。
光源と自分のあいだにボールがあるとき、こちらを向いているのは影の側だけです。これが新月です。逆にボールを自分の背後にもっていくと、明るい面がまるごと見えます。これが満月です。その途中では、明るい面と暗い面が半分ずつ、あるいは細い弧として見えます。図1を見てください。月が地球のまわりのどこにいるかで、見える形が決まっていくようすを描いています。
形が一周するまでに、なぜ29.5日もかかるの?
月が地球のまわりを一周するのにかかる時間は、約27.3日とされています。ところが、新月から次の新月までは約29.5日です。二日ほど長いのはなぜでしょうか。
月が地球を回っているあいだに、地球のほうも太陽のまわりを進んでいるからです。太陽の方向そのものがずれていくので、月は一周してもまだ「太陽と同じ向き」には戻れません。その分を追いかけるのに、あと二日ほどかかります。形が変わる周期は、月の一周より少しだけ長くなるのです。
月は一日に、空の上を約12度ぶん東へずれていきます。地球の自転がその角度を追いつくのに、およそ50分かかります。だから月の出は毎日少しずつ遅くなり、同じ時刻に見上げると、月は前の日より東寄りに移っています。夕方に三日月、真夜中に満月と、形ごとに見える時間帯が決まっているのはこのためです。
地球の影が月にかかるのは月食のときだけで、一年に数回しかありません。ふだんの満ち欠けに、地球の影はまったく関係していません。月の通り道は地球の公転面から約5度かたむいているため、満月のたびに影へ入ることはないのです。
まとめ
月はいつでも、太陽に向いた半分だけが光っている球です。地球から見る角度が毎日少しずつ変わるので、光っている面の見える割合が変わり、それが三日月や半月や満月として目に映ります。周期が約29.5日になるのは、地球自身も太陽のまわりを進んでいるからです。
月は欠けていません。
欠けて見えるのは、私たちの立ち位置のほうです。
月がいつも同じ面を地球へ向けている理由は月はなぜ、いつも同じ面をこちらに向けているの?に、満月や新月のころに潮の差が大きくなる話は潮の満ち引きは、なぜ1日に2回もあるの?にあります。月食で月が赤く見えるしくみは皆既月食のとき、月はなぜ消えずに赤く見えるの?で、明るい空でも天体が見えるかどうかの話はなぜ昼間は星が見えないの?で説明しています。
- 暗くした部屋で、机の上に懐中電灯を置き、横向きに光らせます。これが太陽の代わりです。
- 白いボールを手に持ち、腕をのばしたまま、その場でゆっくり一回転します。自分が地球、ボールが月です。
- 回りながら、ボールの明るい部分の見え方をメモします。光源の側では暗く、背にしたときはまるく光り、途中では半分や細い弧になるはずです。
実際の空でも確かめられます。三日月の細い光の向きを毎日メモすると、その先にいつも太陽の沈んだ方向があることに気づきます。
もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
- 中学中学校の理科で習う範囲
- 高校高校の「地学基礎」で習う範囲
- 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
- 大学高校では習わない、大学の専門科目(天文学・惑星科学)の内容
- 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話
中学用語:この現象には名前があります
- 朔望月(さくぼうげつ):新月から次の新月までの周期のことです。約29.5日とされています。
- 恒星月(こうせいげつ):月が星の並びに対して地球を一周する周期です。約27.3日とされています。
- 月齢(げつれい):新月からの経過日数で、月の形を表す数です。満月のころは、およそ15前後になります。
- 白道(はくどう):空の上で月が通っていく道すじのことです。太陽の通り道に対して、約5度かたむいています。
中学高校式で確かめる:月の出は、毎日どれだけ遅れるのか
形が一周する周期から、月の出が毎日どれくらい遅くなるかを出してみます。使うのは、わり算とかけ算だけです。
| 形が一周する周期 | 約29.5日 |
| 一周の角度 | 360度 |
| 地球の自転が1時間に進む角度 | 15度 |
| 月が1日にずれる角度 | 360 ÷ 29.5 ≒ 12.2 |
| その角度に追いつく時間 | 12.2 ÷ 15 ≒ 0.81 |
| 分に直す | 0.81 × 60 ≒ 49 |
1日あたり約12度、時間にしておよそ49分となりました。実際の月の出の遅れも、平均すると1日あたり50分ほどとされています。ここで使った単位は、角度が度、時間が時と分です。記号は使わず、日常の言葉のままで計算しています。
高校高校+見える明るさは、光る面積の割合とは一致しません
高校光っている面の見える割合は、太陽・月・地球のなす角度から決まります。この角度が0度に近いと満月、180度に近いと新月、90度のときが半月です。
高校+ところが半月の明るさは、満月の半分にはなりません。実際にはずっと暗く、満月の一割ほどしかないとされています。月の表面はこまかい砂のような粒でおおわれていて、正面から光が当たったときにだけ、来た方向へ強くはね返す性質があるためです。この効果は衝効果と呼ばれ、満月のころの明るさを急に持ち上げます。
大学月はなぜ、思ったより暗い天体なのか
月の表面が反射する光の割合は、平均するとおよそ1割程度とされています。これは、白い雪原よりもずっと低く、古いアスファルトに近い値です。夜空でまぶしく見えるのは、月が明るい物体だからではなく、まわりが暗いからにすぎません。惑星科学では、この反射する割合と表面の粒のならびを結びつけて、月や小惑星の地表の性質を遠くから推定しています。
研究まだはっきりとはわかっていないこと
- 月の生い立ち 大きな天体が地球にぶつかってできたという考えが有力ですが、月と地球の岩石の成分がよく似すぎている点をどう説明するかは、まだ議論が続いています。
- 地球照の明るさ 細い月の暗い側がうっすら光る現象は、地球が反射した光によるものです。その明るさから地球の雲の量を測る試みが進んでいますが、精度の見積もりは定まっていません。
- 月の内部 中心の近くに、部分的にとけた層が残っているかどうかは決着していません。表面に置ける観測装置が少なく、判断の材料が足りないためです。
つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。位置関係で形が決まるという骨格は確かですが、月そのものにはまだ謎が残っています。
教科書とのつながり(レベル別)
| レベル | 科目・単元 | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 中学 | 理科・月の満ち欠けと運動 | 光る半分と見る角度、ボールの観察 |
| 高校 | 地学基礎・太陽系の天体 | 朔望月と恒星月の違い、月の出の遅れ |
| 高校+ | 地学・天体の位置と明るさ | 半月が満月の半分の明るさにならない話 |
| 大学 | 天文学・惑星科学 | 反射する割合と表面の粒のならび |
| 研究 | 月の起源と内部構造 | まだわかっていないことの節 |
| ― | 生活とのつながり | 暦、月見の日取り、夜道の明るさ |
- 国立天文台 暦計算室(こよみの計算・月の出入りと月齢)
- 国立天文台(ほしぞら情報・天文情報センターの解説)
- 国立天文台 編『理科年表』 月の運動と暦の項
- 文部科学省 中学校学習指導要領(理科編) 地球と宇宙の単元
- 日本天文学会 編『天文学辞典』 朔望月・月齢・衝効果の項
※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。観察は安全な場所で行い、望遠鏡や双眼鏡で太陽を見ないでください。夜間の観察では周囲の状況に注意し、自治体等の指示に従ってください。