昼間なのに、なぜ月が見えるの?
― 月は、昼の空にいる時間と夜の空にいる時間が、ほぼ同じです
「月は夜に出るもの」。多くの人がそう思っています。でも、ひと月を通して数えると、月が昼の空にいる時間は、夜の空にいる時間とほとんど変わりません。昼に見えるのは、月が太陽と違う速さで空を回っていることと、月の明るさが青空に負けないことの、2つが重なった結果です。
学校からの帰り道、ふと見上げた青空に、白くて薄い半月が浮かんでいます。
隣を歩く子どもが聞きます。「なんで、お昼なのにお月さまが出てるの? 星は見えないのに」。
言われてみると、たしかに不思議です。月も星も、夜空にあるはずのものです。なぜ月だけが、昼の空に残っていられるのでしょうか。
理由は2つだけ
月は太陽と同じ時刻に昇り沈みしているわけではありません。毎日およそ50分ずつ遅れて昇るので、日によっては、昼のうちから空の上にいます。
昼の空は、太陽の光で明るく光っています。たいていの星はその明るさにかき消されますが、月は面として明るいので、青空の上でもはっきり見分けられます。
「空にいること」と「見分けられること」。この2つがそろって、はじめて昼の月が見えます。順番に見ていきましょう。
月は、毎日50分ずつ遅れて昇ってくる
太陽はほぼ毎日、同じような時刻に昇ります。ところが月は、地球のまわりを約1か月で1周しています。そのため、太陽から見た月の位置が、毎日少しずつ東へずれていきます。
東へずれた分だけ、月が昇る時刻は遅くなります。1か月かけて1日分ずれるので、1日あたりでは約50分の遅れです。月は、空に出ている時間の長さそのものはおよそ12時間で、太陽とあまり変わりません。違うのは、出てくる時刻です。
図1を見てください。上の帯が昼間、まん中の帯が月が地平線の上にいる時間です。半月(上弦の月)のころは、月はお昼ごろに東から昇り、夕方まで青空にいます。つまみで日にちを進めると、月の帯が右へずれていくのが分かります。
重なりがほとんど無くなるのは2回だけです。1つは満月のころ。月は太陽のちょうど反対側にいるので、日の入りと入れかわりに昇ります。もう1つは新月のころ。月は太陽のすぐ近くにいて、細すぎるうえにまぶしさに埋もれてしまいます。それ以外の日は、月は朝か夕方の青空のどこかにいます。
新月から満月までの前半は、午後から夕方の空に見えます。満月を過ぎた後半は、朝の西の空に残ります。「朝、学校へ行くときに白い月が見えた」という日は、たいてい満月を過ぎたあとです。
月の光は、青空の光に「上乗せ」されている
空にいるだけでは、見えるとは限りません。昼間の星も、空にはちゃんといるのに見えないからです。違いを生むのは、明るさの「差」です。
昼の空が明るいのは、太陽の光が空気にぶつかって、あちこちへ散らばっているからです。月を見るとき、私たちはこの光る空気の層ごしに見ています。つまり目に届くのは「空の光+月の光」です。
図2を見てください。月の方向は、まわりの青空よりはっきり明るくなります。人の目は、まわりと数%明るさが違えば見分けられるとされているので、月は余裕で見つかります。一方、いちばん明るい恒星のシリウスでも、届く光は満月の約3万分の1しかありません。空の光に足しても、差がごくわずかで見分けられないのです。
手前の青空の光が、月の上にも重なっているからです。夜に黒っぽく見える月の模様(「うさぎ」の部分)も、昼は空の青で埋められて、青白くかすんで見えます。昼の月がどこか透けて見えるのは、まさに青空ごしに見ている証拠です。
金星は、条件がよいと昼間でも肉眼で見えることがあるとされています。ただし小さな点なので、どこにあるかを正確に知っていないと、まず見つかりません。月が昼でも気づかれやすいのは、明るいうえに大きな面だからです。
まとめ
月は毎日およそ50分ずつ遅れて昇るので、満月と新月のころを除けば、朝か夕方の青空のどこかにいます。そして月の光は空の光に上乗せされて、まわりよりはっきり明るくなります。空にいて、しかも見分けられる。だから昼でも月が見えるのです。
月は「夜のもの」ではない。
ひと月を通せば、昼の空にも夜の空にも、同じくらい出ている。
月の形が毎日変わるしくみは「月の形は、なぜ毎日変わるの?」、昼に星が見えない理由は「なぜ昼間は星が見えないの?」でくわしく紹介しています。
- カレンダーや天気予報で「上弦の月」の日を調べ、その日の午後3時ごろ、南東から南の空を見てみましょう。半月が見つかるはずです。
- 次の日、同じ時刻に同じ場所から見ます。月が東へずれて、少し太っているのが分かります。毎日の約50分の遅れが、目で見えるかたちです。
- 満月を過ぎて1週間ほどたったら、今度は朝の西の空をさがしてみましょう。登校や通勤の時間に、白い月が残っていることがあります。
太陽のほうは絶対に直接見ないでください。月をさがすときは、太陽を建物や手のひらでかくしてから空を見わたすと安全です。
もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
- 中学中学校の理科で習う範囲
- 高校高校の「地学」「物理」で習う範囲
- 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
- 大学高校では習わない、大学の専門科目(天文学・視覚科学)の内容
- 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話
中学用語:この現象には名前があります
- 月齢:新月からの日数のこと。7日ごろが上弦、15日ごろが満月、22日ごろが下弦です。
- 朔望月:新月から次の新月までの長さ。約29.5日です。月が太陽から見て空を1周する周期でもあります。
- 離角:空の上で、太陽と月がどれだけ離れて見えるかを角度で表したもの。新月で0度、満月で180度です。
中学高校式で確かめる:上弦の月は、昼の空に何時間いる?
月が昼の空にいる時間を、月齢から見積もります。昼の長さと、月が地平線の上にいる時間をどちらも約12時間とした、春分・秋分ごろの目安です。
| 記号で書くと | θ = 360° × d ÷ P、 T = 12 − θ ÷ 15 |
| 言葉で書くと | 太陽との角度 = 360度 × 月齢 ÷ 朔望月。昼の空にいる時間 = 12時間 − 太陽との角度 ÷ 1時間に空が回る角度 |
| どこから来る式か | 地球の自転で空は1時間に15度回ります。月は太陽から毎日東へずれるので、ずれた角度を15度で割った時間だけ遅れて昇り、そのぶん昼と重なる時間が減ります(前半の月の場合)。 |
| θ | 太陽と月の離角(度) |
| d | 月齢(日) |
| P | 朔望月、約29.5日 |
| T | 昼の空に月がいる時間(時間) |
| 朔望月 | 約29.5日 |
| 地球の自転で空が回る角度 | 1時間に15度 |
| 月と太陽が地平線の上にいる時間 | どちらも約12時間(春分・秋分ごろ) |
| 上弦の月の月齢 | 約7日 |
| 1日に東へずれる角度(度) | 360 ÷ 29.5 ≒ 12.2 |
| 7日目の太陽との角度(度) | 12.2 × 7 ≒ 85.4 |
| 日の出から遅れて昇る時間(時間) | 85.4 ÷ 15 ≒ 5.7 |
| 昼の空にいる時間(時間) | 12 − 5.7 = 6.3 |
| 1日の分数 | 24 × 60 = 1440 |
| 月の出が毎日遅れる時間(分) | 1440 ÷ 29.5 ≒ 48.8 |
日の出を6時とすると、上弦の月は11時40分ごろに昇り、日の入りまで約6時間、青空にいます。図1のつまみの初期値と同じ結果です。月の出は毎日約49分ずつ遅れるので、「1日50分」という言い方はこの計算の丸めです。
高校高校+月の出の遅れは、季節で変わる
高校月の通り道(白道)は、太陽の通り道(黄道)とほぼ同じ面にあります。月が地球のまわりを回る向きと、地球が自転する向きが同じなので、月は空の上で毎日東へずれていきます。ずれた分だけ、地球が余分に回らないと月は昇ってきません。
高校+実際の月の出の遅れは、平均の約49分から季節でかなり変わります。秋の満月のころは、白道が地平線に対して浅い角度になるため、遅れが短くなるとされています。満月の翌日の月を「十六夜(いざよい)」、つまり「ためらう月」と呼ぶのは、昇るのが少し遅れることに由来します。
大学空の明るさと「見える」の境目
昼の空の光は、空気の分子による光の散乱(レイリー散乱)で生まれます。月が見えるかどうかは、月面と背景の空の輝度の比、つまり輝度コントラストで決まります。人の目が見分けられる最小の明るさの差は、背景の明るさにほぼ比例し、この関係はウェーバーの法則(ウェーバー・フェヒナーの法則)と呼ばれます。点のように小さな星では、目の分解能の広さに入る空の光と比べることになり、条件はさらに厳しくなります。
📖 式の導出や、さらに先の内容:朔望月(ウィキペディア) / ウェーバー・フェヒナーの法則(ウィキペディア)
研究まだはっきりとはわかっていないこと
- 満月が半月の2倍よりずっと明るい理由。 満月は、光っている面積から予想されるよりかなり明るくなります(衝効果)。月面の砂粒の影が隠れるためか、光の干渉によるものか、どちらがどれだけ効いているかは議論が続いています。
- 昼間に肉眼で見える点の限界。 昼の金星がどこまで見えるかは、空の澄み具合や見る人の目によって大きく変わり、はっきりした境目は決まっていません。
- 新月直後の細い月を、どこまで早く見つけられるか。 太陽に近い細い月が見えるかどうかの予測には、大気の状態が大きく影響し、いまも観測記録を使った検証が行われています。
つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。昼の月は、見上げるだけで誰でも確かめられる、身近な天文の入口です。
教科書とのつながり(レベル別)
| レベル | 科目・単元 | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 中学 | 理科3年「月の満ち欠け」「天体の動き」 | 月齢と月の出の時刻、図1 |
| 高校 | 地学「月の運動」、物理「光の散乱」 | 白道・黄道、青空の光 |
| 高校+ | 地学のコラム(月の出の季節変化) | 十六夜、秋の月の出の遅れ |
| 大学 | 天文学・視覚科学 | 輝度コントラスト、ウェーバーの法則 |
| 研究 | 惑星科学・大気光学 | 衝効果、細い月の見え方 |
| ― | 生活とのつながり | 昼の月をさがす観察、太陽を直接見ない注意 |
- 国立天文台 暦計算室(各地の月の出・月の入りの時刻)
- 国立天文台 編『理科年表』丸善出版(月の運動・天体の明るさ)
- 朔望月(ウィキペディア)
- M. ミンナルト『野外の光と色』(昼の空の明るさと月の見え方)
※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。月の出・月の入りの時刻は場所と季節で変わるため、正確な時刻は国立天文台の暦計算室などで確かめてください。