自然のふしぎ 環境・生態 予備知識なしでOK 読了 約6分

ミミズは、1年でどれくらいの土を耕しているの?
― 地面の石は、100年でおよそ20cm沈んでいきます

1匹のミミズが一度に飲みこむ土は、ほんのひとつまみです。ところが、畑や草地の広さと、何十年という時間をかけ合わせると、話はまるで変わります。進化論で知られるダーウィンは、この「小さな数のかけ算」に40年以上こだわり、地面そのものがゆっくり入れかわっていることを確かめました。

公開:2026.09.29 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、こんな場面を思い浮かべてください

雨上がりの公園の芝生に、小さな土の粒が、ソフトクリームのように盛り上がっているのを見たことはありませんか。

あれはミミズのふんです。ミミズは土ごと食べて、体を通した土を地表に積み上げています。

ひとつひとつは指先ほどの山です。でも、あれが芝生じゅうで、毎年、何十年も続いたら、いったいどれくらいの量になるのでしょうか。

小さな山が「地面を動かす量」になる理由は2つだけ

1
数が、思っているよりずっと多い

よく肥えた草地では、1平方メートルの土の中に数十〜数百匹のミミズがいるとされます。足もとの畳半分ほどの広さに、数十匹が暮らしている計算です。

2
一年じゅう、何十年も休まない

ミミズは土の中を食べ進みながら、ふんを地表へ運び続けます。1年ではうすい膜でも、100年たてば、地面の上に置いたものが見えなくなるほどの厚さになります。

1匹あたりの仕事は小さくても、「数」と「時間」の2つをかけると、けたがいくつも上がります。順番に見ていきましょう。

ダーウィンが量った「年に10トン」

ダーウィンは、庭や牧草地に出た土の粒を集めて、重さを量りました。その結果、イギリスの多くの土地では、1エーカー(約0.4ヘクタール)あたり年に10トンをこえる土がミミズの体を通り、地表へ運ばれると見積もりました。

10トンと聞くと大きく感じます。けれど、サッカー場の半分ほどの広さに広げると、厚さは年に2ミリほどしかありません。気づかないのは当然です。

ところが、この2ミリは毎年積み重なります。しかも、ミミズは地表に土を積むのと同時に、下の土を食べて空洞にしていきます。そのため、地面の高さはほとんど変わらないまま、地表にあった石だけが少しずつ下へ沈んでいきます。図1のつまみで、年数を動かしてみてください。

地表 0cm 10cm 20cm 30cm 40cm 深さ はじめに置いた位置(点線) 50年後:深さ 約10.5cm ふんが積もった土 地表のふんの山 下の土を食べて、上へ運ぶ(矢印)
つまみを動かすと、石が沈む深さが変わります
図1:ミミズによって、地表の石が沈んでいくようす(土の断面)。中央の灰色の四角が石で、上の点線の枠がはじめに置いた位置です。右のミミズが下の土を食べ、地表にふんの山を積むため、石の上に土が重なっていきます(右の上向きの矢印)。中央の下向きの矢印は、石が沈んだ距離です。つまみで年数を変えると、石が年に約2ミリずつ深くなり、100年でおよそ20cm、200年で40cmをこえることが分かります。

遺跡の床も、ミミズがうめていた

ダーウィンは、自宅近くの畑に白い石灰の粉をまいておき、何年もたってから土を掘り返しました。すると、地表にあったはずの石灰が、土の中のうすい白い層になって見つかりました。約30年後には、18センチほどの深さにあったとされています。

彼はさらに、ローマ時代の遺跡の床や、倒れた巨石の根もとも調べました。古い床が土の下にうまっているのは、上から土が降り積もったからだけではありません。ミミズが下から土を運び上げ、床を少しずつ「飲みこんで」いたことも大きいと考えたのです。

こうした観察をまとめた本が、1881年の『ミミズと土』です。晩年の研究で、出版から半年ほどでダーウィンは亡くなりました。

💡 ミミズのふんは、ただの土ではありません

ミミズの腸を通った土は、細かい粒がねばり気のある物質でくっつき合い、小さなだんごの集まりになります。すき間が多いので、水がしみこみやすく、根も伸びやすくなります。ミミズが掘った細い通り道も、雨水を地下へ流す排水管のような役目をします。

まとめ

ミミズが1年に地表へ運ぶ土は、厚さにすると2ミリほどです。けれど、数十〜数百匹が同じ場所で何十年も働き続けると、畑の表面の土は100年ほどで丸ごと一度ミミズのお腹を通る計算になります。落ち葉を土にかえし、水の通り道を作る地味な仕事が、足もとの地面を作り続けています。

1匹は、ひとつまみ。
でも100年で、地面が入れかわります。

雨の日にミミズが地面へ出てくるわけは「雨の日、ミミズはなぜ地面の上に出てくるの?」で、落ち葉がどこへ消えるのかは「森の落ち葉は、なぜ積み上がって山にならないの?」で解説しています。

🧪 ミミズの仕事量を、自分の庭で見てみよう
  1. 雨上がりの芝生や花だんで、ミミズのふんの山を探し、50cm四方の中にいくつあるか数えます。
  2. その場所に、目印として平たい小石や白い砂をひとつまみ置き、写真を撮っておきます。
  3. 数週間ごとに同じ場所を見て、ふんの山が目印にかぶさっていくようすを記録します。

ふんの山は、暖かくて湿った春や秋の雨上がりに多く見られます。ミミズを見つけたら、観察のあとは元の土にもどしてあげましょう。

もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「生物基礎」「地学基礎」で習う範囲
  • 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(土壌学・地形学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:この現象には名前があります

中学高校式で確かめる:1年で何ミリ積もるのか

ダーウィンの見積もり「1エーカーあたり年に約10トン」を、厚さに直します。重さを、密度と面積で割れば厚さが出ます。

⓪ もとになる式
記号で書くとh = M ÷ ( ρ × A )
言葉で書くと1年に積もる厚さ = 運び上げた土の重さ ÷ ( 土の密度 × 面積 )
どこから来る式か「重さ = 密度 × 体積」と「体積 = 面積 × 厚さ」の2つを組み合わせたもの。運ばれた土の重さは、広げても変わらない(保存される)ことを使っています。
記号意味と単位
h1年に積もる土の厚さ(m)
M1年に地表へ運ばれる土の重さ(kg)
ρ積もった土の密度(kg/m³)
A面積(m²)
① もとになる数値
運ばれる土の重さ(ダーウィンの見積もり)約 10000 kg
1エーカーの面積約 4047 m²
積もった土の密度(この記事での仮定)約 1200 kg/m³
② 計算してみる
密度 × 面積1200 × 4047 = 4856400
1年に積もる厚さ(m)10000 ÷ 4856400 ≒ 0.0021
ミリに直す0.0021 × 1000 = 2.1
100年分(ミリ)2.1 × 100 = 210

1年に約2.1ミリ、100年で約21センチです。畑を耕すときにスコップが入る深さと、ほぼ同じです。つまり、畑の表面の土は、100年ほどでひととおりミミズの体を通る計算になります。ダーウィンの石灰の実験(約30年で約18センチ)はこれより速く、場所によって差が大きいことも分かります。

高校高校+土の中の物質循環

高校生物基礎では、生態系の中で分解者が有機物を無機物にもどし、炭素や窒素が循環することを学びます。ミミズは落ち葉を土の中へ引きこみ、土と混ぜることで、菌類や細菌が分解しやすい状態を作っています。

高校+ミミズのふんが作る団粒構造は、土のすき間の割合(孔隙率)を高めます。大きなすき間は排水と通気を、小さなすき間は水もちを受け持つため、水はけと水もちの両方がよい土になるとされます。

大学生物擾乱と、土の「かき混ぜ」の速さ

生き物が土や堆積物をかき混ぜる働きは、生物擾乱(せいぶつじょうらん)と呼ばれます。地形学では、この混ざり方を熱が広がるのと同じ形の式(拡散方程式)で表し、斜面の土がゆっくり下へ動く速さを見積もることがあります。土の粒が最後に日光を浴びてからの時間を測る光ルミネッセンス年代測定を使い、土がどれくらいの速さで上下に入れかわるかを調べる研究もあります。

📖 式の導出や、さらに先の内容:生物擾乱(ウィキペディア) / ミミズ(ウィキペディア)

研究まだはっきりとはわかっていないこと

つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。年に2ミリという数字は、ダーウィンの見積もりをもとにした目安と考えてください。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学理科「自然界のつり合い」(分解者)・「密度」ミミズが落ち葉と土を分解する役割、式で確かめる
高校生物基礎「生態系と物質循環」土の中の炭素や窒素の循環
高校+地学基礎・農業科目の発展(土壌)団粒構造と孔隙率
大学土壌学・地形学生物擾乱、拡散方程式、光ルミネッセンス年代測定
研究土壌生態学・気候変動ミミズと温暖化、外来ミミズ
―生活とのつながり庭や畑の土づくり、落ち葉を残すことの意味、遺跡がうまる理由
参考・出典
  1. チャールズ・ダーウィン『ミミズと土』(原著 1881年。牧草地の土の量や石灰の層の観察を収録)
  2. C. A. Edwards, P. J. Bohlen, Biology and Ecology of Earthworms, 3rd ed., Chapman & Hall, 1996
  3. 中村好男『ミミズと土と有機農業』創森社
  4. ウィキペディア「生物擾乱」
  5. ウィキペディア「ミミズ」

※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。ミミズの数や土の運ばれる量は、土地・気候・季節によって大きく変わります。