川の石は、なぜ丸いの?
― 削られたのは、いちばん出っぱっていた角です
河原にしゃがんで石を拾うと、どれも角がとれて丸くなっています。けれど山の斜面で見る石は、割れたばかりのように角ばっています。同じ石が、川を下るあいだに形を変えているのです。丸くなるのは、出っぱった角にだけ力が集まり、そこから先に削れていくからです。
広い河原を歩いています。足もとには、こぶしくらいの石がびっしり敷きつめられています。手に取ってみると、どれも手のひらになじむ、まるいかたちをしています。
いっぽう、山の道ばたでくずれた岩を見ると、そちらは角ばっています。ガラスが割れたときのように、鋭い縁が残っています。
石の材料は同じはずです。それなのに、河原の石だけがそろって丸いのは、なぜなのでしょうか。しかも、下流へ行くほど丸くて小さい石ばかりになっていきます。
理由は、大きく2つあります
石が川底を転がると、ぶつかるのはいつも、いちばん出っぱったところです。せまい部分に力が集まるので、角は平らな面よりずっと欠けやすくなります。出っぱりから先に減っていけば、残るのは丸い形です。
石は一度に海まで行くわけではなく、水が増えるたびに少しずつ動きます。下流にある石は、それだけ長い距離を転がってきた石です。旅の長さがそのまま、角のとれ具合になって表れます。
ひとつめは1個の石に起きること、ふたつめは川全体で起きることです。順に見ていきます。
角から先に削れる、とはどういうこと?
ものが欠けるかどうかは、加わる力の大きさだけでは決まりません。その力が、どれだけせまい面積に集まっているかで決まります。同じ強さで押しても、手のひらで押すのと、指先1本で押すのとでは、へこみ方がまるで違います。
角ばった石が川底にぶつかるとき、最初に触れるのは、とがった一点です。石の重さと勢いは、その小さな一点にまとめてかかります。だからそこだけが、パラパラと欠けていきます。
いっぽう、丸くふくらんだ面が当たるときは、触れる場所が広く広がります。同じ勢いでぶつかっても、力が散らばるので欠けにくくなります。図1の左を見てください。
この差があるため、石は「角がなくなるまでは速く、丸くなってからはゆっくり」形を変えます。丸さは、削られていった結果たどりつく、いわば行き止まりの形なのです。
なぜ下流ほど、丸くて小さい石ばかりなの?
川の石は、いつも動いているわけではありません。ふだんの流れでは、川底の石はびくとも動きません。水かさが増えて流れが速くなったときだけ、ごろごろと転がり、そしてまた止まります。
ですから石の旅は、何年もかけた細ぎれの移動です。下流にある石は、その細ぎれの移動を何度もくり返してきた石ということになります。転がった回数が多ければ、それだけ角は落ちています。
もうひとつ効いているのが、川によるより分けです。流れが運べる石の大きさには限りがあります。大きい石は上流に置き去りにされ、小さくなった石だけが先へ進みます。そのため下流には「よく削られて小さくなった石」ばかりが集まります。
削れることと、より分けられること。この2つが重なって、下流ほど丸く小さい石がそろうと考えられています。
海岸の石は、川の石よりも平たい円ばんの形になりがちです。波は寄せては返すので、石は同じ場所で前後にこすられます。転がるより、なでられる時間が長いのです。動かされ方が変わると、たどりつく形も変わると考えられています。
河原の石をよく見ると、丸さがそろっていません。もろい石は早く角がとれ、かたい石はいつまでも角を残します。同じ川を同じだけ流れてきても、石の種類によって進みぐあいが違うのです。丸さは、旅の長さと石の性質の、かけ算で決まります。
まとめ
河原の石が丸いのは、だれかが磨いたからではありません。転がるたびに、いちばん出っぱった角にだけ力が集まり、そこから欠けていったからです。角がなくなれば力は散らばり、削れる速さも落ちます。丸さとは、削られ続けた石が最後にたどりつく形なのです。
丸い石は、磨かれたのではありません。
出っぱっていた場所から、順に失われた形です。
川そのものが形を変えていくしくみは川はなぜまっすぐ流れず、蛇行するの?、けずる役目を氷が引き受けるとどうなるかは氷河は、なぜ固い氷なのに川のように流れるの?で説明しています。削られた成分が最後にどこへ行くのかは海の水はなぜしょっぱいの?もあわせてどうぞ。
- ふたのできる容器に、角のある小石をひとつかみと水を入れます。100回、200回と数えながら振り、ときどき水のにごりぐあいを見ます。にごりの正体は、削れた石の粉です。
- 角砂糖を4個、ふたつき容器に入れて、水を入れずに振ります。数十回でも角が丸まり、底に白い粉がたまります。角から先に減ることが、短い時間で分かります。
- 河原に行けたら、石を10個ひろって並べ、丸いものから順に置いてみます。大きい石ほど角ばっている傾向があるかどうかを確かめます。
河原で観察するときは、水ぎわに立ち入らず、足場の安定した場所からにしてください。天気の悪い日は行かないでください。
もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
- 中学中学校の理科で習う範囲
- 高校高校の「地学基礎・物理基礎」で習う範囲
- 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
- 大学高校では習わない、大学の専門科目(堆積学・地形学)の内容
- 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話
中学用語:この現象には名前があります
- 円磨(えんま):運ばれるあいだに角がとれて、丸みをおびていくことです。河原の石の丸さは、この進みぐあいを表しています。
- 摩耗(まもう):こすれ合いによって、表面が少しずつ減ることです。石どうしのぶつかりでも、川底とのこすれでも起こります。
- 淘汰(とうた):流れが、運べる大きさのつぶだけを選んで先へ運ぶことです。下流にそろった大きさの石が並ぶのは、このはたらきによります。
中学高校式で確かめる:流れが速くなると、どれくらい大きな石が動くの?
石が動きだすかどうかは、流れの速さで大きく変わります。動かせる石の重さは、流れの速さの6乗におよそ比例するという、経験にもとづく目安が知られています。速さが4倍になると何が起きるのかを、数字で追ってみます。
| ふだんの流れの速さ | 秒速 0.5メートル |
| 水かさが増えたときの速さ | 秒速 2メートル |
| 動かせる石の重さの目安 | 流れの速さの6乗に比例するとされる |
| 流れは何倍の速さになったか | 2 ÷ 0.5 = 4 |
| 4倍を2回ぶんかける | 4 × 4 = 16 |
| さらに2回ぶんをかける | 16 × 16 = 256 |
| 残りの2回ぶんをかける | 256 × 16 = 4096 |
| ふだん1グラムの石が動くとすると(グラム) | 1 × 4096 = 4096 |
速さが4倍になっただけで、動かせる石はおよそ4000倍の重さになります。ふだんは砂つぶしか動かない流れが、4キログラムほどの石を転がすということです。ここで使った記号のうち、速さの単位は「1秒あたりのメートル」、重さの単位は「グラム」です。石が丸くなる仕事のほとんどが、水かさの増えた短い時間に進むのは、このためだと考えられています。
高校高校+「角から欠ける」を、力と面積で言いかえる
高校ものの内部にかかる力の強さは、加わる力を、それを受けもつ面積で割った値で表されます。石の角が当たるときは、この割り算の分母がとても小さくなります。同じ力でも、角にかかる強さは面で当たるときの何十倍にもなり、そこだけが先にこわれます。
高校+削れる量は、時間ではなく転がった距離とよく対応します。距離が伸びるほど、残っている角の量に応じて減っていくため、丸さは最初に急に進み、やがて頭打ちになります。上流の数キロメートルで丸さの大半が決まってしまうことも多いとされています。
大学「下流ほど細かい」を、どう説明し分けるか
大学の堆積学や地形学では、下流ほど石が細かくなる現象を、摩耗によるものと淘汰によるものに分けて考えます。石を回転する装置に入れて減り方を測る実験、川に沿って石の大きさと形をくり返し測る調査、川底のつぶの動きを計算で追う方法などを組み合わせ、どちらがどれだけ効いているかを見積もります。石の形は、丸さのほかに、三方向の長さの比などでも記述されます。
研究まだはっきりとはわかっていないこと
- 削れと、より分けの割合 下流で石が小さくなる原因のうち、削れがどれだけで、より分けがどれだけかは、川によって答えが変わります。一般的な決め手は、まだ定まっていません。
- 実験と自然の食い違い 装置の中で石を回して測った減り方は、実際の川で観測される減り方と合わないことがあります。川底で止まっている時間の長さが関係すると考えられていますが、検証は続いています。
- 形が語る来歴 石の形から「どこから来て、どれだけ旅したか」をどこまで読み取れるのかは、研究の途上です。ほかの惑星で見つかった丸い小石の解釈にも、同じ問いがついてまわります。
つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。とくに割合の見積もりは、これから書きかえられるかもしれません。
教科書とのつながり(レベル別)
| レベル | 科目・単元 | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 中学 | 理科:大地の変化、地層のでき方 | 石が運ばれて丸くなる話、下流ほど細かい話 |
| 高校 | 地学基礎:地形と堆積/物理基礎:力と圧力 | より分けのはたらき、角に力が集まる説明 |
| 高校+ | 地学:河川地形/物理:材料のこわれ方 | 丸さが距離とともに頭打ちになる話 |
| 大学 | 堆積学・地形学 | 摩耗と淘汰の切り分け、石の形の測り方 |
| 研究 | 河床材料の観測と実験 | 実験と自然の食い違い、形からの来歴の読み取り |
| ― | 生活とのつながり | 河原の石ひろい、庭石や砂利の見分け |
- 日本地形学連合 編『地形の辞典』朝倉書店
- 松倉公憲『地形変化の科学 ― 風化と侵食』朝倉書店
- 貝塚爽平ほか『写真と図でみる地形学』東京大学出版会
- 国土交通省「河川砂防技術基準(調査編)」河床材料の調査に関する記述
※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。河原や海辺で観察するときは、水ぎわに近づきすぎないようにし、天候や水位の情報を確かめ、自治体や現地の掲示による注意に従ってください。