秋分の日は、なぜ年によって9月23日だったり22日だったりするの?
― 動いているのは祝日ではなく、365日という数字のほうです
祝日の日付は、たいてい固定されています。ところが秋分の日と春分の日だけは、年によって動きます。しかも、国会が決めているのではありません。決めているのは、地球が太陽のまわりを回るときの、ほんの数時間の「あまり」です。
9月のカレンダーをめくると、下旬に赤い日がひとつあります。秋分の日です。
去年のカレンダーでは23日でした。ところが数年前のものを見ると、22日になっている年があります。海の日や敬老の日のように「第◯月曜」と決まっているわけでもないのに、日付が動いています。
実はこの日付は、前の年の2月に、国立天文台の計算をもとに正式に発表されます。それまで確定しません。祝日なのに、天体の位置が決まるまで日付が決まらないのです。
理由は、大きく2つあります
地球が太陽のまわりを1周するのにかかる時間は、365日と約6時間です。この「約6時間」が毎年たまっていくので、秋分をむかえる瞬間は1年ごとに約6時間ずつおそくなります。
4年ためると約1日分になります。そこで4年に一度、2月に1日足して帳消しにします。この「じわじわ遅れて、どんと戻る」というのこぎり状の動きが、ときどき日付の境目をまたぐのです。
つまり秋分の日が動くのは、暦が乱れているからではありません。むしろ逆で、暦を天体の動きに合わせ続けているからこそ、日付が動きます。順に見ていきましょう。
「1年」には、6時間ほどのおつりが出る
秋分とは、太陽が空の上で天の赤道を北から南へ横切る瞬間のことです。これは1日のうちいつでも起こりえます。朝の6時のこともあれば、夜中の1時のこともあります。
そして地球が太陽のまわりを1周する時間は、365日と約5時間49分です。暦の1年は365日ですから、毎年6時間近くのおつりが出ます。そのぶん、秋分の瞬間は年ごとにおそい時刻へずれていきます。
4年たつと、おつりの合計はほぼ丸1日になります。ここでうるう年が入り、2月29日が1日ぶん暦を押し戻します。すると秋分の瞬間の時刻は、4年前とほぼ同じところへ帰ってきます。図1を見てください。この上がって落ちるのこぎり状の動きが、ずっとくり返されています。
日付が決まるのは、前の年の2月
秋分の瞬間の時刻は、地球と太陽の位置を計算すれば求められます。日本では国立天文台がこの計算を行い、その結果をまとめた「暦要項」が前の年の2月に官報で発表されます。翌年の秋分の日が正式に決まるのは、この時点です。
ですから「10年後の秋分の日」は、計算上はかなり正確に予測できますが、制度のうえではまだ決まっていない、ということになります。祝日でありながら、日付を決めているのは人ではなく地球の動きなのです。
この4年ごとの引き戻しは、実はほんの少しだけ「戻しすぎ」になっています。そのため秋分の瞬間は、長い目で見ると年々早い側へ寄っていきます。だからこそ、いまは9月22日の秋分が現れるようになりました。ただし、その寄り方も永遠には続きません。100で割り切れる年は、4の倍数でもうるう年にしない決まりがあるからです。2100年にはこの決まりが働き、暦のほうが1日ぶん先に進んで、秋分の日はふたたび遅い側へ押し戻されます。
よく言われますが、実際には昼のほうが十数分ほど長くなります。理由は2つあります。日の出・日の入りを太陽の中心ではなく、ふちが地平線にかかる瞬間で決めていること。そして地平線ぎりぎりの太陽は、空気による光の曲がりで、実際よりも少し浮き上がって見えることです。昼と夜がほぼ等しくなるのは、秋分の数日あとになります。
20世紀のあいだ、日本の秋分の日は9月23日か24日で、22日になることはありませんでした。22日の秋分がふたたび現れたのは2012年で、およそ116年ぶりとされています。いまは少しずつ「早い側」へ寄っている時期にあたります。
まとめ
秋分の日が動くのは、暦がいいかげんだからではありません。1年の長さが365日ちょうどではないので、天体の側の「本当の秋分」は毎年少しずつずれます。うるう年でそれを引き戻す。この上下の揺れが日付の境目をまたぐとき、カレンダーの赤い日が1日動きます。
動いているのは祝日ではなく、
365日という切りのいい数字のほうです。
季節そのものがなぜ生まれるのかは季節はなぜあるの?で、空にうかぶ月の形が毎日変わる理由は月の形は、なぜ毎日変わるの?で説明しています。
- 手元のカレンダーや暦のアプリで、秋分の日と春分の日に印をつけます。
- 過去10年ぶんをさかのぼって、それぞれの日付を紙に書き出します。うるう年の翌年で日付が早いほうへ動いているか、見てください。
- 同じことを春分の日でもやってみます。春分の日は3月20日と21日のあいだで動きます。動き方が秋分とそろっていることに気づくはずです。
日の出・日の入りの時刻も一緒に書き出すと、秋分の日にはまだ昼のほうが長いことが確かめられます。
もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
- 中学中学校の理科で習う範囲
- 高校高校の「地学基礎」で習う範囲
- 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
- 大学高校では習わない、大学の専門科目(天体力学)の内容
- 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話
中学用語:この現象には名前があります
- 太陽年(回帰年):季節がひとめぐりして同じ状態に戻るまでの時間。約365.2422日です。
- グレゴリオ暦:いま世界で広く使われている暦。4で割り切れる年をうるう年とし、100で割り切れる年は平年、400で割り切れる年はうるう年に戻します。
- 暦要項:翌年の祝日や日の出入りなどをまとめたもの。国立天文台が計算し、前の年の2月に官報で発表されます。
中学高校式で確かめる:1年のおつりは、何時間ぶん?
秋分の瞬間が毎年どれだけおそくなるのかを、実際に計算してみます。ここで使う数値の単位は、すべて「日」または「時間」です。記号の意味は次のとおりです。
| Y | 太陽年の長さ(単位は日) |
| C | 暦の1年の日数(単位は日) |
| h | 1年ぶんのおつり(単位は時間) |
| 太陽年の長さ Y | 365.2422 日 |
| 暦の1年 C | 365 日 |
| 1日の長さ | 24 時間 |
| 1年で余る日数 | 365.2422 - 365 = 0.2422 |
| 時間に直す(これが h) | 0.2422 × 24 ≒ 5.81 |
| 4年ぶんためる | 5.81 × 4 ≒ 23.2 |
4年でたまるおつりは約23.2時間、つまりほぼ丸1日です。だから4年に一度、2月に1日足して帳消しにします。ただし帳消しは完全ではなく、少しだけ「戻しすぎ」になります。この戻しすぎが積もると、秋分の日は少しずつ早い側へ寄っていきます。
高校高校+昼と夜が等しくならないのは、なぜ?
高校秋分の日には、太陽は真東からのぼり真西にしずみます。もし太陽が点で、空気がなければ、昼と夜はぴったり等しくなるはずです。ところが実際には、昼のほうが十数分長くなります。
高校+ずれの原因は2つです。ひとつは日の出・日の入りの決め方で、太陽の中心ではなく上のふちが地平線にかかる瞬間を使います。太陽は見かけの直径がおよそ0.5度あるので、そのぶん昼が前後に伸びます。もうひとつは大気差で、地平線近くの光は空気の層で曲げられ、太陽は実際より高い位置に見えます。合わせると、日本付近では昼が十数分長くなるとされています。
大学太陽年と、星をもとにした1年はちがう
地球が太陽のまわりを1周して、遠くの星に対して元の位置に戻るまでの時間を恒星年といいます。恒星年は太陽年より約20分長いことが知られています。差が生まれるのは、地球の自転軸がコマのようにゆっくり首を振っているためで、これを歳差運動といいます。周期はおよそ2万6千年とされています。暦が合わせているのは季節、つまり太陽年のほうです。星の位置に合わせているわけではありません。
研究まだはっきりとはわかっていないこと
- 地球の自転は一定ではありません。 潮の満ち引きによるブレーキや、地球内部・大気・海の質量の動きで、1日の長さはごくわずかに揺らぎます。この揺らぎを何年も先まで正確に予測する方法は、まだ確立していません。
- うるう秒の扱いが変わりつつあります。 自転のずれを吸収するうるう秒は、計算機のしくみとの相性が悪く、将来の運用を見直す議論が続いています。
- 太陽年の長さ自体も一定ではありません。 惑星どうしの引き合いによって、地球の公転はごくゆっくり変化しています。遠い未来の暦をどう組むかは、これからの課題です。
つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。数百年先の秋分の日は計算で出せますが、それは自転や公転が今の理解どおりに続いたら、という前提つきの答えです。
教科書とのつながり(レベル別)
| レベル | 科目・単元 | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 中学 | 理科・地球と宇宙(地球の公転と季節) | 秋分とは何かの説明 |
| 高校 | 地学基礎・天球と太陽の動き | 真東からのぼる日の話 |
| 高校+ | 地学・大気差と見かけの直径 | 昼のほうが長くなる理由 |
| 大学 | 天体力学・位置天文学 | 太陽年と恒星年、歳差運動 |
| 研究 | 測地学・時刻系の維持 | 自転のゆらぎとうるう秒 |
| ― | 生活とのつながり | 祝日の日付が動く理由、日の出入りの時刻 |
- 国立天文台 暦計算室(暦要項、二十四節気、日の出入りの計算)
- 国立天文台「暦に関するよくある質問 ― 何年後かの春分の日・秋分の日はわかるの?」
- 国立天文台編『理科年表』丸善出版(暦部・天文部)
- 内閣府「国民の祝日について」(祝日法と秋分の日の定め)
※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。祝日の日付は前年2月の官報で正式に決まりますので、確定した日付は国立天文台や内閣府の公表をご確認ください。