大きな地震のあと、余震はなぜ何日も続くの?
― 割れ残った岩ばんが、少しずつつり合いを取り戻しています
大きな揺れが収まっても、小さな揺れが何日も、ときには何か月も続くことがあります。これは地面が「まだ壊れかけている」からではありません。一度に割れきれなかった岩ばんが、押しつけられた力を少しずつ手放していく過程です。しかも、その減り方には驚くほどはっきりした規則があります。
両手で、かたい板チョコをゆっくり曲げていきます。ある瞬間、パキッと大きな音を立てて割れます。
ところが、そこで終わりではありません。割れたあとも、手のなかで小さくパキ、パキと音が続くことがあります。大きな割れ目のまわりに、割れ残った部分が残っているからです。
音は、はじめのうちは立て続けに鳴り、だんだん間隔があいていきます。地面の下で起きていることも、これとよく似ています。
余震が続く理由は、2つだけ
本震ですべった場所は力を手放しますが、そのぶんの力は、すべり残った両はしへ押しつけられます。まわりの岩ばんは、前より強く押された状態になります。
押しつけられた場所がいつ割れるかは、その場所の丈夫さで決まります。もろい場所はすぐ、しぶとい場所は何日も後に割れます。だから揺れが長く尾を引きます。
本震は「終わり」ではなく、まわりの岩ばんにとっては「始まり」です。順番に見ていきます。
本震は、力を消していません
地下の岩ばんは、プレートの動きによって、何十年も何百年もかけてゆっくりと曲げられています。曲げられたひずみが限界をこえると、岩ばんは断層という面に沿ってずれます。これが地震です。
このとき、ずれた面の上では、たまっていた力がいっきに解放されます。ところが力そのものが消えてなくなるわけではありません。ずれた部分と、まだずれていない部分の境目には、大きな段差のようなものができます。その境目には、前よりも強い力がかかるようになります。
板チョコで言えば、割れ目の先端です。割れ目の先には、いちばん力が集中します。地震でも同じで、本震ですべった範囲の外側とその延長線上に、力が押しつけられます。図1の左を見てください。
なぜ、すぐに割れてくれないのか
押しつけられたのなら、その場でまとめて割れてしまえばよさそうなものです。ところが岩は、そういう壊れ方をしません。
岩ばんの中には、丈夫なところともろいところが、まだらに混ざっています。力が同じだけ加わっても、割れるまでの時間はばらばらです。もろいところは数秒後に、しぶといところは数日後に、いちばんしぶといところは数か月後に割れます。この「割れるまでの待ち時間のばらつき」が、余震が長く続く正体です。
もうひとつ、時間をかせぐしくみがあります。岩の割れ目のすき間には水が入りこんでいて、その水の圧力が動き方を左右します。本震で岩がゆるむと、水は圧力の高いほうから低いほうへ、じわじわと移動していきます。水が届いたところから割れやすくなるため、これも遅れの原因になると考えられています。
そして、ひとつの余震はまた新しい力の移し替えを起こします。余震が余震を呼ぶわけです。だから減り方は、ぱたりと止まるのではなく、長い尾を引く形になります。
余震は、本震より小さい揺れのことを指します。ところが、あとから来た揺れのほうが大きかった場合、先の揺れは「前震」と呼び名が変わります。つまり最初の揺れが本震かどうかは、その時点では誰にもわかりません。気象庁が「余震」という言い方を控え、「地震活動」と呼ぶようになったのは、このためだとされています。
経験的に、最大の余震は本震よりマグニチュードで1程度小さいことが多いと言われています。ただしこれはあくまで平均的な傾向で、本震と同じくらいの規模の揺れが続けて起きた例も知られています。「もう大きいのは来ない」と考えるための数字ではありません。
じゃあ、どうすればいいの?
- 揺れたら、まず頭を守る机の下にもぐるか、かばんやクッションで頭をかくして、低い姿勢になります。揺れが収まってから動きます。
- 大きな揺れのあとは、また揺れると思っておく倒れそうな家具や、割れたガラスのある場所からは離れて過ごします。ものが落ちてこない場所を選びます。
- ひびの入った建物やへいには近づかない一度目の揺れで弱った建物は、次の揺れで倒れることがあります。用がなくても、そばを通らないようにします。
大きな揺れのあとは、同じくらいの揺れがふたたび起きる可能性があると考えて行動してください。建物にひびが入っている、かたむいている、ドアが閉まらないといった場合は、無理に中にとどまらず、避難所など安全な場所へ移ってください。海の近くにいるときは、揺れを感じたらすぐに高台へ向かってください。けが人がいるときや火が出たときは119番へ通報してください。倒れた家具の下じきになった人の救助は、まわりの安全を確かめてから行い、危ないと感じたら消防や警察を待ってください。避難や立ち入りの判断は、市町村と気象庁の情報に従ってください。
まとめ
本震は、たまっていた力を消し去るのではなく、割れ残った場所へ押しつけます。押しつけられた場所は、その丈夫さに応じて、ばらばらの時間をかけて割れていきます。だから揺れは長く尾を引き、しかもその減り方には規則があります。
余震は、地面がまだ壊れている音ではありません。
ずれ残った岩ばんが、順番につり合いを取り戻していく音です。
地面が揺れたときに感じる「カタカタ」と「グラグラ」の違いは「地震の「カタカタ」は、なぜ「グラグラ」より先に来るの?」で説明しています。揺れのあと地面がやわらかくなる現象は「液状化は、なぜ地面が「水」のようになるの?」を、地下でプレートが動き続けていることは「山の上にある貝の化石は、どうやってそこへ行ったの?」をどうぞ。
- かわいた板チョコを、両手でゆっくり曲げていきます。パキッと大きな音がして割れるところまで、力をかけます。
- 割れたあとも、手の力をゆるめずにそのまま持っていてください。小さな音が、まばらに続くことがあります。
- 音が鳴るたびに、指で数えてみます。はじめは立て続けに、あとになるほど間隔があいていくことに気づくはずです。
おかしやビスケットでも同じことが起こります。実際の地面の中はこれよりずっと複雑ですが、「大きな割れのあとに小さな割れが尾を引く」という点は共通しています。
もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
- 中学中学校の理科で習う範囲
- 高校高校の「地学基礎」で習う範囲
- 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
- 大学高校では習わない、大学の専門科目(地震学・岩石力学)の内容
- 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話
中学用語:この現象には名前があります
- 本震:一連の地震活動のなかで、いちばん大きかった揺れのこと。あとになってから決まります。
- 前震(ぜんしん):本震より前に起きていた、本震より小さな揺れ。起きている最中に見分けることは難しいとされています。
- 応力(おうりょく):岩ばんの内部で、面を押したり引いたりしている力の強さ。単位面積あたりの力で表します。
- 大森公式:余震の回数が、本震からの時間に反比例するように減っていくという経験則。1894年に大森房吉が示しました。
中学高校式で確かめる:余震は、どんな速さで減るのか
大森公式のいちばん単純な形は、「1日あたりの回数は、本震からの日数に反比例する」というものです。ここでは、最初の1日に100回の余震があった場合を考えます。使うのはわり算とひき算だけです。
| 1日目の余震の回数 | 100 回(この例での仮の値) |
| 減り方の決まり | 回数は日数に反比例するとされる |
| 数えるきざみ | 1 日ごと |
| 記号 | 意味と単位 |
| 回数 | その日1日に起きた余震の数[回] |
| 日数 | 本震が起きてからの経過日数[日] |
| 反比例 | 日数が2倍になると回数が半分になる関係[単位なし] |
| 2日目のおよその回数 | 100 ÷ 2 = 50 |
| 10日目のおよその回数 | 100 ÷ 10 = 10 |
| 100日目のおよその回数 | 100 ÷ 100 = 1 |
| 1日目から10日目までの減り | 100 - 10 = 90 |
最初の1日で全体の勢いの多くを使い果たし、10日目までに1日あたりの回数は10分の1になります。ところが、そこからさらに10分の1になるには、さらに90日かかります。急激に減るのに、なかなかゼロにならない。これが「長い尾を引く」ということです。図1の右の折れ線が、まさにこの形をしています。
高校高校+力は、どのように移し替えられるのか
高校断層がずれると、その面に沿っていた力は解放されますが、ずれた範囲の端では岩ばんが引きちぎられるように変形します。変形の大きい場所ほど、力の集中が強くなります。本震のすべった範囲の外側で余震が多いのは、この集中のためだと説明されています。
高校+この力の変化は、地震学ではクーロン応力変化という量で表されます。ある面をすべらせようとする力から、その面を押しつけて動きにくくする力の効果を差し引いたものです。この量が増えた領域で余震が増え、減った領域では地震活動が静かになる例が、いくつもの地震で報告されています。
大学岩石力学から見た「遅れて割れる」
岩石は、破壊の限界に達した瞬間に必ず割れるわけではありません。限界より少し小さい力でも、時間をかければ割れます。これは亜臨界き裂進展と呼ばれ、割れ目の先端で結合が一つずつ切れていく速度が、力と温度と水の有無に強く依存するために起こります。速度が力に対して急激に変わるため、力がわずかに違うだけで、割れるまでの時間は桁違いに変わります。この性質を岩ばん全体にならすと、余震の回数が時間に反比例して減るという大森公式に近い形が導かれることが示されています。断層の摩擦を、すべり速度と接触の履歴で表す速度状態依存摩擦則からも、同様の減り方が導かれます。
研究まだはっきりとはわかっていないこと
- 前震と余震の見分け。 起きている最中に「これは本震の前ぶれか」を判断する方法は、いまも確立していません。
- 遅れをつくる主役。 岩そのものの性質と、すき間の水の移動と、余震どうしの連鎖。どれがどれくらい効いているかは、地域によって議論が続いています。
- いつまで続くのか。 大きな地震のあと、数十年にわたって余震が続いていると考えられる例があり、どこまでを一連の活動と見るかは定まっていません。
- 遠くで誘発される揺れ。 何百キロメートルも離れた場所で、地震波の通過をきっかけに活動が活発になる例が報告されており、そのしくみは調べられている最中です。
つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。だからこそ、大きな揺れのあとは早めに安全な場所へ移るという判断が意味を持ちます。
教科書とのつながり(レベル別)
| レベル | 科目・単元 | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 中学 | 理科・大地の変化/比例と反比例 | 断層とずれ、回数の減り方の計算 |
| 高校 | 地学基礎(地震と断層、プレート) | 力がたまり、解放され、移し替えられる流れ |
| 高校+ | 発展・コラム(応力の変化) | クーロン応力変化と余震の分布 |
| 大学 | 地震学・岩石力学(亜臨界き裂進展、摩擦則) | 遅れて割れるしくみ、大森公式の導出 |
| 研究 | 統計地震学・地震予測(進行中) | 前震の判別、誘発される活動 |
| ― | 生活とのつながり | 大きな揺れのあとの過ごし方、傷んだ建物に近づかない判断 |
- 気象庁「地震について」および大きな地震のあとの地震活動に関する解説資料。
- 宇津徳治『地震学』(共立出版)の、余震の統計と大森公式を扱った章。
- 高校「地学基礎」教科書の、地震と断層に関する項。
- Scholz, C. H., "The Mechanics of Earthquakes and Faulting", Cambridge University Press.(断層の摩擦と余震を扱った標準的な教科書)
※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。実際の避難や建物の安全の判断は、市町村の指示、消防・自治体および気象庁の発表する情報に従ってください。