液状化は、なぜ
地面が「水」のようになるの?
大きな地震のあとのニュースで、地面から水と砂が噴き出し、建物が傾いて沈んでいる映像を見たことがあるかもしれません。硬いはずの地面が、まるで水のようにふるまう現象です。これが「液状化」です。
川の近くや、埋め立ててできた土地にある、ある住宅地。大きな地震が起き、しばらく揺れが続いたあと、静かになりました。見た目には、地面はふだんどおりです。
ところが、あちこちの道路の隙間や庭先から、灰色っぽい水と砂が、まるで泉のように噴き出しはじめます。時間がたつにつれ、家がわずかに傾き、道路のマンホールが地面から数十センチも突き出ているのに気づきます。
この一帯で起きているのが、地面が一時的に「水のような性質」を持ってしまう、液状化という現象です。
液状化が起きる理由は、2つだけ
砂の地盤が建物を支えられるのは、粒と粒が直接触れ合って、たがいに押し合っているからです。この押し合う力が、地盤の強さの正体です。
強い揺れで、粒どうしの間にある水の圧力が急に高まると、粒どうしが押し合う力が奪われます。力を失った粒は、水の中でバラバラに浮いた状態になります。
ひとつずつ、順番に見ていきましょう。
理由1:地盤の強さは、粒どうしの「押し合い」から生まれる
砂浜の砂を思い浮かべてください。乾いた砂の上には、しっかり立つことができます。これは、砂の粒どうしが直接触れ合い、たがいに押し合うことで、上に乗った重さを支えているからです。
ところが、水を含んだ砂の粒のあいだには、必ず水も入り込んでいます。ふだんは、この水の圧力(間隙水圧)はそれほど高くなく、粒どうしはしっかり触れ合ったままです。粒どうしが実際に押し合っている力のことを、専門的には「有効応力」と呼びます。この有効応力が、地盤の強さそのものです。
液状化は、どこでも起きるわけではありません。埋め立地、旧河道(昔、川が流れていた場所)、砂を多く含む地盤で、地下水位が高い(地面の浅いところまで水がある)場所で特に起きやすいとされています。自治体が公開している「液状化ハザードマップ」で、自分の住む地域の傾向をあらかじめ確認できます。
理由2:地震の揺れが、水の圧力を急上昇させる
ゆるく積もった砂の粒は、本来もう少し密に詰まろうとする性質を持っています。強い地震の揺れが繰り返し加わると、粒どうしが密に詰まろうとして、粒のすき間にあった水が押し出されます。
ところが、水がすき間から逃げ出すには時間がかかります。揺れが速すぎると、水は逃げ場を失い、粒のすき間に閉じ込められたまま圧力だけが急上昇します。この圧力が、粒どうしを押し合わせていた力に打ち勝つと、粒どうしは触れ合わなくなり、地盤全体が水の中に砂が浮いたような、液体に近い状態になります。これが液状化です。
液状化した地盤の上では、重い建物やタンクは沈み込み、逆に地中に埋められた軽い構造物(マンホールや浄化槽など)は、まわりの砂より軽いため浮き上がってくることがあります。地表の弱い部分からは、圧力の高まった水が砂を巻き込んで噴き出す「噴砂(ふんさ)」という現象も見られます。
じゃあ、どうすればいいの?
- 自分の住む場所が液状化しやすい地域か、事前に確認しておく自治体の液状化ハザードマップで確認できます。
- 地震が起きたら、まず身を守り、揺れが収まってから動く頭を守れる姿勢をとり、揺れが収まってから、落ち着いて安全な場所へ避難します。
- 液状化した可能性のある地面は、無理に歩かないぬかるんだり陥没したりしていることがあります。安全な経路を確認してから移動します。
地面から水や砂が噴き出す、地割れができる、建物が傾くといった様子に気づいたら、その建物や地面から離れ、安全な場所へ避難してください。電柱や電線の近くでは、倒壊や断線の危険もあるため、近づかないようにしてください。
建物の傾きや被害が大きい場合は、無理に中にとどまらず、119番へ連絡し、指示に従ってください。液状化は本震の直後だけでなく、余震でも再び起きることがあるとされているため、揺れが収まったからといって油断せず、しばらくは注意を続けることが大切です。
まとめ
液状化が起きるのは、①砂の粒どうしが押し合う力(有効応力)が地盤を支えていることと、②地震の揺れが粒の間の水圧を急上昇させ、その押し合う力を奪うことの、2つが重なるからです。地面という「固体」の強さは、実は粒どうしの押し合いという、意外と繊細なバランスの上に成り立っています。
地面を支えていたのは、硬さそのものではありません。
砂粒どうしの、ささやかな押し合いでした。
- 透明なペットボトルに、砂(または細かい土)と水を、砂が半分くらい浸る程度入れる
- ふたを閉めて、しばらく激しく振ってから、机の上に静かに置いて観察する
振っている間は砂と水が混ざって泥水のようになり、砂が水の中に浮いた状態になります。静かに置くと、時間とともに砂の粒がまた沈んで積もり、上澄みの水と分かれます。この「振ると崩れ、静かにすると固まる」変化が、液状化とその後の地盤の回復に近いイメージです。
もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
- 中学中学校の理科で習う範囲
- 高校高校の「物理基礎」で習う範囲
- 高校+高校の「地学」、または教科書の発展・コラム扱いの内容
- 大学高校では習わない、大学の専門科目(土質力学)の内容
- 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話
中学用語:液状化をめぐる言葉
- 間隙水圧:土の粒と粒のすき間にある水の圧力。
- 有効応力:粒どうしが実際に押し合っている力。地盤の強さのもと。
- 噴砂:液状化のときに、地表から水とともに砂が噴き出す現象。
高校式で確かめる:地盤の強さは、どうやって計算するのか
有効応力は、次の関係で表されるとされています。
有効応力 = 全応力 − 間隙水圧
| 全応力 | その深さの上にある土と水、すべての重さによる圧力[kN/m²] |
| 間隙水圧 | 粒のすき間にある水の圧力[kN/m²] |
| 有効応力 | 粒どうしが実際に押し合う力。地盤の強さのもと[kN/m²] |
| 飽和した砂の単位体積重量(仮定) | 19 kN/m³ |
| 水の単位体積重量 | 9.8 kN/m³ |
| 全応力(深さ5m) | 19 × 5 = 95 kN/m² |
| 通常時の間隙水圧(深さ5m) | 9.8 × 5 = 49 kN/m² |
| 通常時の有効応力 | 95 − 49 = 46 kN/m² |
※ 単位体積重量の値は、しくみを説明するための代表的な目安です。実際の値は土の種類によって異なります。
| 地震時、間隙水圧が全応力まで上昇した場合 | 95 kN/m² |
| このときの有効応力 | 95 − 95 = 0 kN/m² |
有効応力がゼロになるということは、粒どうしを押し合わせる力が完全になくなるということです。粒どうしが触れ合わなくなった地盤は、上に乗った建物やマンホールを支える力を失い、液体のようにふるまいます。これが液状化の正体です。
高校+なぜ「ゆるい砂」「地下水位が高い」場所で起きやすいのか
粒がゆるく積もった地盤ほど、粒のすき間が大きく、揺れによって粒が密に詰まろうとする余地が大きいとされています。詰まろうとする勢いが強いほど、押し出される水の圧力も高くなります。また、地下水位が高い(水で満たされたすき間が多い)ほど、間隙水圧が上昇しやすい条件がそろいます。逆に、もともと硬く締まった地盤や、地下水位の低い場所では、液状化は起きにくいとされています。
大学液状化の起きやすさを、数値で判定する
実際の地盤調査では、地震によって地盤にかかると予想される力(地震時せん断応力比)と、その地盤が液状化に抵抗できる力(液状化抵抗率)を比較し、「FL値」と呼ばれる指標で液状化の可能性を判定するとされています。FL値が1より小さいほど、液状化の危険性が高いと評価されます。この理論は、土質力学者テルツァーギが提唱した有効応力の考え方を土台にしており、大学の土質力学・地盤工学で学ぶ内容です。
研究まだ、はっきりしていないこと
- 液状化がどこで、どの程度の規模で起きるかを、狭い範囲まで正確に予測することは、まだ難しいとされています。 地盤の性質はごく近い場所でも大きく異なることがあり、精密な予測には多くの調査データが必要です。
- 地盤改良などの対策工法の効果を、長期的に検証する研究はいまも続けられています。 締め固めや排水など、さまざまな対策工法がありますが、どの工法がどの条件で最も効果的かは、実際の地震での検証データの蓄積が必要とされています。
- 長く続く揺れ(長周期地震動)が液状化にどう影響するかは、研究者の間でも議論が続いています。 揺れの継続時間や周期の違いが、液状化の起きやすさにどう関わるかは、研究が進められている分野です。
教科書とのつながり(レベル別)
| レベル | 科目・単元 | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 中学 | 理科・圧力、地層と大地の変化 | 粒どうしの押し合いが地盤を支えるという基本 |
| 高校 | 物理基礎・圧力の計算 | 式で確かめる①②③の計算全体 |
| 高校+ | 地学・地盤と地震災害 | ゆるい砂・地下水位と液状化の起きやすさ |
| 大学 | 土質力学・地盤工学 | 有効応力理論、FL値による液状化判定 |
| 研究 | 地盤工学・地震工学(研究中) | 液状化の予測精度、対策工法の検証、長周期地震動の影響 |
| ― | 防災・安全教育 | ハザードマップ、地震発生時の行動、余震への警戒 |
- 国土交通省・自治体による、液状化ハザードマップ・液状化対策に関する公開資料。
- 土質力学の教科書における、有効応力の原理(テルツァーギの提唱)に関する一般的な記述。
- 地盤工学関連の学会・専門団体による、液状化の判定手法(FL値)・過去の液状化被害に関する解説資料。
- 防災関連機関による、地震発生時の行動・液状化への注意喚起資料。
※ 単位体積重量・応力などの数値は、しくみを理解するための概算・仮定です。実際の値は地盤の種類・調査結果によって大きく異なります。
※本記事は一般向けの科学解説です。実際の防災判断・避難行動は、自治体・気象庁・消防などの専門機関の情報および指示に従ってください。掲載した数値は、しくみを理解するための概算・仮定です。