冬の日なたは、なぜ気温よりずっと暖かく感じるの?
― 低い冬の日差しは、体が自分で作る熱の2倍近くを届けています
天気予報では気温10度。それなのに、風のない日なたに立つと、上着を脱ぎたくなるほど暖かい。この暖かさは気のせいではありません。日差しは空気をほとんど温めずに通り抜け、あなたの体をじかに温めています。しかも冬の太陽は低いので、立っている体の正面に、夏よりまっすぐ当たるのです。
11月の晴れた昼休み。建物のかげを歩いていると、指先がかじかむほど寒く感じます。
ところが、日の当たるベンチに座ったとたん、背中がじんわり温まってきます。窓辺のネコも、日だまりで目を細めています。
日なたと日かげは、ほんの数歩の距離です。空気の温度はほとんど同じはずなのに、なぜこんなに違うのでしょうか。
日なたが暖かい理由は、2つだけです
空気は、太陽の光をほとんど吸いません。光は冷たい空気を通り抜けて、服や肌に当たったところで初めて熱に変わります。
夏の太陽は頭の真上近くにあり、立った体には斜めにしか当たりません。冬の太陽は低いので、体の正面で光を受け止められます。
この2つが重なると、冬の日なたでは、体が自分で作る熱に近い量か、それ以上の熱が外から届きます。順番に見ていきましょう。
気温は、わざと「日かげ」で測っています
天気予報の気温は、日の当たらない場所で測った空気の温度です。気象台では、日差しをさえぎって風通しをよくした筒の中に温度計を入れ、地面から1.5メートルほどの高さで測ります。
わざわざ日差しを避けるのは、温度計に日が当たると、温度計そのものが温まってしまうからです。空気は光をほとんど吸わないので、日なたでも空気の温度はあまり上がりません。つまり「気温10度」は、日なたにいるあなたが受け取る熱を、もともと数に入れていないのです。
晴れた日に、太陽に面を向けると、1平方メートルあたりおよそ800ワットの日差しが届くとされます。この光の大部分が、空気を温めないまま地上まで届いています。
冬の太陽は、低いからこそ体に効く
東京の正午の太陽の高さは、夏至のころで約78度、11月上旬で約38度、冬至のころで約31度です。冬の太陽は、夏よりずっと低い空を通ります。
図1を見てください。光は、面にまっすぐ当たるほど、たくさんのエネルギーを届けます。地面のような「よこの面」にとっては、高い夏の太陽がいちばん強く効きます。ところが、立っている体のような「たての面」にとっては、話が逆になります。低い冬の太陽のほうが、正面からまっすぐ当たるのです。
11月上旬の正午、太陽の高さ38度で数えてみると、立った体の正面には1平方メートルあたり約630ワットが届きます。大人の体を正面から見た面積と、服が光を吸う割合をかけると、体が受け取る熱は約180ワットです。
じっと座っている大人の体が自分で作る熱は、約100ワットとされます。冬の日なたでは、その2倍近い熱が外から届いていることになります。自分の体が、もう1人ぶん増えたような暖かさです。同じ計算を夏至の正午ですると、体の正面に届く熱は約46ワットまで下がります。夏の日差しが頭や肩ばかりを焼き、体の正面にはあまり当たらないのはこのためです。
小春日和は、晩秋から初冬にかけての、暖かく穏やかな晴れの日をさす言葉です。「小春」は、昔の暦の10月(いまの11月ごろ)の別の呼び名です。風が弱いことがこの暖かさの条件で、風が吹くと体の表面の温まった空気がすぐに運び去られます。同じ日差しでも、ビルの風下や塀の内側の「日だまり」が特に暖かいのはこのためです。
白い服は日差しの多くを跳ね返し、黒っぽい服は多くを吸い込みます。冬の日なたで濃い色の上着を着ていると、背中が早く温まるのはこのためです。ネコや鳥が日なたで毛や羽をふくらませるのも、光を受け止める面と、熱をためる空気の層を増やしていると考えられています。
まとめ
気温は日かげで測った空気の温度で、日なたで体が受け取る熱は数に入っていません。日差しは空気をほとんど温めずに通り抜け、体に当たって初めて熱になります。しかも冬の低い太陽は、立った体の正面にまっすぐ当たります。風のない冬の日なたが、気温の数字よりずっと暖かいのは、この2つが重なるからです。
冬の日なたは、空気ではなく光で暖まる場所。
低い太陽は、地面よりも、立っているあなたに強く届く。
たき火の熱が顔にだけ届くのも、同じ「光で熱が運ばれる」しくみです。くわしくはたき火にあたると、なぜ顔だけ熱くて、背中は寒いままなの?へ。太陽の高さが季節で変わる理由は季節はなぜあるの?で、地球全体に届く日差しの量は地球に届く太陽の光は、どれくらいのエネルギーなの?で扱っています。
- 晴れた日に、同じ温度計を2本用意します。1本は日かげに、もう1本は日なたの黒い布の上に置きます。
- 10分ほど待って、2本の目盛りを比べます。日なたの黒い布の上の温度計は、日かげより大きく上がるはずです。
- 次に、日なたの温度計にうちわで風を送ります。目盛りが下がっていけば、風が熱を運び去っていることが分かります。
日なたの温度計が示すのは空気の温度ではなく、「光を受けた物の温度」です。気象台が温度計を日かげで使う理由も、この実験で実感できます。
もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
- 中学中学校の理科で習う範囲
- 高校高校の「物理」「地学」で習う範囲
- 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
- 大学高校では習わない、大学の専門科目(伝熱工学・気象学・建築環境工学)の内容
- 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話
中学用語:この現象には名前があります
- 放射(ほうしゃ):熱が、空気などの物を介さずに、光(電磁波)として直接運ばれる伝わり方。太陽の熱も、たき火の熱も、この形で届きます。
- 日射(にっしゃ):太陽から地上に届く光のエネルギー。1平方メートルあたり何ワットかで表します。
- 南中高度(なんちゅうこうど):太陽が真南に来たとき(1日でいちばん高いとき)の、地平線からの角度。夏に高く、冬に低くなります。
中学高校式で確かめる:冬の日なたで、体はどれだけの熱を受け取るか
11月上旬の東京の正午(太陽の高さ38度)に、太陽のほうを向いて立った大人が受け取る熱を見積もります。
| 記号で書くと | P = a × S × A × cos h |
| 言葉で書くと | 体が受け取る熱 = 吸う割合 × 太陽に正面から向けた面に届く日差し × 体の正面の面積 × 太陽の高さの余弦 |
| どこから来る式か | 光のエネルギーの保存。同じ太さの光の束が斜めの面に当たると、広い面に薄く広がる。たての面では、届く強さが太陽の高さの余弦(cos)の割合に減る |
| P | 体が受け取る熱(単位はワット) |
| a | 服や肌が光を吸う割合(0〜1) |
| S | 太陽に正面から向けた面に届く日差しの強さ(ワット毎平方メートル) |
| A | 体を正面から見た面積(平方メートル) |
| h | 太陽の高さ(地平線からの角度) |
| 晴れた日に、太陽に正面から向けた面に届く日差し S | およそ 800 ワット毎平方メートルとされる |
| 11月上旬の東京の南中高度 h と、その余弦 | 約38度。cos 38度 は およそ 0.788 |
| 大人の体を正面から見た面積 A | およそ 0.4 平方メートル(目安) |
| 濃い色の服が光を吸う割合 a | およそ 0.7(目安) |
| 安静にしている大人が作る熱 | およそ 100 ワットとされる |
| たての面に届く日差し(1平方メートルあたり) | 800 × 0.788 ≒ 630 ワット |
| 体の正面全体に届く日差し | 630 × 0.4 = 252 ワット |
| そのうち体が吸う熱 P | 252 × 0.7 ≒ 176 ワット |
| 体が自分で作る熱との比 | 176 ÷ 100 ≒ 1.8 倍 |
| 比べてみる:夏至の正午(高さ78度、cos は およそ 0.208) | 800 × 0.208 ≒ 166 ワット |
| 面積と吸う割合をまとめた係数 | 0.4 × 0.7 = 0.28 |
| 夏至の体の正面全体が吸う熱 | 166 × 0.28 ≒ 46 ワット |
冬の日なたで体が受け取る熱は約176ワットで、自分の体が作る熱の約1.8倍です。体の熱がもう1人ぶん増えたのと同じくらいになります。同じ日差しの強さでも、夏至の正午には体の正面は約46ワットしか受け取りません。季節で4倍近い差が、太陽の高さだけで生まれます。
高校高校+空気が日差しで温まらないわけ
高校太陽の光は、目に見える光と近赤外線がほとんどです。空気の主成分である窒素と酸素は、この波長の光をほとんど吸いません。そのため日差しは大気を通り抜け、地面や体に当たって初めて熱に変わります。空気が温まるのは、主に温まった地面に下から触れることによります。
高校+人が感じる暖かさは、気温だけでなく、まわりの壁や空から届く放射、日射、風速、湿度で決まります。建築や気象の分野では、まわりから届く放射をまとめて一つの温度で表した「平均放射温度」や、気温と合わせた「作用温度」という指標が使われます。冬の日なたは、気温が低くても平均放射温度がずっと高い場所です。
大学放射伝熱と日射量の計算
地上の日射は、太陽から直接届く「直達日射」と、空で散らばってから届く「散乱日射」に分けられます。傾いた面に届く直達日射は、入射角の余弦をかけて求めます(ランベルトの余弦則)。人の体が受け取る日射は、体の向きと太陽の向きから「投影面積率」を求めて計算されます。体から逃げる熱は、ステファン・ボルツマンの法則で表される放射と、風速に強く左右される対流熱伝達の和として扱われます。
📖 式の導出や、さらに先の内容:太陽放射(ウィキペディア) / ランベルトの余弦則(ウィキペディア)
研究まだはっきりとはわかっていないこと
- 「暖かさ」を一つの数で表す方法。 気温・日射・風・湿度・服装をまとめた体感の指標は、国際的なものも含めていくつも提案されています。屋外の日なたでどれが人の感じ方に最も合うかは、いまも比較が続いています。
- 黒い服と白い服、本当に暖かいのはどちらか。 黒い服は光を多く吸いますが、熱は服の表面で生まれます。風があると、その熱が肌に届く前に運び去られることもあり、条件によっては差が小さくなると報告されています。
- 動物の日光浴の決め方。 トカゲやチョウは、体の向きや翅の角度を変えて受け取る日差しを調節するとされます。いつ、どの角度で日を浴びるかを、どんな手がかりで決めているかは種ごとに調べられている最中です。
つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。ここで使った面積や吸う割合は目安で、体格・服の色・姿勢によって数割は変わります。
教科書とのつながり(レベル別)
| レベル | 科目・単元 | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 中学 | 理科「熱の伝わり方」「太陽の南中高度と季節」 | 放射、夏と冬の太陽の高さ |
| 高校 | 物理「熱とエネルギー」、地学「大気の熱収支」 | 日差しが空気を素通りするわけ |
| 高校+ | 環境と人体の熱のやりとり(発展) | 平均放射温度、作用温度 |
| 大学 | 伝熱工学、気象学、建築環境工学 | 直達日射と散乱日射、余弦則、放射と対流 |
| 研究 | 屋外の温熱快適性、生き物の体温調節 | 体感の指標、服の色、動物の日光浴 |
| ― | 生活とのつながり | 冬の日なたぼっこ、日だまりの選び方、上着の色 |
- 小春日和(ウィキペディア)
- 太陽放射(ウィキペディア)
- 気象庁『気象観測の手引き』(気温の観測方法)
- 国立天文台 編『理科年表』丸善出版(日射量、太陽の南中高度)
- 日本建築学会 編『建築環境工学用教材 環境編』丸善出版(平均放射温度、作用温度)
※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。体が受け取る熱は、体格・服装・姿勢・空の状態によって大きく変わります。