日常のふしぎ エネルギー 予備知識なしでOK 読了 約7分

冬の日なたは、なぜ気温よりずっと暖かく感じるの?
― 低い冬の日差しは、体が自分で作る熱の2倍近くを届けています

天気予報では気温10度。それなのに、風のない日なたに立つと、上着を脱ぎたくなるほど暖かい。この暖かさは気のせいではありません。日差しは空気をほとんど温めずに通り抜け、あなたの体をじかに温めています。しかも冬の太陽は低いので、立っている体の正面に、夏よりまっすぐ当たるのです。

公開:2026.10.30 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、こんな場面を思い浮かべてください

11月の晴れた昼休み。建物のかげを歩いていると、指先がかじかむほど寒く感じます。

ところが、日の当たるベンチに座ったとたん、背中がじんわり温まってきます。窓辺のネコも、日だまりで目を細めています。

日なたと日かげは、ほんの数歩の距離です。空気の温度はほとんど同じはずなのに、なぜこんなに違うのでしょうか。

日なたが暖かい理由は、2つだけです

1
日差しは、空気を素通りして体をじかに温める

空気は、太陽の光をほとんど吸いません。光は冷たい空気を通り抜けて、服や肌に当たったところで初めて熱に変わります。

2
冬の低い太陽は、立った体の正面に当たる

夏の太陽は頭の真上近くにあり、立った体には斜めにしか当たりません。冬の太陽は低いので、体の正面で光を受け止められます。

この2つが重なると、冬の日なたでは、体が自分で作る熱に近い量か、それ以上の熱が外から届きます。順番に見ていきましょう。

気温は、わざと「日かげ」で測っています

天気予報の気温は、日の当たらない場所で測った空気の温度です。気象台では、日差しをさえぎって風通しをよくした筒の中に温度計を入れ、地面から1.5メートルほどの高さで測ります。

わざわざ日差しを避けるのは、温度計に日が当たると、温度計そのものが温まってしまうからです。空気は光をほとんど吸わないので、日なたでも空気の温度はあまり上がりません。つまり「気温10度」は、日なたにいるあなたが受け取る熱を、もともと数に入れていないのです。

晴れた日に、太陽に面を向けると、1平方メートルあたりおよそ800ワットの日差しが届くとされます。この光の大部分が、空気を温めないまま地上まで届いています。

冬の太陽は、低いからこそ体に効く

東京の正午の太陽の高さは、夏至のころで約78度、11月上旬で約38度、冬至のころで約31度です。冬の太陽は、夏よりずっと低い空を通ります。

図1を見てください。光は、面にまっすぐ当たるほど、たくさんのエネルギーを届けます。地面のような「よこの面」にとっては、高い夏の太陽がいちばん強く効きます。ところが、立っている体のような「たての面」にとっては、話が逆になります。低い冬の太陽のほうが、正面からまっすぐ当たるのです。

右へのびる影 立っている人 太陽の高さ(地面からの角度) 38度 1平方メートルに届く日差しの強さ (晴れた日の目安。単位はワット) 上:立った体の正面(たての面) 630 下:地面(よこの面) 493 体が受け取る熱(ワット、目安) 176 安静時に体が作る熱(ワット) 100
つまみを動かすと、体の正面と地面に届く日差しの強さが入れかわります
図1:太陽の高さと、届く日差しの強さ。左は、左上の太陽から来る点線の光が、立っている人と地面に当たるようす。右の上の棒が「立った体の正面」、下の棒が「地面」に届く強さです。つまみで太陽を低くすると、上の棒が伸びて下の棒が縮み、影が右へ長くのびます。冬の低い太陽は、地面よりも、立った体のほうに強く効くことが分かります。

11月上旬の正午、太陽の高さ38度で数えてみると、立った体の正面には1平方メートルあたり約630ワットが届きます。大人の体を正面から見た面積と、服が光を吸う割合をかけると、体が受け取る熱は約180ワットです。

じっと座っている大人の体が自分で作る熱は、約100ワットとされます。冬の日なたでは、その2倍近い熱が外から届いていることになります。自分の体が、もう1人ぶん増えたような暖かさです。同じ計算を夏至の正午ですると、体の正面に届く熱は約46ワットまで下がります。夏の日差しが頭や肩ばかりを焼き、体の正面にはあまり当たらないのはこのためです。

💡 「小春日和」は、春ではなく初冬の言葉

小春日和は、晩秋から初冬にかけての、暖かく穏やかな晴れの日をさす言葉です。「小春」は、昔の暦の10月(いまの11月ごろ)の別の呼び名です。風が弱いことがこの暖かさの条件で、風が吹くと体の表面の温まった空気がすぐに運び去られます。同じ日差しでも、ビルの風下や塀の内側の「日だまり」が特に暖かいのはこのためです。

💡 黒い服のほうが暖かいのは、色が光を吸うから

白い服は日差しの多くを跳ね返し、黒っぽい服は多くを吸い込みます。冬の日なたで濃い色の上着を着ていると、背中が早く温まるのはこのためです。ネコや鳥が日なたで毛や羽をふくらませるのも、光を受け止める面と、熱をためる空気の層を増やしていると考えられています。

まとめ

気温は日かげで測った空気の温度で、日なたで体が受け取る熱は数に入っていません。日差しは空気をほとんど温めずに通り抜け、体に当たって初めて熱になります。しかも冬の低い太陽は、立った体の正面にまっすぐ当たります。風のない冬の日なたが、気温の数字よりずっと暖かいのは、この2つが重なるからです。

冬の日なたは、空気ではなく光で暖まる場所。
低い太陽は、地面よりも、立っているあなたに強く届く。

たき火の熱が顔にだけ届くのも、同じ「光で熱が運ばれる」しくみです。くわしくはたき火にあたると、なぜ顔だけ熱くて、背中は寒いままなの?へ。太陽の高さが季節で変わる理由は季節はなぜあるの?で、地球全体に届く日差しの量は地球に届く太陽の光は、どれくらいのエネルギーなの?で扱っています。

🧪 自分で確かめてみよう:日なたと日かげの「温度計」
  1. 晴れた日に、同じ温度計を2本用意します。1本は日かげに、もう1本は日なたの黒い布の上に置きます。
  2. 10分ほど待って、2本の目盛りを比べます。日なたの黒い布の上の温度計は、日かげより大きく上がるはずです。
  3. 次に、日なたの温度計にうちわで風を送ります。目盛りが下がっていけば、風が熱を運び去っていることが分かります。

日なたの温度計が示すのは空気の温度ではなく、「光を受けた物の温度」です。気象台が温度計を日かげで使う理由も、この実験で実感できます。

もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「物理」「地学」で習う範囲
  • 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(伝熱工学・気象学・建築環境工学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:この現象には名前があります

中学高校式で確かめる:冬の日なたで、体はどれだけの熱を受け取るか

11月上旬の東京の正午(太陽の高さ38度)に、太陽のほうを向いて立った大人が受け取る熱を見積もります。

⓪ もとになる式
記号で書くとP = a × S × A × cos h
言葉で書くと体が受け取る熱 = 吸う割合 × 太陽に正面から向けた面に届く日差し × 体の正面の面積 × 太陽の高さの余弦
どこから来る式か光のエネルギーの保存。同じ太さの光の束が斜めの面に当たると、広い面に薄く広がる。たての面では、届く強さが太陽の高さの余弦(cos)の割合に減る
P体が受け取る熱(単位はワット)
a服や肌が光を吸う割合(0〜1)
S太陽に正面から向けた面に届く日差しの強さ(ワット毎平方メートル)
A体を正面から見た面積(平方メートル)
h太陽の高さ(地平線からの角度)
① もとになる数値
晴れた日に、太陽に正面から向けた面に届く日差し Sおよそ 800 ワット毎平方メートルとされる
11月上旬の東京の南中高度 h と、その余弦約38度。cos 38度 は およそ 0.788
大人の体を正面から見た面積 Aおよそ 0.4 平方メートル(目安)
濃い色の服が光を吸う割合 aおよそ 0.7(目安)
安静にしている大人が作る熱およそ 100 ワットとされる
② 計算してみる
たての面に届く日差し(1平方メートルあたり)800 × 0.788 ≒ 630 ワット
体の正面全体に届く日差し630 × 0.4 = 252 ワット
そのうち体が吸う熱 P252 × 0.7 ≒ 176 ワット
体が自分で作る熱との比176 ÷ 100 ≒ 1.8 倍
比べてみる:夏至の正午(高さ78度、cos は およそ 0.208)800 × 0.208 ≒ 166 ワット
面積と吸う割合をまとめた係数0.4 × 0.7 = 0.28
夏至の体の正面全体が吸う熱166 × 0.28 ≒ 46 ワット

冬の日なたで体が受け取る熱は約176ワットで、自分の体が作る熱の約1.8倍です。体の熱がもう1人ぶん増えたのと同じくらいになります。同じ日差しの強さでも、夏至の正午には体の正面は約46ワットしか受け取りません。季節で4倍近い差が、太陽の高さだけで生まれます。

高校高校+空気が日差しで温まらないわけ

高校太陽の光は、目に見える光と近赤外線がほとんどです。空気の主成分である窒素と酸素は、この波長の光をほとんど吸いません。そのため日差しは大気を通り抜け、地面や体に当たって初めて熱に変わります。空気が温まるのは、主に温まった地面に下から触れることによります。

高校+人が感じる暖かさは、気温だけでなく、まわりの壁や空から届く放射、日射、風速、湿度で決まります。建築や気象の分野では、まわりから届く放射をまとめて一つの温度で表した「平均放射温度」や、気温と合わせた「作用温度」という指標が使われます。冬の日なたは、気温が低くても平均放射温度がずっと高い場所です。

大学放射伝熱と日射量の計算

地上の日射は、太陽から直接届く「直達日射」と、空で散らばってから届く「散乱日射」に分けられます。傾いた面に届く直達日射は、入射角の余弦をかけて求めます(ランベルトの余弦則)。人の体が受け取る日射は、体の向きと太陽の向きから「投影面積率」を求めて計算されます。体から逃げる熱は、ステファン・ボルツマンの法則で表される放射と、風速に強く左右される対流熱伝達の和として扱われます。

📖 式の導出や、さらに先の内容:太陽放射(ウィキペディア) / ランベルトの余弦則(ウィキペディア)

研究まだはっきりとはわかっていないこと

つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。ここで使った面積や吸う割合は目安で、体格・服の色・姿勢によって数割は変わります。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学理科「熱の伝わり方」「太陽の南中高度と季節」放射、夏と冬の太陽の高さ
高校物理「熱とエネルギー」、地学「大気の熱収支」日差しが空気を素通りするわけ
高校+環境と人体の熱のやりとり(発展)平均放射温度、作用温度
大学伝熱工学、気象学、建築環境工学直達日射と散乱日射、余弦則、放射と対流
研究屋外の温熱快適性、生き物の体温調節体感の指標、服の色、動物の日光浴
―生活とのつながり冬の日なたぼっこ、日だまりの選び方、上着の色
参考・出典
  1. 小春日和(ウィキペディア)
  2. 太陽放射(ウィキペディア)
  3. 気象庁『気象観測の手引き』(気温の観測方法)
  4. 国立天文台 編『理科年表』丸善出版(日射量、太陽の南中高度)
  5. 日本建築学会 編『建築環境工学用教材 環境編』丸善出版(平均放射温度、作用温度)

※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。体が受け取る熱は、体格・服装・姿勢・空の状態によって大きく変わります。