氷は透明なのに、雪はなぜ白く見えるの?
― 同じ「氷」なのに、見え方がこんなに違う理由
冷凍庫でつくった氷は、向こう側が透けて見える透明な塊です。ところが、空から降ってくる雪や、積もった雪は真っ白に見えます。どちらも同じ、凍った水(氷)だというのに、見た目がこれほど違うのはなぜでしょうか。
氷を1つ手に取ると、反対側にある物の形が、ぼんやりとでも透けて見えることが分かります。一方、雪だるまや積もった雪は、光をまったく通さない、まぶしいくらいの白さをしています。
氷も雪も、成分としてはまったく同じ、凍った水です。それなのに、片方は透明で、もう片方は白い。この違いを生んでいるのは、色そのものではなく、氷の「かたまり方」の違いにあるとされています。
雪はいったい、氷とどう違う構造をしているのでしょうか。
大きな氷の塊の中は、ほぼ均一な氷でできており、光がじゃまされずに進みやすいとされています。
雪の結晶と空気の境界を光が通るたびに、向きを変えられ(散乱し)、あらゆる方向に散らばっていきます。
この「光の散乱のしかたの違い」を、順番に見ていきます。
なぜ、1枚の氷は透明なのか
光は、性質の違う物質の境界(たとえば空気と氷の境目)を通るたびに、一部が反射したり、進む向きが曲げられたり(屈折)するとされています。大きな1枚の氷の中には、このような境界がほとんどありません。表面で少し反射や屈折が起きるだけで、あとは光がじゃまされずにまっすぐ進みやすいため、向こう側の景色が透けて見えるというわけです。
雪は、無数の小さな氷の粒と空気のすき間でできている
雪は、空気中の水蒸気が凍ってできる、非常に細かい氷の結晶が、無数に積み重なった状態だとされています。結晶と結晶のあいだには、たくさんの空気のすき間が含まれています。つまり雪の内部には、「氷」と「空気」という、性質の違う物質の境界が、数えきれないほど存在していることになります。
無色透明な氷のかけらが、無数に集まって光を乱反射させることで、白く見えているだけなのです。
光は、氷と空気の境界で、何度も向きを変える
雪の中を進む光は、氷の結晶と空気の境界にぶつかるたびに、少しずつ反射・屈折をくり返します。境界の数が非常に多いため、光は雪の中で何度も何度も向きを変えられ(多重散乱)、最終的にはあらゆる方向に散らばって、雪の外へ出ていきます。この、あらゆる方向に散らばった光が私たちの目に届くことで、雪はまぶしいほど明るく、白く見えると考えられています。
雲、シャボン玉の泡、牛乳、砕いたガラスなど、本来は無色透明・半透明なはずのものが白く見える現象は、身近にいくつも見られます。これらの多くは、雪と同じように、細かい粒や気泡が無数に集まり、光を何度も散乱させていることが理由の1つだと考えられています。
自分で確かめられること
- 透明な氷を1つ用意する(製氷機や冷凍庫でつくったものでよい)
- 氷が透けて見えることを確認したら、清潔な布などで包み、細かく砕く(安全に注意して行う)
- 砕いた氷(かき氷のような状態)を見て、透明感がどう変わったかを確認する
- 細かく砕くほど、白っぽく見えるようになることを確かめる
1つの透明な氷を細かく砕くだけで、雪のように白っぽく見えるようになる様子を、自分の目で確かめられます。
まとめ
氷が透明に見えるのは、光をじゃまする境界が少なく、まっすぐ通り抜けやすいためです。一方、雪が白く見えるのは、無数の小さな氷の粒と空気のすき間があり、その境界で光が何度も向きを変えながら、あらゆる方向に散らばるためだと考えられています。同じ「凍った水」でも、その集まり方によって、見た目がまったく違ってくるというわけです。
雪の白さは、色をまとった白ではなく、無数の小さな光の跳ね返りが積み重なって生まれた、透明の集合体だったのです。
もっと知りたい人へ ― 用語・数値・教科書とのつながり中学理科から研究中の話題まで、どのレベルの話かを明示しています
- 中学中学校の理科で習う範囲
- 高校高校の「物理基礎」で習う範囲
- 高校+高校の「物理」、または教科書の発展・コラム扱いの内容
- 大学高校では習わない、大学の専門科目(光学)の内容
- 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話
中学用語:氷と雪の見え方をめぐる言葉
- 屈折:光が、性質の違う物質の境界で進む向きを変える現象。
- 散乱:光が、物にぶつかってさまざまな方向に散らばること。
- 多重散乱:光が、何度も散乱をくり返すこと。
高校式で確かめる:境界を通るたびに、まっすぐ進む光がどれだけ減るか
境界を1つ通るたびに、光の一部の向きが変わると考え、まっすぐ進み続ける光の割合を、単純化したモデルで計算してみます。
まっすぐ進む光の割合 = 直前の割合 × 0.5(境界を1つ通るごとに)
| × 0.5 | 境界を1つ通るごとに、光のおよそ半分が向きを変えるという目安のモデルによる |
| 境界1つ目を通過後 | 100 × 0.5 = 50 |
| 境界2つ目を通過後 | 50 × 0.5 = 25 |
| 境界3つ目を通過後 | 25 × 0.5 = 12.5 |
| 境界4つ目を通過後 | 12.5 × 0.5 = 6.25 |
| 結果 | わずか4つの境界を通っただけで、まっすぐ進む光は約6%まで減る |
実際の雪の中には、これよりもはるかに多くの境界が存在するとされ、ごく薄い雪の層でも、光がまっすぐ通り抜けにくくなることが、この単純化した計算からもイメージできます。
※ 「1つの境界で50%」という数値は、しくみを理解するための単純化した目安のモデルです。実際の割合は、氷の粒の大きさや詰まり方によって変わるとされています。
高校+なぜ、どの色も同じように散乱するのか
雪が特定の色に色づかず、まんべんなく白く見えるのは、氷が可視光線のどの波長(色)もほとんど同じように吸収せず、通しやすい性質を持っているためだとされています。すべての色の光が同じように散乱され、混ざり合って目に届くため、白色として認識されると考えられています。
大学多重散乱を扱う、光学のモデル
光学の分野では、雪や雲のように、多数の微小な粒子が光を何度も散乱させる現象を、統計的な手法を用いてモデル化する研究が行われています。こうしたモデルは、雪の反射率(アルベド)を正確に見積もるうえでも重要とされています。
研究まだ、はっきりしていないこと
- 雪の結晶の形や密度が、反射率(アルベド)にどこまで細かく影響するかについては、光学・雪氷学の分野で、いまも詳しい研究が続けられているテーマです。
- 地球全体の気候変動にともなって、雪や氷の反射率がどう変化し、気温上昇にどう影響するか(雪氷アルベドフィードバックと呼ばれる現象)についても、気候科学の重要な研究課題とされています。
- 人工衛星から雪や氷の状態を正確に観測するリモートセンシング技術の研究開発も進められています。
真っ白な雪景色にも、光学と気候科学が交わる、いまも研究が続く豊かなテーマが広がっています。
教科書とのつながり(レベル別)
| レベル | 科目・単元 | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 中学 | 理科・光の性質 | 屈折・散乱・多重散乱の基本用語 |
| 高校 | 物理基礎・光の反射と屈折 | 境界を通るたびに光が減る計算 |
| 高校+ | 物理・光の波長と色(発展) | 色ごとの吸収の違いがない理由 |
| 大学 | 光学 | 多重散乱の統計的モデルと反射率 |
| 研究 | 雪氷学・気候科学(研究中) | 雪氷アルベドフィードバック、リモートセンシング技術 |
- 物理学関連の教科書における、光の反射・屈折・散乱に関する解説。
- 雪氷学関連の資料における、雪の光学的性質(反射率)に関する解説。
- 気候科学分野における、雪氷アルベドフィードバックに関する研究レビュー。
- 光学分野における、多重散乱のモデル化に関する研究レビュー。
- リモートセンシング分野における、衛星観測による雪氷モニタリング技術に関する解説。
※ 境界での光の変化の割合は、しくみを理解するための単純化した目安のモデルです。実際の雪の光学的性質は、結晶の形や密度によって変わることがあるとされています。
※本記事は一般向けの科学解説です。氷や雪で遊ぶ際は、滑りやすい場所での転倒や、寒さによる体調不良に十分注意してください。