❄️ 日常のふしぎ 💡 光 予備知識なしでOK 読了 約5分

氷は透明なのに、雪はなぜ白く見えるの?
― 同じ「氷」なのに、見え方がこんなに違う理由

冷凍庫でつくった氷は、向こう側が透けて見える透明な塊です。ところが、空から降ってくる雪や、積もった雪は真っ白に見えます。どちらも同じ、凍った水(氷)だというのに、見た目がこれほど違うのはなぜでしょうか。

公開:2026.08.20 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、思い出してみてください

氷を1つ手に取ると、反対側にある物の形が、ぼんやりとでも透けて見えることが分かります。一方、雪だるまや積もった雪は、光をまったく通さない、まぶしいくらいの白さをしています。

氷も雪も、成分としてはまったく同じ、凍った水です。それなのに、片方は透明で、もう片方は白い。この違いを生んでいるのは、色そのものではなく、氷の「かたまり方」の違いにあるとされています。

雪はいったい、氷とどう違う構造をしているのでしょうか。

1
1枚の氷は、光をさえぎるものが少なく、まっすぐ通り抜けます

大きな氷の塊の中は、ほぼ均一な氷でできており、光がじゃまされずに進みやすいとされています。

2
雪は、無数の小さな氷の粒と、そのすき間の空気でできています

雪の結晶と空気の境界を光が通るたびに、向きを変えられ(散乱し)、あらゆる方向に散らばっていきます。

この「光の散乱のしかたの違い」を、順番に見ていきます。

光は、境界にぶつかるたびに向きを変える 1枚の氷(ほぼ直進) 雪(何度も向きが変わり散らばる)
図1:左の1枚の氷では、光(黄色い矢印)はほぼまっすぐ通り抜けます。右の雪では、無数の小さな氷の粒(水色の丸)と空気のすき間の境界に光がぶつかるたびに、向きを何度も変えながら、あらゆる方向に散らばっていきます。

なぜ、1枚の氷は透明なのか

光は、性質の違う物質の境界(たとえば空気と氷の境目)を通るたびに、一部が反射したり、進む向きが曲げられたり(屈折)するとされています。大きな1枚の氷の中には、このような境界がほとんどありません。表面で少し反射や屈折が起きるだけで、あとは光がじゃまされずにまっすぐ進みやすいため、向こう側の景色が透けて見えるというわけです。

雪は、無数の小さな氷の粒と空気のすき間でできている

雪は、空気中の水蒸気が凍ってできる、非常に細かい氷の結晶が、無数に積み重なった状態だとされています。結晶と結晶のあいだには、たくさんの空気のすき間が含まれています。つまり雪の内部には、「氷」と「空気」という、性質の違う物質の境界が、数えきれないほど存在していることになります。

雪は、白い色素を持っているわけではありません。
無色透明な氷のかけらが、無数に集まって光を乱反射させることで、白く見えているだけなのです。

光は、氷と空気の境界で、何度も向きを変える

雪の中を進む光は、氷の結晶と空気の境界にぶつかるたびに、少しずつ反射・屈折をくり返します。境界の数が非常に多いため、光は雪の中で何度も何度も向きを変えられ(多重散乱)、最終的にはあらゆる方向に散らばって、雪の外へ出ていきます。この、あらゆる方向に散らばった光が私たちの目に届くことで、雪はまぶしいほど明るく、白く見えると考えられています。

🔎 「白く見える」ものには、共通の理由があることも

雲、シャボン玉の泡、牛乳、砕いたガラスなど、本来は無色透明・半透明なはずのものが白く見える現象は、身近にいくつも見られます。これらの多くは、雪と同じように、細かい粒や気泡が無数に集まり、光を何度も散乱させていることが理由の1つだと考えられています。

自分で確かめられること

🧪 透明な氷を細かく砕いて、見た目の変化を確かめる
  1. 透明な氷を1つ用意する(製氷機や冷凍庫でつくったものでよい)
  2. 氷が透けて見えることを確認したら、清潔な布などで包み、細かく砕く(安全に注意して行う)
  3. 砕いた氷(かき氷のような状態)を見て、透明感がどう変わったかを確認する
  4. 細かく砕くほど、白っぽく見えるようになることを確かめる

1つの透明な氷を細かく砕くだけで、雪のように白っぽく見えるようになる様子を、自分の目で確かめられます。

まとめ

氷が透明に見えるのは、光をじゃまする境界が少なく、まっすぐ通り抜けやすいためです。一方、雪が白く見えるのは、無数の小さな氷の粒と空気のすき間があり、その境界で光が何度も向きを変えながら、あらゆる方向に散らばるためだと考えられています。同じ「凍った水」でも、その集まり方によって、見た目がまったく違ってくるというわけです。

雪の白さは、色をまとった白ではなく、無数の小さな光の跳ね返りが積み重なって生まれた、透明の集合体だったのです。

もっと知りたい人へ ― 用語・数値・教科書とのつながり中学理科から研究中の話題まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「物理基礎」で習う範囲
  • 高校+高校の「物理」、または教科書の発展・コラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(光学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:氷と雪の見え方をめぐる言葉

高校式で確かめる:境界を通るたびに、まっすぐ進む光がどれだけ減るか

境界を1つ通るたびに、光の一部の向きが変わると考え、まっすぐ進み続ける光の割合を、単純化したモデルで計算してみます。

① まず、式そのもの

まっすぐ進む光の割合 = 直前の割合 × 0.5(境界を1つ通るごとに)

× 0.5境界を1つ通るごとに、光のおよそ半分が向きを変えるという目安のモデルによる
② 実際に計算してみる(はじめの光の量を100とする)
境界1つ目を通過後100 × 0.5 = 50
境界2つ目を通過後50 × 0.5 = 25
境界3つ目を通過後25 × 0.5 = 12.5
境界4つ目を通過後12.5 × 0.5 = 6.25
結果わずか4つの境界を通っただけで、まっすぐ進む光は約6%まで減る

実際の雪の中には、これよりもはるかに多くの境界が存在するとされ、ごく薄い雪の層でも、光がまっすぐ通り抜けにくくなることが、この単純化した計算からもイメージできます。

※ 「1つの境界で50%」という数値は、しくみを理解するための単純化した目安のモデルです。実際の割合は、氷の粒の大きさや詰まり方によって変わるとされています。

高校+なぜ、どの色も同じように散乱するのか

雪が特定の色に色づかず、まんべんなく白く見えるのは、氷が可視光線のどの波長(色)もほとんど同じように吸収せず、通しやすい性質を持っているためだとされています。すべての色の光が同じように散乱され、混ざり合って目に届くため、白色として認識されると考えられています。

大学多重散乱を扱う、光学のモデル

光学の分野では、雪や雲のように、多数の微小な粒子が光を何度も散乱させる現象を、統計的な手法を用いてモデル化する研究が行われています。こうしたモデルは、雪の反射率(アルベド)を正確に見積もるうえでも重要とされています。

研究まだ、はっきりしていないこと

真っ白な雪景色にも、光学と気候科学が交わる、いまも研究が続く豊かなテーマが広がっています。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学理科・光の性質屈折・散乱・多重散乱の基本用語
高校物理基礎・光の反射と屈折境界を通るたびに光が減る計算
高校+物理・光の波長と色(発展)色ごとの吸収の違いがない理由
大学光学多重散乱の統計的モデルと反射率
研究雪氷学・気候科学(研究中)雪氷アルベドフィードバック、リモートセンシング技術
参考・出典
  1. 物理学関連の教科書における、光の反射・屈折・散乱に関する解説。
  2. 雪氷学関連の資料における、雪の光学的性質(反射率)に関する解説。
  3. 気候科学分野における、雪氷アルベドフィードバックに関する研究レビュー。
  4. 光学分野における、多重散乱のモデル化に関する研究レビュー。
  5. リモートセンシング分野における、衛星観測による雪氷モニタリング技術に関する解説。

※ 境界での光の変化の割合は、しくみを理解するための単純化した目安のモデルです。実際の雪の光学的性質は、結晶の形や密度によって変わることがあるとされています。

※本記事は一般向けの科学解説です。氷や雪で遊ぶ際は、滑りやすい場所での転倒や、寒さによる体調不良に十分注意してください。