軽石は、なぜ石なのに水に浮くの?
― 火山が閉じこめた、無数の泡
軽石は、まぎれもない石です。それなのに、水に入れるとぷかぷかと浮きます。軽い材料でできているからではありません。石そのものは、ふつうの岩とほとんど同じ重さです。浮くのは、中身の多くが泡だからです。その泡は、火山が噴き出した一瞬のうちに生まれました。
お風呂で使う軽石を、水を張った洗面器に入れてみます。石なのに沈まず、水面でくるりと向きを変えて浮かびます。
同じくらいの大きさの川原の石を入れると、こちらは音を立てて底に沈みます。手に持ったときの重さも、まるで違います。
軽石をよく見ると、表面じゅうに小さな穴があいています。この穴が、浮く理由のすべてです。
理由は2つだけです
地下深くのマグマには、水や二酸化炭素が溶けこんでいます。地上へ上がって圧力が下がると、それがいっせいに泡になります。炭酸のふたを開けたときと同じことが、岩の中で起きます。
泡がぬけきる前に、マグマは急に冷やされて固まります。泡の形がそのまま石として残るので、石の体積の大部分がすき間になります。全体としては、水より軽くなります。
つまり軽石は、「軽い物質」でできているのではありません。「ふつうの重さの物質」が、泡をたくさん抱えたまま固まったものです。順に見ていきましょう。
泡は、圧力が下がった瞬間に生まれます
地下深くのマグマは、上にのっている岩の重みで強く押さえつけられています。押さえつけられているあいだ、水などの成分はマグマに溶けたまま、目には見えません。
ところが噴火でマグマが地表へ向かうと、押さえつける力が急に弱まります。すると溶けていられなくなった成分が、無数の泡としてあらわれます。これは炭酸飲料のふたを開けたときと、同じ現象です。
図1を見てください。左が地下深くのようす、右が噴き出したあとのようすです。左では溶けていて見えなかったものが、右では泡になっています。
石そのものは、ちっとも軽くありません
軽石をつくっている物質は、ガラスによく似た岩石です。その物質だけを取り出して重さを量ると、水の2倍以上の重さがあります。つまり、素材だけなら確実に沈みます。
それでも浮くのは、体積の大部分が泡だからです。泡の割合が体積の半分を超えると、全体としての重さは水より軽くなります。軽石では、その割合が7割ほどになることもあるとされています。
もうひとつ大切なのが、泡どうしがつながっていないことです。多くの泡は、まわりを岩のかべに囲まれた「独立した部屋」になっています。だから水にひたしても、すぐには中まで水が入りません。
海に流れ出た軽石が、何か月も漂ったあとで沈むことがあります。波にもまれて泡のかべが少しずつ壊れ、外とつながった穴から水が入っていくためだと考えられています。空気の部屋が水の部屋に置きかわると、もう浮いていられません。
マグマがゆっくり上がってくると、泡はぬける時間があり、すき間の少ない石になります。急いで上がってきたときほど、泡が閉じこめられて軽石になりやすいとされています。石の見た目は、噴き出したときの勢いの記録でもあります。
まとめ
軽石が浮くのは、軽い材料でできているからではありません。ふつうの重さの岩が、噴き出す一瞬にできた無数の泡を抱えこんだまま固まったからです。手に持ったときの意外な軽さは、そのまま「地下から地上への圧力の変化」の大きさを伝えています。
軽いのは石ではなく、石が抱えている泡。
軽石は、地下から地上への圧力の変化が固まった形です。
泡がなぜ生まれるのかは、火山はなぜ噴火するの? ― 炭酸のふたを開けるのと同じですで詳しく説明しています。水より軽いか重いかで浮き沈みが決まる話は、なぜ氷は水に浮くの?もあわせてどうぞ。すき間だらけのものが音を吸う話は、雪が積もった朝は、なぜあんなに静かなの?にあります。
- お風呂用の軽石を、水を張った洗面器に入れます。浮いた状態で、水面から出ている部分の割合を目で見て覚えておきます。
- そのまま10分ほど置いてから、もう一度見ます。だんだん沈み方が深くなるはずです。穴に水が入っていっているためです。
- 軽石を水から出し、乾いたタオルの上に置いて、重さの変わり方を確かめます。ぬれた直後はずっしりと重く、乾くとまた軽くなります。
海岸で拾った軽石でも同じ観察ができます。ただし波打ちぎわは足をとられやすいので、大人といっしょに、水に入らずに拾ってください。
もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
- 中学中学校の理科で習う範囲
- 高校高校の「地学基礎・化学基礎」で習う範囲
- 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
- 大学高校では習わない、大学の専門科目(火山学・岩石学)の内容
- 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話
中学用語:この現象には名前があります
- 密度:同じ体積あたりの重さ。単位は1立方センチメートルあたりのグラム数(g/cm³)で表します。水はおよそ 1.0 g/cm³ です。
- 発泡(はっぽう):溶けていた成分が泡になって出てくること。マグマでも炭酸飲料でも、押さえつける力が弱まると起こります。
- 多孔質(たこうしつ):内部に無数のすき間を持つつくりのこと。軽石はその代表です。
- 浮力(ふりょく):水中の物体が水から受ける上向きの力。押しのけた水の重さと同じ大きさになります。
中学高校式で確かめる:軽石はどれくらい軽いのか
軽石を1立方センチメートルだけ切り取ったと考えて、その重さを出してみます。素材そのものの重さと、泡の割合の2つだけで計算できます。
| 軽石をつくる岩石そのものの密度 | 約 2.4 g/cm³ とされる |
| 体積のうち泡がしめる割合 | 約 70 パーセントとする |
| 水の密度 | 約 1.0 g/cm³ |
| 考える軽石の体積 | 1 cm³ |
| 岩石がしめる割合(パーセント) | 100 - 70 = 30 |
| 岩石がしめる体積(立方センチメートル) | 1 × 0.3 = 0.3 |
| 軽石1立方センチメートルの重さ(グラム) | 2.4 × 0.3 = 0.72 |
| 水の重さとくらべる(倍) | 0.72 ÷ 1.0 = 0.72 |
同じ体積の水より軽いので、軽石は浮きます。単位は、重さがグラム、体積が立方センチメートル、密度は1立方センチメートルあたりのグラム数です。もし泡の割合が6割なら、同じ計算で重さは 0.96 グラムとなり、ぎりぎりで浮くことになります。
高校高校+なぜ圧力が下がると泡が出るのか
高校気体が液体に溶ける量は、その気体が押している強さにほぼ比例します。押しが弱まれば、溶けていられる量も減ります。地下から地上へ上がるマグマは、この「押しの弱まり」を一気に受けます。
高校+泡は、どこにでもすぐできるわけではありません。最初のひと粒ができるには、まわりの液体を押しのけて表面をつくる働きが必要です。そのため、実際にはかなり押しが弱まってから、まとめて泡が生まれることがあります。噴き出し方が急に激しくなる背景のひとつと考えられています。
大学泡の量と、噴き出す勢いのつながり
火山学では、軽石のすき間の割合や泡の大きさの分布を測り、マグマが上がってきた速さを推定します。泡は圧力が下がるほどふくらみ、同時に溶けている成分が減ることで、マグマ自体は固くなっていきます。ふくらもうとする泡と、固くなって伸びにくくなる岩とのせめぎ合いが、ある段階でマグマを粉々に砕きます。この砕けた破片が、軽石や火山灰として空へ運ばれます。
研究まだはっきりとはわかっていないこと
- いつ砕けるのか。 マグマが泡だらけの液体から粉々の破片へ変わる瞬間の条件は、まだ一つの式で書ききれていません。
- どれだけ浮き続けるのか。 海に出た軽石がいつ沈むかは、泡のつながり方や波の強さで変わり、前もって言い当てるのは難しいとされています。
- 漂う軽石と生き物の関係。 軽石にくっついて海を渡る生き物がどれほどいるのか、また漂着が海の生き物に与える影響については、調査が続いています。
つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。手のひらの軽石は、まだ研究の途中にある現象の、身近な見本でもあります。
教科書とのつながり(レベル別)
| レベル | 科目・単元 | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 中学 | 理科・密度と浮き沈み/火山と火成岩 | 泡の割合から重さを出す計算、軽石のでき方 |
| 高校 | 地学基礎・火山/化学基礎・気体の溶解 | 圧力が下がると泡が出るしくみ |
| 高校+ | 化学・気体の溶解度/表面張力 | 最初のひと粒ができにくい理由 |
| 大学 | 火山学・岩石学・マグマの流れ | 泡の量から噴き出す勢いを読む話 |
| 研究 | 火山の物理/海での軽石の運ばれ方 | 砕ける条件、漂う軽石のゆくえ |
| ― | 生活とのつながり | お風呂の軽石、海岸に打ち上げられる軽石 |
- 気象庁「日本活火山総覧」および火山に関する解説資料
- 産業技術総合研究所 地質調査総合センター「火山地質図」解説
- 日本火山学会 編『火山の事典』
- 海洋研究開発機構による海域の火山および漂流する軽石に関する調査報告
※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。火山の周辺や海岸で観察するときは、立入規制や気象・海の状況の情報を確かめ、自治体や関係機関の指示に従ってください。