みかんを食べすぎて手のひらが黄色くなるのは、病気のサイン?
― 色は手についたのではなく、体の内側からしみ出しています
こたつでみかんを何個も食べた冬、ふと手のひらが黄色いことに気づく。皮をむいた汁がしみたのだと思いがちですが、実は違います。黄色いのは、みかんの色素が血液に乗って全身をめぐり、皮膚の表面にたまった色です。そして多くの場合、心配はいりません。見分けるポイントは「白目」にあります。
冬休み。箱で届いたみかんを、家族で毎日5個、6個と食べています。
ある日、友だちと手を並べたら、自分の手のひらだけが黄色っぽい。よく見ると、足の裏まで少し黄色くなっています。
足の裏でみかんの皮をむいた覚えはありません。では、この色はどこから来たのでしょう。そして、これは体からの危ないサインなのでしょうか。
よく言われる話を、2つ確かめてみます
色は外からついたのではなく、食べた色素が血液に乗って皮膚まで運ばれたものです。だから、皮にさわらない足の裏まで黄色くなります。
肝臓の病気で出る黄色(黄疸)は、白目まで黄色くなります。みかんの黄色は、白目は白いままです。食べる量を減らせば、数週間から数か月で自然に戻るとされています。
この状態には「柑皮症(かんぴしょう)」という名前があります。まず色の正体を、次になぜ手のひらなのかを見ていきます。
みかんの色は「脂に溶ける色」です
みかんのオレンジ色は、β-クリプトキサンチンという色素によるものです。にんじんやかぼちゃの色(β-カロテン)の仲間で、まとめてカロテノイドと呼ばれます。秋の葉が黄色くなるときに見えてくる色も、同じ仲間です。
この色素は水には溶けにくく、脂によく溶けます。食べると、腸で食べ物の脂と一緒に吸収されます。そして血液の中で脂を運ぶ小さな粒に乗って、全身へ届けられます。
温州みかんは、この色素がとても多い果物です。食品成分表では、100グラムあたり約1.7ミリグラムとされ、ほかの果物よりけた違いに多いことが知られています。毎日何個も食べると、血液の中の色素の濃さが上がっていきます。下の図1で、1日に食べる個数を変えてみてください。
なぜ手のひらと足の裏だけ、目立つの?
色素は全身の皮膚に届いています。それでも手のひらと足の裏が先に目立つのには、2つの理由があります。
1つ目は、皮膚のいちばん外側の「角質」が厚いことです。角質は、役目を終えた細胞が何層にも重なった膜です。脂に溶ける色素は、汗や皮脂と一緒にこの層にしみこんでたまります。層が厚いほど、たまる量が多くなり、色が濃く見えます(図2)。
2つ目は、手のひらと足の裏には、日焼けの色(メラニン)が少ないことです。地の色が明るいので、黄色が隠れずにそのまま見えます。鼻のわきやおでこなど、皮脂の多い場所が黄色くなることもあるとされています。
肝臓や胆道の病気で出る黄疸は、ビリルビンという別の黄色い物質が増えるもので、白目がまっ先に黄色くなります。白目が黄色い、尿が濃い茶色、だるさが続く、といった様子があれば、みかんのせいと決めつけずに医療機関を受診してください。
離乳食でにんじんやかぼちゃをよく食べる赤ちゃんでも、鼻の頭や手のひらが黄色くなることがあります。こちらはβ-カロテンによるもので、しくみは同じです。
まとめ
みかんで手のひらが黄色くなるのは、汁がしみたのではありません。脂に溶ける色素が血液に乗って運ばれ、角質の厚い手のひらと足の裏にたまって見えている状態です。白目が白いままなら、多くの場合は心配いらず、食べる量を減らせば自然に戻ります。
黄色いのは、手ではなく「体の中」。
見分けるなら、手のひらより白目を見る。
同じ色素の仲間は、干し柿の色や、秋の黄葉にも出てきます。食べ物と体のつながりは、ビタミンCと壊血病の話もあわせてどうぞ。
- 明るい昼の窓ぎわで、白い紙の上に手のひらを置きます。手の甲と色を比べてみましょう。
- 家族で手のひらを並べて、みかんをよく食べる人とそうでない人で違いがあるか見てみます。
- 鏡で白目の色も確かめます。手のひらが黄色くても、白目が白ければ柑皮症の特徴どおりです。
蛍光灯や電球の色で見え方が変わるので、できれば日中の自然の光で比べてください。
もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
- 中学中学校の理科で習う範囲
- 高校高校の「生物基礎・化学」で習う範囲
- 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
- 大学高校では習わない、大学の専門科目(栄養学・皮膚科学)の内容
- 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話
中学用語:この現象には名前があります
- 柑皮症(かんぴしょう):カロテノイドを多くとったときに、皮膚が黄色く見える状態。病気というより、体に色がたまった状態とされます。
- カロテノイド:植物などがつくる、黄・橙・赤の色素のなかま。β-カロテンやβ-クリプトキサンチンが含まれます。
- 角質(角質層):皮膚のいちばん外側にある、役目を終えた細胞が重なった層。手のひらと足の裏で特に厚くなっています。
- 黄疸(おうだん):血液中のビリルビンが増えて、皮膚や白目が黄色くなる状態。肝臓や胆道の病気などで起こります。
中学高校式で確かめる:1日に何ミリグラムの色素をとっているの?
たまる量は、「毎日入ってくる量」と「毎日抜けていく量」のつり合いで決まります。まず入ってくる量を、みかんの個数から計算します。
| 記号で書くと | M = c × w × N 、 S = M × T |
| 言葉で書くと | 1日にとる色素の量 = 1グラムあたりの色素 × 1個の重さ × 個数。たまっている量 = 1日にとる量 × とどまる日数 |
| どこから来る式か | 入る量と出る量のつり合い。毎日同じ量が入り、ほぼ一定の日数で入れ替わるなら、たまる量は「入る速さ × とどまる時間」で落ち着きます |
| 記号 | 意味と単位 |
| c | 果肉1グラムあたりの色素の量(ミリグラム/グラム) |
| w | みかん1個の食べる部分の重さ(グラム) |
| N | 1日に食べる個数 |
| M | 1日にとる色素の量(ミリグラム) |
| T | 色素が角質にとどまる日数のめやす(日) |
| S | 角質にたまっている量のめやす(ミリグラム) |
| 温州みかん100グラムあたりのβ-クリプトキサンチン | 約1.7ミリグラム(食品成分表で1600〜1700マイクログラムとされる) |
| 中くらいのみかん1個の食べる部分 | 約80グラム(大きさで変わる目安) |
| 1日に食べる個数(冬によくある例) | 4個 |
| 皮膚の表面が入れ替わる日数 | およそ28日(約4週間)とされる |
| 1グラムあたりにすると | 1.7 ÷ 100 = 0.017 ミリグラム |
| みかん1個ぶん | 0.017 × 80 ≒ 1.36 ミリグラム |
| 1日に4個食べると(M) | 1.36 × 4 ≒ 5.44 ミリグラム |
| 4週間で入ってくる量(S のめやす) | 5.44 × 28 ≒ 152 ミリグラム |
| 1日1個だけなら、4週間で | 1.36 × 28 ≒ 38 ミリグラム |
| 4個と1個の差 | 152 ÷ 38 = 4 倍 |
1日4個なら、1か月で入ってくる色素は約150ミリグラム。耳かき1杯ほどの量が、全身の皮膚に薄く広がるイメージです。この式では、たまる量は個数にそのまま比例します。そして食べるのをやめても、すぐには消えません。角質が入れ替わる数週間、さらに体の脂にたまった分が抜けるまで、色が残ると考えられます。これが「戻るまで数週間から数か月」と言われる理由です。
高校高校+なぜ黄色く見えるのか ― 光の吸収と色
高校物の色は、吸収されずに目に届いた光の色です。カロテノイドは青から青緑の光をよく吸収します。残った光が目に届くので、その反対側の色である黄色から橙色に見えます。
高校+カロテノイドの分子は、炭素の二重結合と単結合が交互に長く並んだ「共役二重結合」をもちます。この並びが長いほど、吸収する光の色が赤い側へずれます。β-カロテンやβ-クリプトキサンチンは並びが11個ほどあり、ちょうど青い光を吸う長さとされています。また、分子の大部分が炭素と水素だけでできているため、水になじまず、脂に溶けやすい性質(脂溶性)を示します。
大学体の中での運ばれ方 ― リポタンパク質と皮膚への沈着
脂溶性の色素は、小腸で脂と一緒に「ミセル」に取りこまれて吸収され、キロミクロンに乗ってリンパから血液へ入ります。肝臓を経たあとは、主に低密度リポタンパク質(LDL)などに乗って全身へ運ばれます。皮膚では、皮脂腺や汗腺から分泌されて角質層に沈着すると考えられています。β-クリプトキサンチンはβ-カロテンと同じくプロビタミンAで、体内で一部がビタミンAに変わりますが、この変換は必要量に応じて調節されるため、みかんの食べすぎでビタミンAの過剰症にはなりにくいとされています。
📖 式の導出や、さらに先の内容:柑皮症(ウィキペディア) / カロテノイド(ウィキペディア)
研究まだはっきりとはわかっていないこと
- 色の出やすさの個人差。 同じ量を食べても、黄色くなる人とならない人がいます。吸収の効率、体脂肪の量、色素を分解する酵素の遺伝的な違いなどが関わると考えられていますが、どれがどれだけ効くかは、まだ整理されていません。
- 色素と健康の関係。 静岡県の三ヶ日町で行われた住民の追跡調査では、血液中のβ-クリプトキサンチンが多い人ほど、いくつかの生活習慣病のリスクが低い傾向が報告されています。ただし、みかんを食べる人の生活習慣の違いなども混ざるため、色素そのものの効果かどうかは研究が続いています。
- 皮膚の色で野菜不足を測る試み。 皮膚のカロテノイド量を光で測り、野菜や果物をどれくらい食べているかの目安にする方法が研究されています。どこまで正確に食生活を映すかは、検証の途中です。
つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。とくに、色が消えるまでの日数は人によって大きく違うと考えてください。
教科書とのつながり(レベル別)
| レベル | 科目・単元 | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 中学 | 理科2年「消化と吸収」 | 色素が腸で吸収され、血液で運ばれる話 |
| 高校 | 生物基礎「体内環境」、化学「光と色」 | 白目で見分ける話、黄色く見える理由 |
| 高校+ | 化学「有機化合物」(共役二重結合) | 色素が青い光を吸う理由、脂溶性 |
| 大学 | 栄養学・皮膚科学 | リポタンパク質による輸送と角質層への沈着 |
| 研究 | 栄養疫学 | 個人差、健康との関係、皮膚の色による食事の評価 |
| ― | 生活とのつながり | 手のひらの黄色に気づいたときに、白目で見分けて落ち着いて判断する |
- 食品成分データベース(文部科学省)
- β-クリプトキサンチン(ウィキペディア)
- 柑皮症(ウィキペディア)
- Maharshak N, Shapiro J, Trau H. Carotenoderma — a review of the current literature. International Journal of Dermatology, 2003.
- 農研機構 果樹茶業研究部門「三ヶ日町研究」に関する報告(温州みかんとβ-クリプトキサンチンの栄養疫学調査)
※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。体の色の変化が気になるとき、とくに白目が黄色いときや体調の変化があるときは、自己判断せず医師に相談してください。