🌫 自然のふしぎ 〰 波動 予備知識なしでOK 読了 約7分

霧の中に、白い虹が出るのはなぜ?
― 粒が小さすぎると、7色が重なり合って白くなります

秋の朝、霧の向こうに、色のない大きな弧がぼんやりと浮かぶことがあります。「白虹(はっこう)」とも呼ばれる霧虹です。しくみは、ふつうの虹とほとんど同じです。ちがうのは水の粒の大きさだけ。粒が小さくなりすぎると、光は「波」としての性質を見せはじめ、7色が混ざってしまいます。

公開:2026.10.14 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、こんな場面を思い浮かべてください

よく晴れた秋の朝。川ぞいの道や盆地の町が、白い霧にすっぽり包まれています。

やがて背中のほうから朝日が差しこみ、霧が少し薄くなってきました。ふと前を見ると、霧の中に、虹と同じ形の大きな弧がかかっています。

けれど、その弧には色がほとんどありません。ミルクを流したような、白い虹です。雨も降っていないのに、なぜ虹が出るのでしょう。そして、なぜ白いのでしょう。

白い虹になる理由は、2つだけ

1
光は「波」なので、小さな粒のまわりで広がる

霧の粒は、雨粒の50分の1ほどの大きさです。これほど小さい粒を通った光は、まっすぐ進まずに少し横へ広がります。そのため、虹の色の帯が太くぼやけます。

2
太くなった7色の帯が重なると、白になる

虹の赤と紫は、もともと角度で2度ほどしか離れていません。帯が太くなると、となりの色どうしが重なり合います。光の色は、全部が重なると白になります。

つまり霧虹は、「虹のなりそこない」ではありません。水の粒が光を送り返すしくみは同じで、粒が小さいせいで色が混ざってしまった虹です。順に見ていきましょう。

霧の粒は、雨粒よりずっと小さい

ふつうの虹は、雨粒の中で光が折れ曲がり、奥ではね返って、もう一度折れ曲がって出てくることで生まれます。このとき、色によって曲がり方がわずかにちがいます。そのため、太陽と反対側の空に、外側が赤、内側が紫という順で色が並びます。

雨粒の直径は、1ミリ前後のものが多いとされています。いっぽう霧の粒は、0.01〜0.02ミリほどとされています。直径でくらべると、50分の1から100分の1です。

ここで、光のもうひとつの顔が出てきます。光は波です。波は、自分の「波の長さ」に近い大きさのすき間や粒に出会うと、その後ろで横へ回りこむように広がります。これを回折といいます。

目に見える光の波の長さは、およそ1000分の0.5ミリです。雨粒はその2000倍も大きいので、広がりはほとんど目立ちません。ところが霧の粒は、波の長さの数十倍しかありません。こうなると、粒から出てくる光は目に見えるほど広がります。図1のつまみで、粒の大きさを変えてみてください。

自分の影の頭の方向 地面(太陽は見る人の背中側) 粒の直径 0.020 mm 本来の並び:外側が赤、内側が紫 各色の帯の広がり(片側) 約1.6度 赤と紫の間隔:約2度
右へ動かすと雨粒の大きさに、左へ動かすと霧の粒の大きさになります
図1:太陽と反対側の空にかかる弧を、7色の帯で描いた図です。下の中央の白い点が、自分の影の頭の方向です。外側の帯が赤、内側の帯が紫に対応します。つまみを右端(1ミリの雨粒)に寄せると、細い帯がはっきり分かれたふつうの虹になります。左(0.02ミリ前後の霧の粒)へ動かすと、それぞれの帯が太くなって重なり、弧の真ん中が白くなっていきます。

色の帯が太くなると、なぜ白くなるの?

ふつうの虹では、影の頭から見て赤は約42度、紫は約40度の方向に出ます。7色ぜんぶが、わずか2度ほどの幅に並んでいるわけです。2度は、腕をのばしたときの指1本ぶんくらいの幅です。

霧の粒では、それぞれの色の帯が、片側に1.5度以上も広がるとされています。帯の太さが、色と色の間隔より何倍も大きくなります。すると、ある場所には赤・黄・緑・青の光が同時に届き、目には混ざった色として映ります。

光の色は、絵の具とちがって、重ねるほど明るく白に近づきます。テレビの画面が赤・緑・青の小さな点だけで白を出しているのと同じです。こうして、弧の中ほどは白くなります。ただし、いちばん外側には赤だけが、いちばん内側には紫や青だけが届く場所が残ります。そのため霧虹は、よく見ると外のふちがほんのり赤く、内のふちがほんのり青く見えることがあります。

また、霧虹はふつうの虹より太く、少しだけ小さな円になるとされています。光が広がるぶん、明るさも薄まります。見逃されやすいのは、このためです。

💡 霧虹に出会いやすいのは、秋から冬の朝

よく晴れて風の弱い夜には、地面が冷えて、朝に霧が出やすくなります。夜が長くなる秋から冬は、こうした霧が多くなる季節です。とくに川ぞいや山に囲まれた盆地では、朝霧が名物になっている地域もあります。霧虹を見るには、①太陽を背にする、②太陽の高さが低い朝、③霧が日光の届く程度に薄くなってきたころ、の3つがそろうことが大切です。霧の上に出られる高台は、とくに見つけやすい場所です。

💡 自分の影のまわりの「色つきの輪」は、別の現象

山の上で霧に自分の影が映ると、影の頭のまわりに小さな色つきの輪が見えることがあります。こちらは光輪(グローリー)と呼ばれる別の現象で、輪の大きさは数度ほどです。霧虹は、その外側の約40度という、ずっと遠い位置にかかります。同じ霧から、両方が同時に見えることもあります。

まとめ

霧虹は、ふつうの虹と同じく、水の粒が光を折り曲げ、はね返して生まれます。白く見えるのは、霧の粒が小さすぎて、光が波として横へ広がるからです。色ごとの帯が太くなって重なり合い、混ざって白になります。

虹の色を分けていたのは、水の粒の「大きさ」でした。
小さすぎる粒の前では、光は7色をほどいたままでいられません。

ふつうの虹が、なぜ太陽の反対側の決まった角度に出るのかは、虹は、なぜいつも太陽の反対側に出るの?で詳しく説明しています。光が波として重なり合って色を生む別の例は、シャボン玉は、なぜ虹色に見えるの?で読めます。朝の霧の正体については、朝の草はなぜ濡れているの?もあわせてどうぞ。

🧪 庭で「白い虹」をつくってみよう
  1. 晴れた日の朝か夕方、太陽を背にして立ちます。ホースのシャワーで前方に水をまくと、ふつうの虹が出ます。
  2. 次に、霧吹き(いちばん細かい霧が出るもの)で同じ方向に吹きかけます。粒が細かいほど、虹の色が薄く、帯が太くなるのを観察します。
  3. 2つの虹を、色の分かれ方と帯の太さでくらべます。スマホで撮って並べると、ちがいがよく分かります。

霧吹きの粒は霧の粒よりは大きいことが多く、完全に白くはならないかもしれません。それでも、ホースより色が淡くぼやけることは確かめられるはずです。人に水がかからない場所で行いましょう。

もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「物理」で習う範囲
  • 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(光学・大気光学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:この現象には名前があります

中学高校式で確かめる:霧の粒で、色の帯はどれだけ太くなる?

粒の後ろで光が広がる角度を、いちばん簡単な見積もりの式で計算します。霧の粒と雨粒の両方で求め、虹の色の間隔とくらべます。

⓪ もとになる式
記号で書くとθ ≒ λ ÷ d
言葉で書くと光が広がる角度(ラジアン) ≒ 光の波の長さ ÷ 粒の直径
どこから来る式か波の回折の性質から来る。粒の端と端を通った波の道のりの差が波の長さほどになる方向で、波どうしが打ち消し合いはじめる。そのため、粒が小さいほど、また波が長いほど、広がる角度が大きくなる。
θ光が広がる角度(単位はラジアン。1ラジアンは約57.3度)
λ光の波の長さ(単位はマイクロメートル。1マイクロメートルは1000分の1ミリ)
d水の粒の直径(単位はマイクロメートル)
① もとになる数値
緑の光の波の長さ(目に見える光のほぼ真ん中)約0.55 マイクロメートル
霧の粒の直径(代表的な値とされる)約20 マイクロメートル(0.02 ミリ)
雨粒の直径(代表的な値とされる)約1000 マイクロメートル(1 ミリ)
ふつうの虹で、赤と紫の角度の差約2 度(赤 約42度、紫 約40度)
1ラジアンを度に直すと約57.3 度
② 計算してみる
霧の粒で広がる角度(ラジアン)0.55 ÷ 20 = 0.0275
度に直す0.0275 × 57.3 ≒ 1.58
雨粒で広がる角度(ラジアン)0.55 ÷ 1000 = 0.00055
度に直す0.00055 × 57.3 ≒ 0.032
7色のとなり合う色の間隔(6つの間に分ける)2 ÷ 6 ≒ 0.33
霧の粒の広がりは、色の間隔の何倍か1.58 ÷ 0.33 ≒ 4.8

霧の粒では、それぞれの色の帯が片側に約1.6度ずつ広がります。これは、となりの色までの間隔のおよそ5倍です。1つの色の光が、5つ先の色の場所まで届いてしまうので、色は混ざって白くなります。雨粒では広がりが約0.03度しかなく、色の間隔の10分の1ほどなので、色ははっきり分かれたままです。

③ 実感に直すと、1.6度は、腕をのばした先の指1本ぶんの幅とほぼ同じです。虹の7色ぜんぶが、指1本ぶんにぎゅっと並んでいるところへ、各色が指1本ぶんずつにじみ出す。それが霧虹です。

高校高校+虹の角度と、回折の広がり

高校虹の角度は、水滴の中で1回反射する光について、屈折の法則(スネルの法則)を使って求められます。入射する場所を変えていくと、出ていく光の向きがほとんど変わらない「折り返し点」があります。光はそこに集まるので、明るい弧になります。水の屈折率が赤で約1.331、紫で約1.343とわずかにちがうため、その角度が色ごとにずれます。

高校+上の式 θ ≒ λ ÷ d は、高校で習う単スリットの回折(暗線の条件)と同じ形をしています。円い粒では、係数が少し変わって約1.22倍になることが知られています。ただし虹の場合、光が出ていくのは粒全体ではなく、粒のふちに近い一部分です。そのため実際の広がりは、この見積もりより大きめになるとされています。ここでの計算は、大きさの見当をつけるためのものです。

大学エアリー理論とミー散乱

虹を波の理論で扱った最初のものは、19世紀の天文学者エアリーによるエアリー理論(虹のエアリー理論)とされています。粒から出てくる光の波面の形を考えて、虹の明るさの分布を「エアリー関数」で表します。この理論から、粒が小さいほど虹の帯が太くなり、主虹の位置が少し内側(小さな角度)へずれることが導かれます。霧虹の円が少し小さいことも、これで説明されます。さらに正確には、球形の粒による光の散乱を電磁波の方程式からそのまま解くミー散乱(ミー理論)を使い、霧虹の白さや、内側に現れる淡い過剰虹まで再現できるとされています。

📖 式の導出や、さらに先の内容:霧虹 - Wikipedia / ミー散乱 - Wikipedia

研究まだはっきりとはわかっていないこと

つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。霧虹の白さそのものはよく説明されていますが、その白さから雲や霧の中身を読み取る試みは、いまも続いています。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学理科1年「光の屈折」「光の色」虹ができるしくみ、色が分かれる理由
高校物理「波の性質」「光の回折」粒が小さいほど光が広がる理由、式 θ ≒ λ ÷ d
高校+物理(発展)「単スリット・円形開口の回折」係数1.22、見積もりの限界
大学光学、大気光学エアリー理論、ミー散乱
研究大気物理学、衛星による雲の観測虹から雲の粒の大きさを推定する研究
―生活とのつながり秋から冬の朝霧の中で、太陽を背にして探す
参考・出典
  1. 霧虹 - Wikipedia
  2. 回折 - Wikipedia
  3. 霧 - Wikipedia
  4. Raymond L. Lee Jr., Alistair B. Fraser『The Rainbow Bridge: Rainbows in Art, Myth, and Science』Pennsylvania State University Press, 2001
  5. M. Minnaert『Light and Color in the Outdoors』Springer, 1993

※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。霧の粒や雨粒の大きさ、虹の角度は条件によって変わります。霧の中を移動するときは、見通しが悪いことに十分注意してください。