自然のふしぎ 天文・宇宙 予備知識なしでOK 読了 約7分

日の入りがいちばん早いのは、冬至の日じゃないって本当?
― 日が短いことと、日が暮れるのが早いことは、別の話です

一年でいちばん昼が短い日は、たしかに冬至です。ところが、夕方いちばん早く暗くなる日は冬至ではありません。東京ではおよそ半月も前、12月の上旬です。しかも朝いちばん遅く明るくなる日は、年が明けてからやってきます。ずれをつくっているのは、毎日少しずつ後ろへずれていく「正午」のほうでした。

公開:2026.09.06 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、こんな場面を思い浮かべてください

12月の初め。夕方5時前なのに、外はもう真っ暗です。「今年はいちだんと日が暮れるのが早い」と感じます。

そして冬至を過ぎ、年が明けます。「これで日が長くなる」と思うのに、朝はむしろ暗いまま。1月の通勤や通学のほうが、12月より暗い気さえします。

気のせいではありません。暦のうえでの「いちばん昼が短い日」と、私たちが体で感じる「いちばん早い夕暮れ」「いちばん遅い夜明け」は、じつは別の日に起きています。

ずれの理由は、たった2つです

1
冬至のまわりでは、昼の長さはほとんど動かない

昼の長さは冬至でいちばん短くなります。いちばん低いところの近くでは、坂はゆるやかです。冬至の前後2週間ほど、昼の長さは1日あたり数十秒しか変わりません。

2
一日のまんなか(南中)が、毎日おくれていく

太陽がいちばん高くのぼる時刻は、時計の12時に固定されていません。12月には毎日30秒近くずつ後ろへずれます。昼の長さが動かない時期でも、これだけは動き続けます。

この2つが足し算されると、夕方と朝で、ずれる向きが逆になります。順に見ていきましょう。

まず、昼の長さのほうを見てみる

東京では、11月の下旬に昼の長さが1日あたり1分近く縮んでいきます。ところが冬至が近づくにつれ、この縮み方はどんどんゆるやかになります。冬至の当日には、縮みはほぼ止まります。

ボールを投げ上げたとき、いちばん高いところでボールが一瞬止まって見えるのと同じです。折り返し地点の近くでは、変化がとてもゆっくりになります。冬至の前後1週間ほど、昼の長さは合わせて1〜2分しか変わりません。

つまり「冬至の前後では、昼の長さは実質的に横ばい」なのです。すると、夕暮れの時刻を決めるのは、もう一方の要因のほうになります。

犯人は、毎日おくれる「正午」でした

私たちの時計は、1日をきっちり24時間で刻みます。ところが、太陽が南の空でいちばん高くなってから、次の日にまた高くなるまでの時間は、24時間ちょうどではありません。日によって長かったり短かったりします。

理由は2つあります。ひとつは、地球が太陽のまわりを回る道が、まん丸ではなく少しつぶれた楕円だから。太陽に近い時期ほど、地球は速く進みます。もうひとつは、地球の地軸が傾いているため、太陽が空を横切る向きが季節で変わるからです。

この2つが重なると、太陽の南中時刻は1年をかけてじりじり前後します。このずれは均時差と呼ばれています。そして12月上旬は、ちょうど南中時刻がいちばん速い勢いで後ろへずれていく時期にあたります。

日の入りの時刻は、「南中時刻」に「昼の長さの半分」を足したものです。昼の長さが横ばいなのに南中だけが遅れていけば、日の入りも遅くなっていきます。図1を見てください。

東京での時刻の動き(12月〜1月・おおよその形) 冬至(12月22日ごろ) 上の線:日の入り(夕方) いちばん早い(12月上旬) まんなかの線:南中(太陽が最も高い時刻) 止まらずに遅れ続ける 下の線:日の出(朝) いちばん遅い(1月上旬) 12月初め 1月終わり 上へ行くほど時刻がおそい
図1:3本の折れ線。上の線(日の入り)の谷は、縦の点線で示した冬至よりも左(=前)にあります。下の線(日の出)の山は、点線よりも右(=後)です。まんなかの線(南中)だけは山も谷もなく、右上がりに遅れ続けています。この「止まらない右上がり」が、上下の線の折り返しを前後にずらしています。

朝は、なぜ逆にずれるのか

日の出の時刻は、「南中時刻」から「昼の長さの半分」を引いたものです。夕方とは引き算になっている点がポイントです。

冬至の前は、昼が縮む効果のほうが強く、日の出はどんどん遅くなります。冬至を過ぎると昼は伸びはじめますが、その伸びはまだごくわずかです。一方、南中の遅れはまだ続いています。だから日の出は、冬至の後もしばらく遅くなり続けるのです。

結果として、日の入りは冬至より前に、日の出は冬至より後に、それぞれ折り返します。図2でその足し算と引き算を見てみましょう。

日の出と日の入りは、南中からの足し算と引き算 まんなかの太い縦線:南中 昼の長さの半分をひく 左の点:日の出 昼の長さの半分をたす 右の点:日の入り この矢印のぶん、南中ごと全体が右(おそいほう)へずれていく
図2:まんなかの太い縦線が南中です。そこから左へ半日ぶん戻った点が日の出、右へ半日ぶん進んだ点が日の入りになります。下の矢印のとおり、南中そのものが右へずれていくため、右の点(日の入り)は早く折り返し、左の点(日の出)は折り返しが遅れます。
💡 「夕方が伸びた」と感じるのは、じつは12月から

年が明けてから日が長くなると思われがちですが、夕方だけを見れば12月の上旬にはもう底を打っています。冬至の日には、いちばん早かった日より夕暮れが4分ほど遅くなっているとされています。

💡 ずれの大きさは、住んでいる場所で変わります

このずれは、北へ行くほど小さくなります。高緯度では冬至の前後でも昼の長さが大きく動くため、南中の遅れに打ち勝つからです。逆に赤道に近い場所ほど、ずれは大きくなります。

まとめ

「冬至はいちばん昼が短い日」は正しく、「冬至はいちばん早く暗くなる日」は正しくありません。この2つはよく混同されますが、別のことを指しています。昼の長さが冬至の前後で横ばいになる一方、南中の時刻だけが遅れ続けるため、夕方の折り返しは前へ、朝の折り返しは後ろへずれるのです。

冬至が決めているのは、昼の「長さ」だけ。
暗くなる「時刻」を決めているのは、遅刻し続ける正午のほうです。

季節そのものがなぜ生まれるのかは 季節はなぜあるの? に、1年の長さと暦のずれについては 秋分の日は、なぜ年によって日付が変わるの? にまとめています。

🧪 自分で確かめてみる
  1. 国立天文台の暦計算室のページで、自分の住む市区町村の12月1日から1月31日までの日の出・日の入りの時刻を調べ、紙に書き出します。
  2. 日の入りの列だけを上から順に読み、いちばん早い時刻がどの日かを探します。冬至より前になっているはずです。
  3. 次に日の出の列で、いちばん遅い時刻の日を探します。今度は年が明けたあとに見つかります。さらに「日の出と日の入りのちょうど中間の時刻」を毎日計算すると、それが少しずつ遅れていく様子がそのまま見えます。

同じことを、南の島と北海道の地点で比べると、ずれの日数が変わることも確かめられます。

もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「地学基礎」で習う範囲
  • 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(天体力学・位置天文学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:この現象には名前があります

中学高校式で確かめる:冬至の日の入りは、いちばん早い日よりどれだけ遅いか

日の入りの時刻は、南中時刻に昼の長さの半分を足したものです。東京の12月上旬について、1日あたりの変化を目安の数値で追ってみます。記号は使わず、時刻のずれの単位は秒、日数の単位は日でそろえます。

① もとになる数値
南中時刻が1日に遅れる量(12月上旬)約25秒
昼の長さが1日に縮む量(12月上旬)約25秒
いちばん早い日の入りから冬至までの日数約17日
② 計算してみる
昼の縮みが日の入りを早める量(半分だけ効く)25 ÷ 2 = 12.5(秒)
差し引きで、日の入りが1日に遅くなる量25 − 12.5 = 12.5(秒)
冬至までの17日ぶん12.5 × 17 = 212.5(秒)
分に直す212.5 ÷ 60 ≒ 3.5(分)

冬至の日の入りは、いちばん早い日より3〜4分ほど遅い、という見積もりになります。東京の実際の値もおよそ4分で、目安として合っています。逆にいえば、その差はたった数分です。目で見て分かるほどの差ではなく、表にして初めて見えてくる違いだといえます。

高校高校+均時差はなぜ生まれるのか

高校地球の公転軌道はわずかにつぶれた楕円で、太陽に近いときほど速く進みます。速く進む時期は、地球が太陽のほうへ同じ向きを向き直すのに余分な時間がかかるため、一日が少しだけ長くなります。これが均時差の1つ目の成分で、1年に1回の波として現れます。

高校+2つ目の成分は、地軸の傾きによるものです。太陽は天の赤道に対して傾いた道を進むため、その動きを東西方向の進みだけに直すと、季節によって速くも遅くもなります。この成分は半年に1回の波として現れます。2つの波を足し合わせたものが、実際の均時差の曲線です。12月上旬は、この合成された曲線の傾きが年間で最も急な時期のひとつにあたります。

大学平均太陽と、時刻の定義そのものの話

位置天文学では、実際の太陽ではなく、天の赤道上を一定の速さで進む架空の太陽を考えます。これを平均太陽と呼び、その南中を基準に決めた時刻が平均太陽時です。私たちの時計はこちらに従っています。均時差とは、実際の太陽と平均太陽の差そのものだといえます。さらに地球の自転の速さはごくわずかに変動するため、現在の標準時は自転ではなく原子の振動を基準に決められ、必要に応じてうるう秒で調整されてきました。

研究まだはっきりとはわかっていないこと

つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。数値は地点と年によって少しずつ変わるため、正確な時刻はお住まいの地点の暦で確かめてください。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学理科・地球と宇宙(太陽の日周運動)南中という言葉と、日の出・日の入りの決まり方
高校地学基礎・地球の運動公転軌道が楕円であることと、季節による太陽の動きの変化
高校+地学・天球と時刻均時差の2つの成分と、その合成
大学位置天文学・天体力学平均太陽と平均太陽時、うるう秒
研究測地学・地球回転自転の速さのゆらぎと、その原因の切り分け
生活とのつながり帰宅時の明るさ、朝の暗さ、屋外の作業や部活動の日程
参考・出典
  1. 国立天文台 暦計算室(各地点の日の出・日の入り・南中時刻)
  2. 国立天文台(暦と天文現象の解説)
  3. 国立天文台編『理科年表』丸善出版(各年版・暦部の日の出入りと均時差の表)
  4. 長沢工『日の出・日の入りの計算 ― 天体の出没時刻の求め方』地人書館

※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。実際の日の出・日の入りの時刻は地点と年によって変わるため、正確な値は国立天文台などの公式な暦でご確認ください。