☔ 天気のふしぎ 気象 予備知識なしでOK 読了 約6分

雲1つの重さは、どれくらいあるの?
― 小さな綿雲でも、ゾウ100頭ぶんの水をかかえています

青空にぽっかり浮かぶ白い雲。ふわふわで、重さなど無いように見えます。ところが計算してみると、小さな綿雲1つでも、およそ500トンの水が入っているとされます。そして本当に驚くのは、その先です。同じ場所の空気は、雲の水よりさらに2000倍ほど重いのです。

公開:2026.09.27 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、こんな場面を思い浮かべてください

秋晴れの午後、公園の芝生に寝ころんで空を見上げます。ひつじのような白い雲が、ゆっくり流れていきます。

子どもに「雲って、何キロくらいあるの?」と聞かれました。綿あめみたいだから、せいぜい数キロかな、と答えたくなります。

でも、雲の正体は水のつぶです。あれだけ大きなかたまりなら、水の量もばかにならないはずです。実際に数えてみましょう。

雲の重さを決めるのは、2つの数だけ

1
1立方メートルに入っている水は、ほんの少し

雲の中の空気1立方メートルには、水のつぶが合わせて0.5グラムほどしか入っていないとされます。1円玉の半分の重さです。

2
でも、雲はとてつもなく大きい

小さな綿雲でも、たて・よこ・高さが1キロメートルほどあります。1立方メートルの箱が10億個ならぶ大きさです。

ほんの少しの水に、とんでもなく大きな数をかける。これが雲の重さの正体です。小さいものと大きいもののかけ算は、人の感覚がいちばん外れやすいところです。

1円玉の半分が、10億個集まると

雲の中にいるとき、目の前の1立方メートルの空間には、水が0.5グラムほどしかありません。山で霧に包まれても、びしょぬれにならないのはこのためです。

ところが雲全体では話が変わります。一辺1キロメートルの立方体には、1立方メートルの箱が10億個入ります。0.5グラムが10億個集まると、5億グラムです。これはおよそ500トンで、ゾウ1頭を5トンとすると、約100頭ぶんにあたります。

図1の左がこの雲全体のようす、右がその中から切り出した1立方メートルの箱です。アメリカの大気研究所の研究者も、同じ考え方で「綿雲1つは約50万キログラム」と見積もったことが知られています。

雲全体(一辺 約1km) 約1km 中の水:合計 約500トン (ゾウ 約100頭ぶん) その中の1立方メートル 点=水のつぶ(実際はもっと小さく無数) 水 約0.5g 1円玉の半分 空気 約1kg 空気は水の 約2000倍 1つの箱では「ほぼ空気」。それが10億個あつまると500トン
図1:左は一辺1キロメートルほどの綿雲。右は、その中から点線のように切り出した1立方メートルの箱。右端の2本の横棒は、箱の中の水(ほとんど見えない細い棒)と空気(長い棒)の重さの違い。※棒の長さは正確な比率ではなく、差を強調した模式図です。

500トンもあるのに、なぜ落ちてこないの?

ここで図1の右側、横棒をもう一度見てください。同じ1立方メートルの箱の中で、空気そのものは約1キログラムあります。雲の高さでは地上より少し空気が薄いものの、それでも水の約2000倍です。

つまり雲は「空に浮かぶ水のかたまり」というより、「ほんの少し水のつぶがまざった空気」です。雲1つぶんの空気は、およそ100万トンになります。500トンの水は、その中にうすく散らばっているだけなのです。

しかも、水のつぶ1つ1つはとても小さく、直径が髪の毛の太さの5分の1ほどです。小さいつぶは空気の抵抗を強く受けるので、1秒に1センチメートルほどの速さでしか落ちないとされます。雲の下からは、それより速い上向きの風がたえず吹き上がっています。こうして、つぶは落ちきる前に支えられたり、下の乾いた空気で蒸発したりします。

このしくみは「雲は水のかたまりなのに、なぜ落ちてこないの?」でくわしく説明しています。

💡 大きな入道雲だと、どれくらい?

夏の入道雲は、高さが10キロメートルをこえ、中の水のつぶも綿雲より多くなります。1つの入道雲にふくまれる水は、数十万トンから100万トンをこえるとも言われます。夕立で道路がいっきに川のようになるのは、この水が短い時間に落ちてくるからです。

💡 白い雲と黒い雲の差も、水の量

1立方メートルあたりの水が多い雲ほど、光を通しにくくなります。雨の前の雲が黒っぽく見えるのは、中の水が多く、分厚いからです。くわしくは「雨が降りそうな雲は、なぜ黒く見えるの?」へ。

まとめ

雲1つの重さは、1立方メートルあたりの水の量(約0.5グラム)に、雲の体積(綿雲で約10億立方メートル)をかければ出せます。答えはおよそ500トン、ゾウ約100頭ぶんです。それでも雲が浮いていられるのは、まわりの空気がその約2000倍も重く、水はその中にうすく散っているだけだからです。

雲は、軽いから浮いているのではない。
もっと重い空気の中に、うすく溶けこんでいるだけだ。

雲がどうやって背を伸ばすのかは「入道雲(積乱雲)は、なぜあんなに高く成長するの?」で紹介しています。

🧪 空の雲の重さを、自分で見積もってみよう
  1. 晴れた日に、ぽつんと浮かぶ綿雲を1つ選びます。近くの山やビルの大きさと比べて、雲の幅がどれくらいか見当をつけます。
  2. 雲の高さ(厚み)は、幅と同じくらいと考えます。幅が500メートルなら、体積は 500 × 500 × 500 で約1億2500万立方メートルです。
  3. その体積に0.5グラムをかけ、100万で割るとトンになります。家族で「ゾウ何頭ぶんか」を当てっこすると盛り上がります。

雲までの距離が分からないと幅も見積もれません。ふもとから見上げた山の頂上付近にかかる雲など、大きさの目安があるものを選ぶと当たりやすくなります。

もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「地学基礎」「物理基礎」で習う範囲
  • 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(気象学・雲物理学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:この現象には名前があります

中学高校式で確かめる:綿雲1つの水の重さ

「密度 = 質量 ÷ 体積」を裏返すと、「質量 = 密度 × 体積」になります。雲水量は「雲の中の水の密度」なので、これに雲の体積をかければ水の重さが出ます。

⓪ もとになる式
記号で書くとM = w × V (V = L × L × L)
言葉で書くと雲の水の重さ = 1立方メートルあたりの水の重さ(雲水量)× 雲の体積
どこから来る式か密度の定義(密度 = 質量 ÷ 体積)を、質量について解いたもの。空気の重さも同じ式で、w を空気の密度 ρ に置きかえれば出せる
M雲にふくまれる水の質量(単位はグラム、あとでトンに直す)
w雲水量。空気1立方メートルあたりの水の質量(g/m³)
V雲の体積(m³)。ここでは一辺 L の立方体とみなす
ρ空気の密度(kg/m³)
① もとになる数値
綿雲の一辺 L約1000 m
雲水量 w(綿雲の目安とされる値)約0.5 g/m³
高さ1〜2kmでの空気の密度 ρ約1 kg/m³
ゾウ1頭の体重(目安)約5 トン
② 計算してみる
底の面積1000 × 1000 = 1000000 m²
雲の体積 V1000000 × 1000 = 1000000000 m³
水の重さ M(グラム)0.5 × 1000000000 = 500000000 g
トンに直す500000000 ÷ 1000000 = 500 トン
同じ体積の空気(キログラム)1 × 1000000000 = 1000000000 kg
空気をトンに直す1000000000 ÷ 1000 = 1000000 トン
空気は水の何倍か1000000 ÷ 500 = 2000 倍

綿雲1つの水は約500トン。しかし同じ体積の空気は約100万トンで、水はその2000分の1にすぎません。「重い雲が浮いている」のではなく、「重い空気に、ごく少しの水がまざっている」ことが数字で分かります。

③ 実感に直す
ゾウ何頭ぶんか500 ÷ 5 = 100 頭
2リットルのペットボトル何本ぶんか(1本2kg)500000 ÷ 2 = 250000 本

高校高校+雲の水はどこから来て、なぜその量なのか

高校地面近くの湿った空気が上昇すると、気圧が下がってふくらみ、温度が下がります(断熱膨張)。温度が露点を下回ると、ふくみきれなくなった水蒸気が雲粒になります。これが地学基礎で習う雲のでき方です。

高校+雲水量は、上昇した空気がどれだけ冷えたかで決まります。空気がさらに上がるほど、水蒸気が水に変わる量が増えるため、雲の上のほうほど雲水量が多くなる傾向があります。ただし実際の雲では、まわりの乾いた空気が混ざりこむため、理屈で出せる最大値より少なくなるとされます。

大学雲粒の落ちる速さと、雲物理学

雲粒ほど小さな球が空気中を落ちる速さは、ストークスの式(粘性抵抗が重力とつり合うときの終端速度)で見積もれます。終端速度は半径の2乗に比例するため、半径0.01ミリメートルの雲粒は秒速1センチメートル前後、半径1ミリメートルの雨粒は秒速数メートルになります。雲粒がぶつかって合体する「衝突併合」や、氷の粒が水蒸気を奪って育つ「ベルジェロン過程」をへて、はじめて雨として落ちられる大きさになります。これらは雲物理学と呼ばれる分野で扱われます。

📖 式の導出や、さらに先の内容:ストークスの式(ウィキペディア) / 終端速度(ウィキペディア)

研究まだはっきりとはわかっていないこと

つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。500トンという数字も、雲の大きさと雲水量を目安の値にしたときの見積もりです。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学理科・密度/天気の変化(雲のでき方)質量 = 密度 × 体積 で雲の重さを出す計算
高校地学基礎・大気の構造と雲の形成断熱膨張と露点による雲粒のでき方
高校+地学・大気中の水の循環(発展)雲水量が高さや混ざりこみで変わること
大学気象学・雲物理学、流体力学ストークスの式、終端速度、衝突併合
研究雲の観測と数値モデル、気候予測雲水量の分布と、雲が気候に与える影響
―生活とのつながり夕立の降り方、空を見て天気を読むこと
参考・出典
  1. 気象庁「気象観測・雲と降水に関するよくある質問」
  2. 積雲(ウィキペディア)
  3. 小倉義光『一般気象学(第2版補訂版)』東京大学出版会
  4. R. R. Rogers, M. K. Yau "A Short Course in Cloud Physics" 3rd ed., Pergamon Press
  5. 米国大気研究センター(NCAR/UCAR)の研究者ペギー・ルモンによる、積雲1つの重さの見積もり(一般向け解説として広く紹介されている)

※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。雲の大きさや雲水量は雲ごとに大きく異なります。