ペットボトルを逆さにすると、なぜ水がゴボゴボと途切れながら出るの?
― 出口を、水と空気が交代で使っているからです
出口がひとつしかないからです。水が出ていくには、その分だけ空気が中に入らなければなりません。ところが通り道は口ひとつ。水と空気が順番待ちをするので、流れは必ず途切れ途切れになります。
水を入れたペットボトルを、口を真下に向けて持ちます。ふたを開ければ、水は一気に落ちてきそうな気がします。
ところが実際は違います。ゴボッ、ゴボッ、と音を立て、水は何度も止まりながら少しずつ出てきます。ボトルの中では、泡が水をさかのぼって上がっていきます。
同じ量の水でも、口を少し斜めにするだけで、流れはずっとなめらかになります。この差が、今日の話のすべてです。
理由は、大きく2つです
ボトルは形の決まった容器です。水が出れば、中に「すき間」ができます。そこに何も入らなければ、中の気圧が下がって、外の大気が水を押し戻します。だから水は止まります。
入ってくる空気の通り道も、口しかありません。水が出ているあいだ、空気は入れません。だから「水が出る」と「空気が入る」が交代でくり返され、音と振動が生まれます。
順に見ていきます。まず、なぜ水が「止まる」のかからです。
水が出ると、ボトルの中の気圧が下がります
ボトルの中の上側には、はじめから少し空気が入っています。水が口から落ちると、その空気は同じ量のまま、広い部屋に引き伸ばされます。空気は薄くなり、押す力が弱くなります。
いっぽう口の外側からは、大気がまるごと押し上げています。中の気圧が下がると、外から押す力のほうが勝ちます。水はそこで止まります。
止まったままでは、中の空気は薄いままです。すると口のところで、外の空気が水を押しのけて泡になり、ボトルの中へ入りこみます。泡が上がって気圧が戻ると、水はまた落ち始めます。図1を見てください。この2つの場面が交互に入れかわるのが、ゴボゴボの正体です。
口を斜めにすると、なぜなめらかになるの?
口を真下に向けると、丸い出口が水でふさがれます。空気は入るすきがなく、水を押しのけて泡になるしかありません。これがいちばん途切れる持ち方です。
ボトルを斜めに傾けると、口の断面の下側を水が流れ、上側にすき間が残ります。空気はそこを通り続けられます。交代の必要がなくなるので、流れは静かに続きます。図2の真ん中がその形です。
ボトルを回して中に渦をつくると、さらに速く出ます。渦の中心には空気の柱ができ、それが口までつながるからです。水は外側を回りながら下り、空気は中心をまっすぐ上ります。順番待ちが消えるぶん、同じ量でも早く空になります。
灯油のポリタンクや、業務用の油の缶には、注ぎ口とは別に小さな穴が付いていることがあります。あれは空気専用の入口です。順番待ちをなくすためのもので、開けて注ぐと流れが途切れません。
ゴボッという音は、泡がボトルの中へ飛びこむときに、中の空気がびくんと押されて出ます。ボトルの首の長さや太さで音の高さが変わるのは、びんの口を吹くと鳴る音と近い理由です。
まとめ
ボトルの水がなめらかに落ちないのは、水が重いからでも、口が細いからでもありません。出ていく水と入ってくる空気が、ひとつの口を分け合っているからです。空気の道を別に用意してやれば、途切れはすぐに消えます。
出口がひとつなら、
水と空気は順番待ちをするしかありません。
同じ「空気と圧力」の話として、ストローで飲み物が飲めるしくみもあわせてどうぞ。吸っているのは、あなたではなく大気です。
- 500ミリリットルのペットボトルに水を満たし、流しの上で口を真下に向けます。空になるまでの秒数を数えます。何度ゴボッと鳴ったかも数えてみてください。
- 同じ量の水で、今度はボトルを45度ほど傾けて出します。音がほとんど鳴らず、秒数が短くなるはずです。
- もう一度満たし、ボトルを手首でぐるぐる回してから逆さにします。中心に空気の柱ができ、いちばん短い秒数で空になります。
ストローを口にさしこんだまま逆さにすると、空気専用の道ができて、途切れがぴたりと止まります。水がはねるので、流しの中で行ってください。
もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
- 中学中学校の理科で習う範囲
- 高校高校の「物理基礎」で習う範囲
- 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
- 大学高校では習わない、大学の専門科目(流体力学)の内容
- 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話
中学用語:この現象には名前があります
- 大気圧:空気の重さが生む押す力です。地上ではおよそ10万パスカルとされ、手のひらほどの面積に約100キログラム分の力がかかっています。
- 水柱の圧力:水そのものの重さが下向きに生む圧力です。深さに比例して増えます。
- 気液二相流:気体と液体が同じ通り道を一緒に流れる状態のことです。ボトルの首の中で起きているのはこれです。
中学高校式で確かめる:どれだけ気圧が下がると水は止まるのか
水を押し出しているのは、水そのものの重さが生む圧力です。中の気圧がその分だけ下がれば、外の大気とつり合って流れは止まります。どれくらい下がれば足りるのかを計算します。
| 水の密度 | 1000 キログラム毎立方メートル |
| 重力加速度 | 9.8 メートル毎秒毎秒 |
| ボトルの中の水の高さ | 0.20 メートル |
| 地上の大気圧 | 約 101300 パスカル |
| 手のひらの面積のめやす | 0.01 平方メートル |
| 密度に重力加速度をかける | 1000 × 9.8 = 9800 |
| 高さをかけて水柱の圧力を出す(パスカル) | 9800 × 0.20 = 1960 |
| 大気圧に対する割合 | 1960 ÷ 101300 ≒ 0.019 |
| 手のひらにかかる力に直す(ニュートン) | 1960 × 0.01 = 19.6 |
中の気圧が、たった2パーセントほど下がるだけで水は止まります。日常の感覚に直すと、手のひらに2キログラムの荷物が乗ったくらいの力です。ボトルの中の空気は、その小さな差をつくるだけで水をせき止めてしまいます。
高校高校+つり合いの式と、泡が入る条件
高校静かな液体の中の圧力は、深さに比例します。式では、圧力の増分は密度と重力加速度と深さの積で表されます。記号の意味は下のとおりです。
| 記号 | 意味と単位 |
|---|---|
| P | 圧力。単位はパスカル |
| ρ | 液体の密度。単位はキログラム毎立方メートル |
| g | 重力加速度。単位はメートル毎秒毎秒 |
| h | 液面からの深さ。単位はメートル |
| D | ボトルの口の直径。単位はメートル |
高校+口が細すぎると、表面張力が水の膜を張ってしまい、泡が入れなくなります。この場合、水はほとんど出てきません。逆に口が太いと、水が落ちる横で空気が上がれるようになり、途切れが目立たなくなります。ゴボゴボが最もはっきりするのは、その中間の太さです。ペットボトルの口は、ちょうどその中間にあたります。
大学気液二相流と、上昇する大きな泡
ボトルの首を上がっていく泡は、頭が丸く底が平らな形をとります。この形の泡が細い通り道を上がる速さは、通り道の直径と重力加速度でおおよそ決まることが知られています。細いほど泡はゆっくり上がり、水の出も遅くなります。実際のボトルでは、泡の上昇と水の落下がおたがいの通り道をせばめ合うため、単純な足し算では流量を予測できません。工業の分野では、これが容器へ液体を注ぐ速さを決める設計上の問題になります。
研究まだはっきりとはわかっていないこと
- 周期はなぜ揃うのか ゴボゴボの間隔はかなり規則正しくなりますが、その周期を容器の形から精密に予測するのは、いまも簡単ではないとされています。
- 粘り気が強い液体の場合 はちみつやシャンプーのように粘る液体では、泡の入り方が水とまるで変わります。粘り気と口の太さをまたいだ統一的な整理は、まだ途中です。
- 音と流れの関係 鳴る音の高さから、中に残っている液体の量を測れないかという研究があります。容器の形が変わると精度が落ちる点が課題とされています。
つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。台所で秒数を測るだけでも、教科書に載っていない気づきに出会えます。
教科書とのつながり(レベル別)
| レベル | 科目・単元 | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 中学 | 理科・圧力と大気圧 | 中の気圧が下がると水が止まる話 |
| 高校 | 物理基礎・圧力とつり合い | 水柱の圧力の計算 |
| 高校+ | 物理・表面張力 | 口の太さで出方が変わる話 |
| 大学 | 流体力学・気液二相流 | 上がる泡と落ちる水の押し合い |
| 研究 | 多相流の実験研究 | 周期の予測と粘り気の影響 |
| ― | 生活とのつながり | 灯油タンクの空気穴、傾けて注ぐこつ |
- クラネ、サーヴィ「理想的なびんのゴボゴボ音について」流体力学の専門誌(2004年)― 逆さにした容器から液体が周期的に流出する現象を扱った研究論文
- デイヴィス、テイラー「広がった液体の中を上昇する大きな泡の力学」英国王立協会紀要(1950年)― 細い通り道を上がる泡の速さについての古典的な研究
- 日本機械学会編『気液二相流技術ハンドブック』― 気体と液体が同時に流れる場合の整理
- 高校物理の教科書(物理基礎)の「圧力」の単元 ― 大気圧と水柱の圧力のつり合いの基礎
※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。実験は流しの上など、水がこぼれてよい場所で行ってください。