自然のふしぎ 環境・生態 予備知識なしでOK 読了 約7分

地球上の生き物を全部はかりにのせたら、
いちばん重いのは何? ― 動物をすべて足しても、植物の200分の1ほどです

答えは、圧倒的に植物です。地球の生き物の重さの約8割を植物が占め、動物は全部合わせても0.4%ほどしかありません。しかも、哺乳類だけを取り出すと、その大半は人間と家畜です。

公開:2026.09.16 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、こんな場面を思い浮かべてください

夏の終わりの公園です。セミが鳴き、足もとではアリが行列をつくり、ハトが歩き回っています。池にはコイ、草むらにはバッタ。どこを見ても、動物だらけです。

テレビの自然番組でも、主役はたいていゾウやクジラやライオンです。「地球は動物にあふれている」という感覚は、ごく自然なものでしょう。

では、地球上の生き物をすべて巨大なはかりにのせたら、重さの内訳はどうなるのでしょうか。研究者が実際にこの計算をしたところ、その答えは、ふだんの感覚とはまるで違うものでした。

植物がこれほど重く、動物がこれほど軽い理由は2つ

1
植物は、何百年ぶんの体をため込める

木の幹は、毎年少しずつ太ります。内側の古い部分は生きた細胞ではなくなっても、捨てられずに残ります。森は、長い年月の成長を体に積み立てた貯金箱のようなものです。

2
食べるたびに、大半が消えていく

動物が植物を食べても、その多くは体を動かしたり温めたりするのに使われ、息として出ていきます。体の材料として残るのは、ほんの一部です。食べる側は、食べられる側より重くなりにくいのです。

まずは、実際の内訳を見てみましょう。数字は「炭素の重さ」で比べています。生き物の体は水分の割合がまちまちなので、水を除いた骨組みの炭素でそろえると公平に比べられるからです。

地球の生き物の内訳は、どうなっているの?

2018年、イスラエルの研究チームが、数百の調査結果を集めて地球全体の生き物の重さを推定しました。炭素の重さに直すと、全体でおよそ5500億トンとされています。

図1の上の帯を見てください。左側の大きな部分が植物で、約4500億トンあります。次に多いのが細菌で、約700億トンです。キノコやカビの仲間(菌類)がそれに続きます。

動物はというと、全部合わせて約20億トンです。帯の右端に、ようやく見える細い線にしかなりません。植物と比べると、およそ200分の1です。

地球上の生き物ぜんぶ(炭素の重さ・推定) 右端の細い部分:菌類・古細菌など 約230億トン 植物 約4500億トン(全体の約8割) 細菌 動物ぜんぶで約20億トン(上の帯の右端の線) 拡大:動物のうち、哺乳類だけ (合計 約1億7000万トン) 家畜(牛・豚など)約6割 人間 約4割弱 右端の水色:野生の哺乳類は約4%だけ
図1:上の帯は地球の生き物全体の内訳。左の大部分が植物で、動物は右端の細い線にすぎない。点線でその動物の部分を拡大し、下の帯に哺乳類だけの内訳を示した。左の家畜と中央の人間で9割以上を占め、野生の哺乳類は右端のわずかな幅しかない。(数値は Bar-On ほか 2018年の推定をもとにした目安)

植物は、なぜそんなに重くなれるの?

植物の重さの大部分は、陸の木です。それも、葉ではなく幹や枝や根です。

木の幹の中心部は、生きた細胞がほとんど残っていない硬い組織です。それでも木は、この部分を捨てません。体を支える柱として、何十年、何百年と使い続けます。つまり木は、毎年の成長ぶんをほぼそのまま体に積み上げていけます。

動物はそうはいきません。体の多くは生きた細胞で、動かし続けるだけで食べ物を消費します。重い体をため込むほど、維持費がかさむのです。

ここに、2つ目の理由が重なります。草を食べた動物の体に残るのは、食べた量のおよそ1割ほどが目安とされています。肉食動物になると、その1割のさらに1割です。食べる段階を1つ上るたびに、重さは大きく目減りしていきます。

数字にすると、何が見えてくるの?

図1の下の帯は、哺乳類だけを取り出した内訳です。この数字は、多くの人を驚かせました。

哺乳類の重さのうち、約6割が牛や豚などの家畜、約4割弱が人間です。野生の哺乳類は、ゾウもクジラもシカもネズミもすべて合わせて、わずか4%ほどと推定されています。

計算すると、人間の重さは野生の哺乳類の8倍以上になります。鳥でも同じ傾向があり、鳥の重さの約7割はニワトリなどの家禽とされています。

自然番組で見る野生動物の世界は、地球の生き物の重さで言えば、ほんの薄い一層です。数字で見ると、人間の暮らしが地球の生き物の姿そのものを塗り替えてきたことが、はっきり分かります。

💡 海では、ピラミッドが逆さまになる

陸とは逆に、海では食べる側の動物の総量が、食べられる側の植物プランクトンより多いと推定されています。植物プランクトンは体が小さく、数日で分裂して増えては食べられるため、その場にためておく量が少ないのです。「重さ」と「生み出す量」は別ものだと分かる例です。

💡 いちばん不確かなのは、足もとの地下

細菌の推定には大きな幅があります。地下深くの岩のすき間にすむ細菌は、直接数えるのがとても難しいからです。この部分の見積もりは研究によって数倍以上変わり、今も調べられています。

まとめ

地球の生き物の重さは、約8割が植物です。木は幹に長年の成長をため込めますが、動物は食べるたびに大半を使い切り、重さを積み上げられません。そのうえ哺乳類の中身は、今や人間と家畜が9割以上を占めています。

地球は「動物の星」ではなく「木の星」。
そして野生の哺乳類は、その中のほんのひとつまみです。

木がどれだけ二酸化炭素をため込めるかは、人1人が出す二酸化炭素は、木何本で吸いきれるの?で計算しています。ため込まれた植物の体が最後にどうなるかは、森の落ち葉は、なぜ積み上がって山にならないの?をどうぞ。

🧪 身近な場所で「重さの内訳」を見積もってみよう
  1. 近所の公園や庭で、木を1本選びます。幹の太さと高さをざっと見て、「この木の重さは何キロくらいか」を想像してみます。
  2. 次に、その木の周りで見つかる動物(虫・鳥・ネコなど)を10分間数え、全部の重さを想像で足し合わせます。
  3. 木1本と、見つけた動物ぜんぶの重さを比べます。どちらが何倍重いか、メモしておきましょう。

目に入る「にぎやかさ」と、実際の「重さ」がどれほど食い違うかを体感するのがねらいです。木の重さは見た目より大きくなりがちなので、想像がつかなければ「幹が太さ30センチ・高さ10メートルなら、水分を含めて数百キロ程度」を目安にしてください。

もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「生物基礎・生物」で習う範囲
  • 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(生態学・地球生物化学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:この現象には名前があります

中学高校式で確かめる:人間1人ぶんの炭素は、推定と合っている?

全人類の重さの推定値から、1人あたりの体重を逆算してみます。もし答えが現実の平均体重に近ければ、この推定は大きく外れていないと言えます。

① もとになる数値
全人類の炭素の重さ(推定)6000万トン = 60000000000 キログラム
推定当時の世界人口約76億人 = 7600000000 人
人の体重に占める炭素の割合約18%(0.18)とされる
野生の哺乳類の炭素の重さ(推定)約700万トン
② 計算してみる
1人あたりの炭素(キログラム)60000000000 ÷ 7600000000 ≒ 7.9
1人あたりの体重(キログラム)7.9 ÷ 0.18 ≒ 44
人間は野生の哺乳類の何倍か6000 ÷ 700 ≒ 8.6
植物は動物の何倍か(億トン)4500 ÷ 20 = 225

子どもも含めた世界の平均体重として、44キログラムはありえる値です。人類全体という途方もない推定が、1人の体重という身近な数字で確かめられます。そのうえで、人間だけで野生の哺乳類の8倍以上、植物は動物の200倍以上です。

高校高校+なぜ段階を上るたびに目減りするのか

高校生産者が光合成でつくった有機物の一部は、生産者自身の呼吸で使われます。残りの一部が消費者に食べられ、さらにその一部だけが消費者の体になります。取り込んだうち次の段階へ渡る割合を、生態効率と呼びます。

高校+生態効率は、およそ1割が目安として教科書に載っていますが、実際には生き物によって数%から20%程度まで幅があります。体温を保つ哺乳類や鳥は、体温を保たない魚や昆虫より効率が低い傾向があります。熱として逃がすぶんが大きいためです。

大学「その場にある量」と「年あたりにつくられる量」

生物量はある時点での「在庫」で、純一次生産量は1年あたりの「流れ」です。陸の植物は在庫が大きく、回転がゆっくりです。海の植物プランクトンは在庫が小さい一方、回転が非常に速く、年あたりの生産量は陸とほぼ同じ程度とされています。このため海では、在庫で見たピラミッドが逆さまになりえます。在庫と流れを混同すると、どちらの生態系が「豊か」かの判断を誤ります。

研究まだはっきりとはわかっていないこと

つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。とくに細菌や地下の生き物の数字は、今後の調査で大きく書き換わる可能性があります。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学理科・自然と人間(食物連鎖)生産者と消費者、食べる段階
高校生物基礎・生態系とその保全生態ピラミッド、生態効率
高校+生物・物質生産とエネルギーの流れ恒温動物で効率が低い理由
大学生態学・地球生物化学在庫と流れ、海の逆ピラミッド
研究地下生物圏・生物多様性の定量評価地下微生物量、野生動物の減少の推定
生活とのつながり森を切ると長年の蓄積が失われる理由、食べ物の選び方と土地の使い方
参考・出典
  1. Bar-On, Y. M., Phillips, R., Milo, R. (2018) The biomass distribution on Earth. Proceedings of the National Academy of Sciences 115(25)
  2. Greenspoon, L. ほか (2023) The global biomass of wild mammals. Proceedings of the National Academy of Sciences
  3. Elhacham, E. ほか (2020) Global human-made mass exceeds all living biomass. Nature 588
  4. 高等学校「生物基礎」教科書 生態系とその保全(物質生産とエネルギーの流れ)

※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。生き物の重さの値は研究による推定で、とくに微生物の量には大きな不確かさがあります。