オーロラは、なぜ北極や南極の近くでしか見られないの?
― 太陽からの「風」を、地球の磁力線が導くしくみ
夜空に広がる、緑や赤の光のカーテン「オーロラ」。写真や映像で見たことがある人は多くても、実際に見られる場所は、北極や南極に近い、ごく限られた地域だけだとされています。なぜオーロラは、世界中どこでも見られるわけではなく、特定の場所に集中して現れるのでしょうか。
オーロラが見られる場所として名前が挙がるのは、ノルウェーやアイスランド、アラスカ、カナダの北部など、地球儀で見るとかなり北に位置する地域ばかりです。南半球でも、ニュージーランドの南や南極大陸に近い地域で見られるとされています。
一方で、赤道に近い地域や、日本のような中緯度の地域では、よほど特別な条件が重ならない限り、オーロラはほとんど見られません。光そのものは、地球のどこの上空でも起きても不思議ではないはずなのに、なぜこれほど場所が偏っているのでしょうか。
この謎を解く鍵は、太陽から吹きつける、目に見えない「風」と、地球という巨大な磁石の関係にあるとされています。
この流れは「太陽風」と呼ばれ、電子や陽子など、電気を帯びた小さな粒子でできているとされています。
地球は巨大な磁石のような性質を持っており、その磁力線は北極と南極の近くに集まる形をしています。
この「磁力線が粒子を極地に導く」しくみを、順番に見ていきます。
太陽から吹きつける、目に見えない「風」
太陽は、光や熱だけでなく、電子や陽子といった、電気を帯びた小さな粒子の流れも絶えず宇宙空間に放出しているとされています。この流れは「太陽風」と呼ばれ、秒速数百kmという、非常に速い速度で宇宙空間を進んでいくと考えられています。地球は、この太陽風に常にさらされています。
地球という「巨大な磁石」が、粒子の進路を曲げる
地球は、内部を流れる電流のはたらきによって、まるで巨大な棒磁石のような磁力線を宇宙空間につくり出しているとされています。太陽風の粒子は電気を帯びているため、磁力線に出会うと、まっすぐ進むことができず、磁力線に沿うように進路を曲げられると考えられています。この地球の磁力によってつくられる領域は「磁気圏」と呼ばれ、多くの太陽風の粒子から、地表を守る盾のような役割を果たしているとされています。
その多くを、あえて北極と南極という「出口」へと導いているのです。
なぜ、極に近い場所に粒子が集まるのか
棒磁石を使った実験を思い出してみてください。磁石のまわりに砂鉄をまくと、磁石のN極とS極の近くに、砂鉄が集中して集まります。これは、磁力線が磁石の両端(極)に向かって、密集するように集まっているためです。地球の磁力線も、これと同じように、北極と南極の近くで密集する形をしています。
磁力線に沿って進路を曲げられた太陽風の粒子は、この磁力線が密集する、北極と南極の近くの上空に導かれていきます。そこで大気中の酸素や窒素の粒子にぶつかることで、光を放ち、オーロラとして見えるというわけです。
太陽で大きな爆発現象(太陽フレアなど)が起きると、いつもより勢いの強い太陽風が地球に届くことがあるとされています。このようなとき、ふだんは極地でしか見られないオーロラが、日本など、より低緯度の地域からもまれに観測されることがあります。
自分で確かめられること
- 棒磁石と、砂鉄(または方位磁針)を用意する
- 磁石の上に紙を置き、紙の上に砂鉄を薄くまく(または方位磁針を磁石のまわりで少しずつ動かす)
- 磁石のN極とS極の近くに、砂鉄が集中して集まる(または磁針が激しく振れる)様子を観察する
- 地球の磁力線も、これと同じように北極と南極の近くに集まっていることをイメージしてみる
身近な磁石の実験から、目に見えないはずの磁力線の形を、実際に目で確かめることができます。
まとめ
オーロラが北極や南極の近くに集中して現れるのは、太陽から吹きつける電気を帯びた粒子(太陽風)が、地球の磁力線に沿って進路を曲げられるためだと考えられています。地球の磁力線は、棒磁石の砂鉄の模様と同じように、北極と南極の近くで密集する形をしているため、太陽風の粒子はこの2つの地域に集められ、大気にぶつかって光を放つというわけです。
オーロラの美しい光は、太陽からの風と、地球という巨大な磁石が織りなす、壮大な物理現象の結果なのです。
もっと知りたい人へ ― 用語・数値・教科書とのつながり中学理科から研究中の話題まで、どのレベルの話かを明示しています
- 中学中学校の理科で習う範囲
- 高校高校の「物理基礎」で習う範囲
- 高校+高校の「物理」、または教科書の発展・コラム扱いの内容
- 大学高校では習わない、大学の専門科目(磁気圏物理学)の内容
- 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話
中学用語:オーロラをめぐる言葉
- 太陽風:太陽から吹きつける、電気を帯びた粒子の流れ。
- 磁力線:磁石のまわりにできる、目に見えない磁力のはたらく道すじ。
- 磁気圏:地球の磁力がおよぶ、宇宙空間の領域。
高校式で確かめる:太陽風が地球に届くまでの時間
太陽と地球の距離と、太陽風の速さから、太陽風が地球に届くまでにかかる時間を計算してみます。
かかる時間(秒) = 太陽と地球の距離(km) ÷ 太陽風の速さ(km/秒)
| 太陽と地球の距離 | およそ1億5000万kmとされています |
| 太陽風の速さ | 目安として、秒速500km程度とします |
| かかる時間(秒) | 150000000 ÷ 500 = 300000 |
| 時間に直す | 300000 ÷ 3600 ≒ 83.3 |
| 日に直す | 83.3 ÷ 24 ≒ 3.5 |
| 結果 | 約3.5日後に、太陽風が地球に届く |
太陽で大きな爆発現象が観測されてから、数日後にオーロラが活発になると言われるのは、この太陽風が地球に届くまでの時間の長さとも関係していると考えられています。
※ 太陽風の速さは、状況によって秒速300〜800km程度まで変わるとされ、ここでの計算は目安です。
高校+荷電粒子が磁力線に巻きつくように進む理由
電気を帯びた粒子(荷電粒子)が磁力線の中を進むとき、進む向きと磁力線の向きの両方に垂直な方向に、力(ローレンツ力)を受けるとされています。この力のはたらきによって、荷電粒子は磁力線に巻きつくように、らせん状に進みながら移動すると考えられています。
大学磁気圏という、地球を守る領域
磁気圏物理学の分野では、地球の磁力がおよぶ範囲(磁気圏)の形や、太陽風との相互作用が研究されています。磁気圏は、多くの太陽風の粒子を直接地表に届かせないよう防いでいますが、北極・南極付近の「カスプ」と呼ばれる領域では、比較的粒子が入り込みやすいと考えられています。
研究まだ、はっきりしていないこと
- オーロラの色や形が、どの高度で、どのようなしくみで細かく決まるのかについては、磁気圏物理学の分野で、いまも詳しい研究が続けられているテーマです。
- 太陽の活発な活動が、人工衛星や送電網などに影響をおよぼす「宇宙天気」を、より正確に予測する技術の研究も進められています。
- 木星や土星など、ほかの惑星でも観測されているオーロラと、地球のオーロラとの違いを比較する研究も行われています。
夜空を彩るオーロラには、電磁気学と宇宙物理学が交わる、いまも研究が続く壮大なテーマが広がっています。
教科書とのつながり(レベル別)
| レベル | 科目・単元 | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 中学 | 理科・磁石のはたらき | 太陽風・磁力線・磁気圏の基本用語 |
| 高校 | 物理基礎・距離と時間 | 太陽風が地球に届くまでの時間の計算 |
| 高校+ | 物理・電流と磁場(発展) | ローレンツ力と荷電粒子のらせん運動 |
| 大学 | 磁気圏物理学 | 磁気圏の構造とカスプ領域 |
| 研究 | 磁気圏物理学・宇宙天気予報(研究中) | 発光メカニズムの詳細、宇宙天気予測技術 |
- 地学・物理学関連の教科書における、太陽風と地球磁場に関する解説。
- 磁気圏物理学分野における、オーロラの発生メカニズムに関する研究レビュー。
- 宇宙物理学関連の資料における、太陽風の速度・地球への到達時間に関する解説。
- 物理学関連の教科書における、ローレンツ力と荷電粒子の運動に関する解説。
- 宇宙天気予報に関する資料における、太陽フレアと磁気圏への影響に関する解説。
※ 太陽風の速さや到達時間は、太陽活動の状況によって変わる目安の値です。
※本記事は一般向けの科学解説です。オーロラの観測地では、防寒対策を十分に行い、天候や現地のルールに従って安全に楽しんでください。