🌌 日常のふしぎ 💡 光 予備知識なしでOK 読了 約6分

オーロラは、なぜ場所や高さで色が違うの?
― 決まった色でしか光れない、大気の気体たち

オーロラの写真を見ると、緑色が多いものの、赤や紫、ピンクがかった色まで、さまざまな色が写っています。太陽からの粒子が大気にぶつかって光るという、同じしくみのはずなのに、なぜこれほど色が違うのでしょうか。

公開:2026.08.21 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、思い出してみてください

理科の実験で、金属を含んだ水溶液をしみこませた炎を見たことはないでしょうか。銅は緑色、ナトリウムは黄色、カリウムは紫色というように、含まれる物質によって、炎の色がはっきり決まっていました(炎色反応)。

ネオンサインが赤やオレンジに光るのも、中に入っている気体の種類で、出せる色が決まっているからです。オーロラの色も、これとよく似た理由で決まっていると考えられています。

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気体の種類によって、出せる光の色が決まっています

原子の中の電子は、決まった量のエネルギーの光しか出せないため、気体の種類ごとに、光る色のレパートリーが決まっているとされています。

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高さ(気体の濃さ)によって、光りやすい色が変わります

上空の高さによって気体の種類や濃さが違うため、同じ酸素という気体でも、高さによって出やすい色が変わるとされています。

この「気体ごとの決まった色」と「高さによる色の違い」を、順番に見ていきます。

高さによって、光りやすい気体と色が変わる 高度300km〜 酸素原子 → 赤色(まれ・ゆっくり光る) 高度100〜300km 酸素原子 → 緑色(オーロラでいちばんよく見る色) 高度100km以下 窒素分子 → 青・紫色(濃い空気の底のほう) 高い 低い 気体が濃い低空では、光る前に他の分子とぶつかって、ゆっくりした発光は起きにくくなる
図1:上空の高さによって、光りやすい気体と色が変わります。高度300km以上ではまれな赤色、100〜300kmではよく見る緑色(どちらも酸素原子)、100km以下では窒素分子による青・紫色になりやすいとされています。低空ほど気体が濃く、ゆっくりした発光が起きる前に周囲の分子とぶつかってしまうことが、色の変化に関わっています。

気体の種類によって、出せる色が決まっている理由

太陽風の粒子が大気の気体にぶつかると、気体の原子や分子の中の電子が、一時的にエネルギーの高い状態に押し上げられます。この電子が、もとの低いエネルギーの状態に戻るとき、その差のぶんのエネルギーを、決まった色(波長)の光として放出するとされています。電子が取れるエネルギーの状態は、気体の種類ごとに決まった、とびとびの値しかありません。だから、気体の種類が変われば、出せる色のレパートリーも変わるのです。花火やネオンサイン、炎色反応が、決まった物質でいつも同じ色に光るのも、同じしくみによるものです。

高さによって、光りやすい色が変わる理由

酸素原子は、緑色の光も、赤色の光も、どちらも出せるとされています。ただし、この2つの色が出るまでの時間には大きな差があり、緑色はすばやく出るのに対し、赤色が出るまでには、比較的長い時間がかかると考えられています。

問題は、この「時間がかかる」ことです。低い高度では空気が濃く、酸素原子はひっきりなしに周囲の分子とぶつかります。赤色が出るのを待っているあいだにぶつかってしまうと、光を出さないままエネルギーを失ってしまいます。気体が薄い高い高度でだけ、ぶつかる前に赤色を出しきる余裕があるというわけです。逆に、低い高度では空気が濃すぎて、この「待つ」ことができる色(酸素の光)はほとんど出せなくなり、すばやく光る窒素分子の青や紫が目立つようになるとされています。

🔎 オーロラの下側が紫がかって見えることがある理由

強い太陽風の粒子ほど、大気の深くまで入りこめるとされています。特に活発なオーロラでは、粒子が高度100km近くの窒素分子の層まで届き、緑色のオーロラの下側に、青や紫の縁取りが見えることがあります。

オーロラの色は、気まぐれに変わっているのではありません。
気体の種類と、光るまでの「待ち時間」が、色を決めているのです。

自分で確かめられること

🧪 身近な炎色反応で、気体ごとに色が決まっていることを確かめる
  1. キャンプファイヤーや花火大会など、色つきの炎を見る機会を探す(家庭では無理に炎色反応の実験をしないでください)
  2. ネオンサインや、街の電飾の色を観察する
  3. 同じ「光る」でも、使われている気体や物質によって色がはっきり決まっていることに注目する

オーロラの色も、大気という巨大な「ネオン管」の中で、決まった気体が決まった色に光っていると考えると、イメージしやすくなります。

まとめ

オーロラの色が場所や高さで違って見えるのは、2つの理由が組み合わさった結果だと考えられています。気体の種類ごとに出せる光の色が決まっているという性質。そして高度によって気体の濃さが違うため、光るまでに時間がかかる色は高い場所でしか出せないという性質です。緑色がもっともよく見えるのは、酸素原子が比較的すばやく出せる色だからというわけです。

オーロラは、1つの光ではありません。
高さごとに違う気体が奏でる、色のグラデーションなのです。

太陽風の粒子が北極や南極に集まるしくみそのものについては、こちらの記事で説明しています。

もっと知りたい人へ ― 用語・数値・教科書とのつながり中学理科から研究中の話題まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「化学基礎」で習う範囲
  • 高校+高校の「物理」「化学」、または教科書の発展・コラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(大気物理学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:オーロラの色をめぐる言葉

高校式で確かめる:緑色と赤色、光の粒(光子)のエネルギーはどちらが大きいか

波長から光のエネルギーを見積もる、よく使われる近似の関係式を使って、緑色と赤色のエネルギーを比べてみます。

① まず、式そのもの(よく使われる近似式)

光子のエネルギー(eV) ≒ 1240 ÷ 波長(nm)

緑色の波長およそ560nm(酸素原子がよく出す色の目安)
赤色の波長およそ630nm(酸素原子が出す、より波長の長い色の目安)
② 実際に計算してみる
緑色のエネルギー(eV)1240 ÷ 560 ≒ 2.21
赤色のエネルギー(eV)1240 ÷ 630 ≒ 1.97
結果緑色のほうが、赤色より大きいエネルギーを持つ
③ 出た数を、実感に直す

波長が短い色ほど、光の粒(光子)1個あたりのエネルギーが大きいという関係が、緑色(2.21)が赤色(1.97)より大きい数値として、はっきり確認できます。エネルギーの高い状態から低い状態へ、より大きく落ちるほど、より波長の短い(エネルギーの高い)光が出るという関係が、この数字の違いに表れています。

高校+「待ち時間」の違いが生む、高度による色分け

酸素原子の緑色の発光は、比較的すぐに起こるのに対し、赤色の発光は「禁制遷移」と呼ばれる、本来起こりにくい種類の変化で、光として放出されるまでに時間がかかるとされています。低い高度では、この「時間がかかる」あいだに周囲の分子と衝突してエネルギーを失ってしまう(消光と呼ばれます)ため、赤色は空気の薄い高い高度でしか、実際には光として観測されにくいと考えられています。

大学大気物理学が扱う、発光高度のモデル化

大気物理学・超高層大気物理学の分野では、太陽風の粒子のエネルギーと、大気の密度分布から、どの高度でどの色がどれくらいの明るさで光るかを計算するモデルが研究されています。人工衛星やロケットによる直接観測データと、このモデルを照らし合わせる研究が続けられています。

研究まだ、はっきりしていないこと

オーロラの色1つにも、原子物理学と大気科学が交わる、いまも研究が続く豊かなテーマが詰まっています。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学理科・炎色反応気体ごとに色が決まっている基本の考え方
高校化学基礎・原子の構造光子のエネルギーの計算
高校+物理・化学(発展)禁制遷移と消光の関係
大学大気物理学発光高度のモデル化
研究超高層大気物理学(研究中)まれな色の条件、宇宙天気予測、惑星間比較
参考・出典
  1. 大気物理学・超高層大気物理学関連の教科書における、オーロラの発光高度と色に関する解説。
  2. 原子物理学関連の資料における、禁制遷移と発光寿命に関する解説。
  3. 化学教育関連の資料における、炎色反応と発光の原理に関する解説。

※ 波長・高度の数値は、しくみを理解するための目安の値です。実際の値は太陽風の強さや大気の状態によって幅があるとされています。

※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための概算・目安です。実際の値は太陽風の強さや観測条件によって幅があるとされています。