日常のふしぎ 食と農 予備知識なしでOK 読了 約6分

ポップコーンは、なぜはじけるの?
― 1粒ずつが、小さな圧力なべになっています

かたい黄色の粒が、ある瞬間「ポン!」と白いふわふわに変わります。火薬が入っているわけではありません。はじけさせているのは、粒の中にほんの少しだけ含まれている「水」です。その水が、かたい殻に閉じこめられたまま熱くなると、粒の中は車のタイヤの4倍ほどの圧力になります。

公開:2026.10.27 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、こんな場面を思い浮かべてください

フライパンにポップコーンの粒と油を入れて、ふたをして火にかけます。しばらくは何も起きません。

数分たったころ、1粒が「ポン」。続いてポン、ポン、ポポポポ……と一気ににぎやかになり、ふたを押し上げるほどふくらみます。

子どもに「なんで、はじけるの?」と聞かれたら、どう答えますか。「熱いから」では答えになっていません。焼きトウモロコシの粒は、いくら焼いてもはじけないからです。

はじける理由は、2つだけ

1
粒の中の水が、湯気になってふくらもうとする

乾いて見える粒にも、重さの14%ほどの水が含まれています。熱くなった水は湯気になろうとして、粒の中から外へ強く押します。

2
かたい殻が、その湯気をにがさない

ポップコーン用の粒は、外側の殻がかたく、すき間がほとんどありません。逃げ場のない湯気の圧力がたまり続け、限界をこえた瞬間に殻が破れます。

つまり1粒1粒が、ふたをしめた「小さな圧力なべ」です。圧力なべと違うのは、安全弁がないこと。だから最後は、はじけるしかありません。

粒の中では、何気圧になっているの?

ふたのない鍋の水は、100℃で沸とうして湯気になって逃げていきます。ところが閉じこめられた水は、湯気が逃げられないので、温度が上がるほど湯気の押す力(圧力)が強くなります。

図1を見てください。横が加熱の温度、縦が粒の中の圧力です。100℃では1気圧、つまりまわりの空気と同じです。ところが温度が上がるにつれて、曲線は右上へどんどん急になります。およそ180℃で10気圧前後に達し、ここで殻が持ちこたえられなくなるとされています。

0 5 10 15 100 150 200 加熱の温度(℃) 粒の中の圧力(気圧) 点線=殻がたえられる限界(およそ9〜10気圧) 150℃ → 約4.7 気圧 粒のようす まだ割れない
つまみを動かすと、粒の中の圧力と、粒のようすが変わります
図1:加熱の温度と、粒の中の圧力。左のグラフの水色の曲線は、閉じこめられた水が湯気になって押す力です。横向きの点線が、殻がたえられる限界です。つまみで温度を上げていくと、曲線上の白い点が右上へ進みます。点線をこえたところで、右側の粒が白くふくらんだポップコーンに変わります。

大事なのは、この曲線が「まっすぐ」ではないことです。100℃から140℃までの40℃で増えるのは2.5気圧ほどです。ところが140℃から180℃までの40℃では、6気圧以上も増えます。温度が高いほど、少しの加熱で圧力がぐんと上がるのです。最初の数分は静かなのに、あるときを境に一斉にはじけ出すのは、このためです。

普通のトウモロコシは、なぜはじけないの?

焼きトウモロコシやコーンスープのトウモロコシにも、水は含まれています。足りないのは、湯気を閉じこめる「ふた」のほうです。

図2を見てください。左のポップコーン用の粒(爆裂種)は、殻が厚く、すき間がほとんどありません。右のふつうのトウモロコシの殻は、熱くなると湯気がもれてしまうとされています。湯気が少しずつ逃げてしまえば、圧力はたまりません。粒は焦げたり、しなびたりするだけです。

ポップコーン用の粒(爆裂種) ふつうのトウモロコシの粒 厚い殻が湯気をにがさない → 圧力がたまる 殻のすき間から湯気がもれる → たまらない
図2:2種類の粒の断面。左のポップコーン用の粒では、中から外へ向かう矢印(湯気が押す力)が、太い線で描いた厚い殻に止められています。右のふつうの粒では、殻が薄く、切れ目から矢印が外へ抜けていきます。小さな丸は、粒に含まれる水を表しています。

白いふわふわの正体は、一瞬で固まった「泡」

粒の中身はほとんどがデンプンです。熱い湯気にさらされると、デンプンはやわらかい、のりのような状態になります。そこへ殻が破れて、10気圧の湯気がいきなり1気圧の外へ解き放たれます。

湯気は一気にふくらみ、のり状のデンプンを内側から泡のように押し広げます。体積は元の粒の数十倍になるとされています。ふくらんだ泡は、外の空気で冷やされて水分も抜けるため、すぐにサクサクの白い固まりになります。ポップコーンの白い部分は、デンプンでできた細かい泡の集まりなのです。

💡 「ポン」という音は、殻が割れる音ではないらしい

2015年、フランスの研究者が高速カメラと録音でポップコーンを調べました。その結果、「ポン」という音は、殻が割れた瞬間ではなく、中の湯気が外へ噴き出すときに出ているらしいと報告されています。粒が跳ねるのも、はじけて出てきたデンプンが「脚」のように鍋を蹴るためだとされています。

💡 水分は多すぎても少なすぎてもだめ

ポップコーン用の粒は、水分が13〜14%くらいのときに最もよくふくらむとされています。袋をあけたまま置いて乾かしてしまうと、圧力が足りずにはじけ残りが増えます。保存するときは、密閉した容器に入れておくのがコツです。

まとめ

ポップコーンがはじけるのは、粒の中の水が湯気になり、かたい殻の中で逃げ場を失うからです。閉じこめられた湯気の圧力は温度とともに急に上がり、およそ180℃で約10気圧に達して殻を破ります。解き放たれた湯気がやわらかくなったデンプンをふくらませ、そのまま固まったものが、あの白いふわふわです。

はじけさせているのは、熱ではなく水。
殻という「ふた」があるから、水が爆発の力になります。

閉じこめると沸点が変わる話は、富士山ではご飯がうまく炊けないのは、なぜ?の、ちょうど逆向きの話です(山の上では圧力が低いので、100℃より低い温度で沸とうします)。熱で食べ物の中身が変わる話は、なぜ生卵は、ゆでると固まるの?やパンはなぜふくらむの?もあわせてどうぞ。

🧪 自分で確かめてみよう(大人といっしょに)
  1. ポップコーン用の粒を10粒ずつ2組用意します。片方の組だけ、針で殻に小さな穴をあけておきます。
  2. 2組を別々に、ふたをしたフライパンで同じように加熱し、はじけた粒の数をくらべます。穴をあけた粒は、湯気がもれるので、はじけにくいはずです。
  3. はじけ残った粒を割ってみましょう。殻に傷がないか、中が乾きすぎていないかを観察します。

加熱中はふたを開けず、顔を近づけないでください。はじけた粒や油が飛ぶことがあります。電子レンジを使う場合は、ポップコーン専用の容器や商品を使いましょう。

もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「物理」「化学」で習う範囲
  • 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(熱力学・食品物理学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:この現象には名前があります

中学高校式で確かめる:180℃で、粒の中は何気圧?

閉じこめられた水の湯気が押す力(蒸気圧)を、温度から見積もります。100℃で1気圧になることを出発点にして、180℃での圧力を計算します。

⓪ もとになる式
記号で書くとP2 = P1 × e の (L ÷ R) × (1/T1 − 1/T2) 乗
言葉で書くと高温での圧力 = 100℃での圧力 × e の「(水が湯気になる熱 ÷ 気体定数) × (2つの絶対温度の逆数の差)」乗
どこから来る式か水と湯気がつり合っている(相平衡)条件から出る、クラウジウス・クラペイロンの式。湯気になるのに必要な熱が大きいほど、温度による圧力の変化が急になります。
① もとになる数値
記号 L ÷ R(水が湯気になる熱を気体定数で割った値)およそ 4900 K とされます
記号 T1・P1(ふつうの沸点とそのときの圧力)373 K(100℃)で 1 気圧
記号 T2(ポップコーンがはじける温度)およそ 453 K(180℃)とされます
② 計算してみる
2つの温度の差453 − 373 = 80
2つの温度のかけ算373 × 453 = 168969
逆数の差(1/T1 − 1/T2)80 ÷ 168969 ≒ 0.000473
指数の中身4900 × 0.000473 ≒ 2.32
e の 2.32 乗およそ 10.2 とされます
180℃での粒の中の圧力1 × 10.2 = 10.2 気圧
③ 実感に直す
乗用車のタイヤの空気圧およそ 2.5 気圧
タイヤの何倍か10.2 ÷ 2.5 ≒ 4.1

粒の中は、車のタイヤのおよそ4倍の圧力になってからはじけます。実験では、はじける直前の粒の中の圧力は約9気圧と見積もられており、この概算とおおむね合っています。薄い殻が、はじける直前まで、これだけの圧力に耐えているのです。

高校高校+沸点は「まわりの圧力」で決まる

高校水は、湯気の圧力(蒸気圧)がまわりの圧力と等しくなる温度で沸とうします。外が1気圧なら100℃です。逆に、外の圧力が高ければ沸点は上がります。殻の中の水は、外へ出られないので、沸とうできないまま高い温度まで上がっていきます。家庭用の圧力なべが120℃前後で煮炊きできるのも同じしくみです。

高校+殻が破れた瞬間、まわりの圧力は10気圧から1気圧へ急に下がります。180℃の水にとって、1気圧での沸点の100℃は大きく下回っているため、水は一気に沸とうします。この急な沸とうが、デンプンを内側から泡立てる力になります。

大学相平衡と、デンプンの泡が固まるしくみ

上の式は、熱力学の相平衡の条件(ギブズエネルギーが等しい)から導かれるクラウジウス・クラペイロンの式です。ここでは湯気になる熱を一定とみなしましたが、実際は高温ほど少し小さくなるため、実測の蒸気圧より少し大きめの値が出ます。デンプンは糊化したあと、水分が抜けて冷えると、やわらかい状態からかたいガラスのような状態に移ります(ガラス転移)。ポップコーンのサクサク感は、泡の膜がこの状態に移ることで生まれると考えられています。

📖 式の導出や、さらに先の内容:クラウジウス・クラペイロンの式(ウィキペディア) / デンプンと糊化(ウィキペディア)

研究まだはっきりとはわかっていないこと

つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。身近なおやつの1粒にも、まだ研究の余地が残っています。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学理科:状態変化(水が水蒸気になると体積が大きくなる)粒の中の水が湯気になってふくらむところ
高校化学:蒸気圧と沸点図1の曲線、沸点がまわりの圧力で決まること
高校+化学:状態図と沸点上昇の考え方殻が破れた瞬間の急な沸とう
大学熱力学(相平衡)・食品物理学(デンプンの糊化とガラス転移)クラウジウス・クラペイロンの式、泡が固まるしくみ
研究食品工学・流体力学はじけ残り、音と跳ね方の研究
―生活とのつながり圧力なべ、粒の保存方法(密閉して乾かさない)
参考・出典
  1. Virot, E. and Ponomarenko, A. (2015) Popcorn: critical temperature, jump and sound. Journal of the Royal Society Interface, 12.
  2. Hoseney, R. C., Zeleznak, K. and Abdelrahman, A. (1983) Mechanism of popcorn popping. Journal of Cereal Science, 1, 43-52.
  3. Ziegler, K. E. (2001) Popcorn. In: Hallauer, A. R. (ed.) Specialty Corns, 2nd ed., CRC Press.
  4. 国立天文台編『理科年表』丸善出版(水の飽和蒸気圧)

※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。加熱調理は大人の見守りのもとで行い、調理器具や製品の説明書に従ってください。