自然のふしぎ 天文・宇宙 予備知識なしでOK 読了 約6分

月って、どれくらい遠いの?
― 地球と月のあいだに、太陽系の惑星が全部ならびます

月は、夜空でいちばん身近な天体です。手が届きそうにも見えます。でも実際の距離をはかって数字にすると、その「近さ」は錯覚だと分かります。地球と月のあいだには、太陽系の惑星が7つとも、まるごと入ってしまうのです。

公開:2026.09.10 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、こんな場面を思い浮かべてください

夕暮れの空に、大きな満月が出ています。すぐそこの山の上に、ぽっかり浮かんでいるように見えます。

子どものころ、理科の教科書で地球と月の絵を見た記憶はないでしょうか。青い地球のとなりに、灰色の月がちょこんと寄りそっていました。

では、その絵の距離は正しかったのでしょうか。答えは「まったく正しくない」です。本当の縮尺で描くと、教科書のページには収まりません。

なぜ私たちは、月を「近い」と思ってしまうの?

1
絵や写真は、必ず距離を縮めている

本当の比率で地球と月を描くと、紙のはしからはしまで使っても足りません。だから図はいつも距離を大幅に縮めます。私たちはその縮んだ絵を、くり返し目にして育ちます。

2
空には、遠さを測る手がかりがない

ふだん私たちは、手前の木や建物と比べて遠さを判断します。空に浮かぶ月には、比べる相手がありません。手がかりが無いとき、脳は距離を決められないのです。

つまり「近く見える」のは、月の性質ではなく私たちの側の事情です。では、本当の距離はどれくらいなのでしょうか。数字にしてみましょう。

本当の縮尺で置くと、どう見えるの?

地球から月までの平均距離は、約38万4400kmです。地球の直径は約1万2742kmですから、地球をだんごのようにならべると、ちょうど30個分になります。

図1を見てください。上が、よく見かける絵の距離感です。下が、同じ大きさの地球を使って本当の比率で置きなおしたものです。月は右のはしに、小さな点として現れます。

上:よく見かける絵(距離が縮めてあります) 地球 下:本当の比率(地球の大きさはそのまま) 地球30個分 = 約38万4400 km 地球 下の図が本当の比率です。右はしの小さな点が、月です。
図1:上の絵は距離が縮めてあります。下は同じ地球の大きさのまま、本当の比率で置きなおしたもの。左はしの丸が地球、右はしの小さな点が月で、そのあいだを緑の点線がつないでいます。

そのすきまに、何が入るの?

ここからが、この記事でいちばん面白いところです。地球と月のあいだにあいた38万kmという空間に、太陽系の惑星をならべてみます。

水星、金星、火星、木星、土星、天王星、海王星。地球をのぞく7つの惑星の直径を全部足すと、約38万10kmになります。月までの距離は38万4400kmですから、7つとも入ってしまいます。しかも、まだ4000kmほど余ります。

図2は、図1の下段と同じ縮尺で惑星をならべたものです。大きな2つは木星と土星で、この2つだけで全体の3分の2以上を占めます。左はしの小さな3つが、水星・金星・火星です。

同じ縮尺で、地球と月のすきまに惑星をならべると ↓ 左はしの小さな3つ:水星・金星・火星 木星 土星 天王星 海王星 地球 7つならべても、まだ約4000 km(すきまの約1%)余ります
図2:左右の緑の点線が地球と月の位置です。そのあいだに、地球以外の7つの惑星を同じ縮尺でならべました。中央の大きな2つが木星と土星、右の2つが天王星と海王星、左はしの小さな3つが水星・金星・火星です。
💡 光でも、すぐには届きません

光は1秒間に約30万km進みます。それでも月まで約1.3秒かかります。もし月に人がいて無線で話すと、返事が返るまで2秒以上あきます。月は「光にとっても一瞬ではない」距離にあるのです。

💡 月は、少しずつ遠ざかっています

月に置かれた反射鏡にレーザーを当てて距離をはかる観測から、月は1年に約3.8cmずつ遠ざかっているとされています。恐竜がいたころの月は、いまより近く、空でもう少し大きく見えていたと考えられています。

まとめ

月までの距離は約38万4400km。地球30個分で、そのすきまには太陽系の惑星が7つとも収まります。近く見えるのは、絵が距離を縮めていることと、空に比べる相手がないことの2つが理由です。数字にしてみると、月は思っているよりずっと遠くにあります。

月は「すぐそこ」ではありません。
地球を30個ならべた、その先にあります。

同じ月について、見かけの大きさが変わる話は昇ったばかりの月は、なぜあんなに大きく見えるの?で、いつも同じ面を向けている理由は月はなぜ、いつも同じ面をこちらに向けているの?で説明しています。

🧪 ボール2つで、月までの距離を床に再現する
  1. バスケットボール(直径約24cm)とテニスボール(直径約6.7cm)を用意します。大きさの比が、ちょうど地球と月の比になっています。
  2. バスケットボールを床に置き、そこから約7.2m離れたところにテニスボールを置きます。24cmの30倍が720cm、つまり7.2mです。
  3. バスケットボールの横にしゃがんで、テニスボールを見てください。ふだん思い描く「地球のとなりの月」より、はるかに遠いはずです。

部屋で7.2mがとれないときは、直径2.4cmのビー玉と直径0.7cmの小さな玉を72cm離してもかまいません。比率は同じです。

もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「地学基礎・物理基礎」で習う範囲
  • 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(天体力学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:この話には名前があります

中学高校式で確かめる:地球何個分で、光なら何秒か

使う数値は3つだけです。わり算とひき算しか出てきません。

① もとになる数値
地球から月までの平均距離384400 km
地球の直径12742 km
地球以外の7つの惑星の直径の合計380010 km とされています
② 計算してみる
月までは地球何個分か384400 ÷ 12742 ≒ 30.2
惑星を全部ならべたあとの余り384400 − 380010 = 4390
光が月に届くまでの秒数(光は1秒に約30万km)384400 ÷ 300000 ≒ 1.28

地球がちょうど30個ならび、惑星7つを入れても4390kmだけ余る、という関係が数字で確かめられます。

③ 実感に直す
時速300kmで走り続けたときの時間384400 ÷ 300 ≒ 1281
それを日数に直すと1281 ÷ 24 ≒ 53

新幹線なみの速さで一度も止まらずに進んでも、約53日かかる計算になります。月は、そういう距離にあります。

高校高校+距離は、どうやってはかったのか

高校古代ギリシャでは、月食のときに月を横切る地球の影の大きさから、月までの距離が地球の直径の約30倍だと見積もられました。望遠鏡も計算機もない時代に、比だけでたどりついた値です。

高校+いまは月面に置かれた反射鏡へレーザーを送り、往復にかかる時間をはかります。時間に光の速さをかければ距離が出ます。この方法での精度は、数cmの水準に達しているとされています。

大学なぜ月は遠ざかるのか

月の重力は地球の海をふくらませ、その海のふくらみは地球の自転にひきずられて少し先へずれます。ずれたふくらみが月を前向きに引くため、月の軌道はわずかに広がります。同時に地球の自転はゆっくり遅くなります。角運動量が地球の自転から月の軌道へ移る、という見方をします。

研究まだはっきりとはわかっていないこと

つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。距離そのものは高い精度で分かっていますが、その距離がどう変わってきたかは、まだ研究の途中です。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学理科・地球と宇宙月までの距離と、地球30個分という比
高校地学基礎・太陽系/物理基礎・速さ光の速さから求める1.3秒
高校+地学・天体観測の方法レーザーによる距離の測定
大学天体力学・潮汐理論月が遠ざかるしくみ
研究惑星科学月の生い立ちと内部構造
生活とのつながりボール2つで距離を再現する観察
参考・出典
  1. NASA NSSDCA|Moon Fact Sheet
  2. NASA NSSDCA|Planetary Fact Sheet
  3. 国立天文台|暦計算室
  4. Williams, J. G. ほか, 月レーザー測距による地球・月系の研究(月面反射鏡を用いた距離測定に関する解説)

※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。観察を行うときは足元や周囲の安全に注意し、自治体等の指示がある場合はそれに従ってください。