自然のふしぎ 生命・生物 予備知識なしでOK 読了 約7分

木の葉は、なぜ秋になると落ちるの?
― 枯れて落ちるのではなく、木が自分で切り離しています

秋の落ち葉は、葉が力尽きて枝から離れた姿に見えます。でも実際は逆です。木のほうが「もうこの葉は割に合わない」と判断し、葉の中身を回収したうえで、付け根に切り取り線をつくって落としています。落葉は、木にとっての損切りなのです。

公開:2026.09.04 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、こんな場面を思い浮かべてください

秋の並木道。風がひと吹きすると、葉がいっせいに舞い落ちます。地面はすぐに黄色や茶色でうまります。

ところが、落ちたばかりの葉を拾ってみると、まだしなやかで、ちぎれた様子がありません。付け根はきれいな曲面で、まるで刃物で切ったあとのようです。

枝のほうを見上げると、葉のあった場所には小さな丸い跡が残っています。傷口ではなく、ていねいにふさがれた跡です。木は、葉を「落とされた」のではなく「落とした」ようです。

理由は、大きく2つです

1
冬の葉は、もうけより損が大きい

気温が下がると、根は冷たい土から水を吸いにくくなります。それなのに葉は水を空へ逃がしつづけます。日が短く弱い光では、光合成の稼ぎもわずかです。

2
木は「切り取り線」をつくって落とす

木は葉の中身を枝へ回収したあと、葉の付け根に離層という弱い層をつくります。そこだけがはがれ、あとにはふたが残ります。落葉は、計画された切り離しです。

つまり落葉は、季節に負けた結果ではありません。冬を越すために、木がわざわざ手間をかけて行う作業です。順に見ていきます。

冬の葉は、なぜ「赤字」になるのでしょう

葉のいちばん大事な仕事は光合成です。光と二酸化炭素と水から、糖をつくります。そのために葉の裏には気孔という小さな穴がたくさんあり、そこから二酸化炭素を取り込みます。

ところが、この穴は水の出口でもあります。開けているあいだ、体内の水はどんどん水蒸気になって出ていきます。これを蒸散といいます。夏はそれでかまいません。根がいくらでも水を吸い上げてくれるからです。

冬は事情が変わります。土が冷えると、根から水を吸い上げる働きは大きく落ちます。土が凍ればほとんど吸えません。それなのに、葉をつけたままにすれば、水は出ていく一方です。

しかも冬は日が短く、太陽の高さも低くなります。葉が稼げる糖は減ります。稼ぎが減り、失う水は減らない。葉は、木にとって赤字の器官になります。だから木は、冬が来る前に葉を手放します。

離層という「切り取り線」のしくみ

葉を落とすといっても、力まかせにちぎれば枝に穴が開きます。そこから水が抜け、菌も入ります。そこで木は、落とす場所をあらかじめ決めておきます。

葉の付け根には、細胞のかべがうすく、小さな細胞がならんだ層ができます。これが離層です。切手のミシン目のようなもので、そこだけが弱くなっています。図1を見てください。左が夏、中央が秋、右が落ちたあとの様子です。

夏:つながっている 水と養分が 行き来している 秋:切り取り線ができる 黄色い点線=離層 点線のところで 水の道がふさがれる 落ちたあと:ふたをする 矢印の向きに葉が落ちる 枝の側にはふたが残る
図1:葉の付け根で起きていること。左の夏は、枝(縦の太い帯)と葉が葉柄でつながっています。中央の秋は、葉柄の途中に黄色い点線で示した離層ができ、水と養分の行き来が止まります。右は落ちたあとで、青い矢印の向きに葉が落ち、枝の側には丸いふた(葉あと)が残ります。

離層ができると、そこで水と養分の行き来が止まります。あとは自分の重さや、風や雨のわずかな力で足ります。葉は、ぽろりと外れます。

大事なのは、切り離す前の準備です。木は落とす前に、葉の中の使える材料を枝や幹へ運び戻します。とくに窒素は、葉をつくるのに大量に使った貴重な材料です。これを捨てずに回収し、翌春の新しい芽の材料にします。

そして葉が外れると、離層の枝側にはコルクのような層が広がり、切り口をふさぎます。これが、枝に残る小さな丸い跡の正体です。木は、傷口を開けたまま冬に入ることはありません。

💡 いつ落とすかを決めているのは、寒さより「昼の長さ」

秋の落葉の合図は、気温だけではないと考えられています。多くの落葉樹は、夜の長さがのびていくことを手がかりにしています。気温は年ごとにぶれますが、昼の長さは毎年きっちり同じだからです。暖かい秋でも並木がそろって色づくのは、そのためだとされています。

💡 では、常緑樹はなぜ葉を落とさないの?

マツやスギのような常緑樹も、葉を落とします。ただし一度にではなく、数年かけて少しずつ入れ替えます。葉は細く、表面をぶ厚いろうの層でおおい、水が逃げにくい形につくられています。「冬も使いつづける」ための投資をした葉、と考えると分かりやすいです。

まとめ

秋の落ち葉は、寿命が尽きた葉の残がいではありません。冬のあいだ、葉は水を失うばかりで稼げなくなります。だから木は中身を回収し、離層という切り取り線をつくって、自分の手で葉を切り離します。地面をうめる落ち葉は、木が冬支度を終えた証拠です。

葉は枯れて落ちるのではありません。
木が、次の春のために切り離しています。

落ちる前に葉が色づくしくみは紅葉は、なぜ赤や黄色に色づくの?で、木がふだんどうやって水を高いところまで運んでいるのかは木はなぜ、100メートルの高さまで水を吸い上げられるの?で説明しています。冬の寒さを数えて春に咲く桜の話(桜はなぜ、毎年いっせいに咲くの?)も、あわせてどうぞ。

🧪 落ち葉を1枚拾って、付け根を見てみましょう
  1. 秋に落ちたばかりの葉を拾い、葉柄(じくの部分)の先端をよく見ます。ちぎれた繊維ではなく、なめらかな面になっているはずです。
  2. まだ落ちていない葉を1枚、そっと下へ引いてみます。秋が深まるほど、驚くほど軽い力で外れます。夏に同じことをすると、葉のほうがちぎれます。
  3. 葉が落ちたあとの枝を見ます。丸や三日月の形をした跡(葉あと)があり、その中に点々が並んでいます。これが、水の通り道がふさがれた跡です。

同じ日に常緑樹の葉もさわってみると、厚みとつやの違いがよく分かります。庭や公園の木を折ったり傷つけたりせず、落ちた葉と、手の届く範囲の観察にとどめてください。

もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「生物基礎・生物」で習う範囲
  • 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(植物生理学・植物生態学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:この現象には名前があります

中学高校式で確かめる:1本の木は、どれだけの「水の出口」を持っているのか

葉が冬に不利になるのは、水が出ていく面積がとても大きいからです。中くらいの落葉樹を例に、葉の合計面積を出してみます。木の大きさで大きく変わるので、あくまで桁をつかむための概算です。

① もとになる数値
葉1枚のおよその面積50 平方センチメートル
中くらいの落葉樹の葉の枚数およそ 2万枚
面積の単位の関係1 平方メートル = 1万 平方センチメートル
記号:葉1枚の面積葉1枚が広げる面。単位は平方センチメートル
記号:葉の枚数木全体についている枚数。単位は枚
記号:合計面積水が出ていける面の広さ。単位は平方メートル
② 計算してみる
葉の合計面積を出す50 × 20000 = 1000000
平方メートルに直す1000000 ÷ 10000 = 100
教室の床(約50平方メートル)の何個分か100 ÷ 50 = 2

1本の木が、教室2つ分ほどの面を空気にさらしている計算になります。夏はここから水を蒸発させることで、体を冷やし、根から水を引き上げる力も得ています。しかし冬に根が水を吸えなくなると、この広さがそのまま不利に変わります。

高校高校+切り離しの合図は、どこから来るのか

高校植物の体づくりは、植物ホルモンと呼ばれる物質が調節しています。葉が元気なあいだ、葉のほうから送られてくるオーキシンが、離層をつくらせない向きに働くと考えられています。

高校+秋になって葉の働きが落ちると、この送り出しが弱まります。かわりにエチレンなどの働きが強まり、離層の細胞が細胞かべを分解する酵素をつくり始めるとされています。つまり落葉は、葉からの合図が止まったことが引き金になる、と整理できます。

高校+夜の長さを測っているのは、フィトクロムという光を受け取るタンパク質だとされています。赤い光と、それより少し波長の長い光のどちらを最後に浴びたかで形が切りかわり、夜の長さの記録計として働きます。

大学落葉は「養分の再吸収」という経営判断

植物生態学では、落葉前の回収を養分再吸収と呼びます。葉に含まれる窒素やリンのかなりの割合が、落葉前に枝や幹へ運び戻されるとされています。窒素は土からの獲得に手間がかかる元素で、光合成の酵素の主材料でもあります。

この見方に立つと、落葉樹と常緑樹の違いは戦略の違いになります。落葉樹は、うすくて安い葉を1シーズンだけ使い、中身を回収して捨てます。常緑樹は、ぶ厚くて高価な葉をつくり、数年かけて元を取ります。土がやせた場所や寒い場所ほど、常緑の戦略が有利になりやすいと説明されています。

研究まだはっきりとはわかっていないこと

つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。並木道の落ち葉は、いまも観測が続いている研究対象でもあります。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学理科・植物のつくりとはたらき(蒸散、光合成)気孔からの水の出入り、冬に赤字になる話
高校生物基礎・生物(植物ホルモン、環境応答)オーキシンと離層、日長の感知
高校+生物の発展・コラム(フィトクロム、エチレン)夜の長さを測るしくみ、切り離しの引き金
大学植物生理学・植物生態学養分再吸収、落葉樹と常緑樹の戦略の違い
研究生物季節学(未解決)落葉時期の予測、温暖化への応答
生活とのつながり落ち葉の付け根の観察、庭木の落ち葉そうじ、堆肥づくり
参考・出典
  1. 中学校理科(第2分野)の教科書における、蒸散・気孔・光合成の解説。
  2. 植物生理学の標準的な教科書における、離層形成と植物ホルモン(オーキシン・エチレン)の記述。
  3. 気象庁「生物季節観測」(かえで・いちょうの紅葉日および落葉日の長期観測記録)。
  4. 植物生態学の資料における、落葉前の養分再吸収(窒素・リンの転流)と、落葉樹・常緑樹の葉の寿命に関する解説。

※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。葉の枚数や面積は樹種と大きさで大きく変わります。観察は、他人の庭や管理された樹木を傷つけない範囲で行ってください。