地球の水を全部集めて1つの玉にしたら、どれくらいの大きさになるの?
― 直径はおよそ1400キロ。川と湖の水だけなら、たった56キロです
地球は「水の惑星」と呼ばれ、表面の7割を海がおおっています。ところが、その水を全部すくい集めて1つの玉にすると、地球の横にちょこんと並ぶ小さな粒にしかなりません。海は、とても広いのに、とても薄いのです。
地球儀を回すと、目に入るのは青ばかりです。太平洋だけで、陸地を全部合わせたより広いと習った人も多いでしょう。
船で沖に出れば、どちらを向いても水平線まで水です。深いところは1万メートルを超えるとも聞きます。
これだけの水があれば、地球の半分くらいの大きさの玉にはなりそうです。ところが、実際に計算してみると、答えは想像よりずっと小さくなります。
小さくなる理由は2つだけ
海の平均の深さは約3.7キロです。地球の半径は約6400キロあります。深さは、半径のわずか1700分の1ほどしかありません。
玉の大きさは、中身の量の立方根で決まります。水の量が地球の約780分の1でも、直径にすると約9分の1にしか見えなくなります。
この2つを順に見ていくと、「水の惑星」の本当の姿と、私たちが使える水がどれほど少ないかが見えてきます。
地球の水は、全部で直径およそ1400キロの玉になる
米国地質調査所の見積もりでは、地球にある水は全部で約13億8600万立方キロメートルとされています。海の水、氷河、地下水、湖や川、空気中の水蒸気、生き物の体の中の水まで、すべて含めた量です。
これを1つの玉にまとめると、直径はおよそ1385キロになります。地球の直径は約1万2700キロなので、その9分の1ほどです。月の直径(約3500キロ)と比べても、4割くらいしかありません。
図1の左を見てください。大きな円が地球で、右に並んだ小さな玉が、地球のすべての水です。同じ縮尺で描くと、これだけの差があります。
地球儀にすると、海は紙1枚の厚さしかない
海が薄いことは、地球儀で考えると実感できます。直径30センチの地球儀なら、中心から表面までは15センチです。この縮尺で海の平均の深さを表すと、約0.09ミリになります。
これは、コピー用紙1枚の厚さとほぼ同じです。いちばん深いマリアナ海溝でも、約0.26ミリにすぎません。地球儀の表面をなでたとき、指先に水を感じるかどうかという薄さです(図1の右)。
海が広く見えるのは、表面をぐるりとおおっているからです。量を決めるのは「広さ×深さ」なので、どれほど広くても、深さがこれだけ薄ければ全体の量は小さくなります。
さらに、玉にしたときの大きさは、量の立方根で決まります。量が1000分の1なら、直径は10分の1です。地球の水は、地球全体の体積の約780分の1なので、直径にすると約9分の1になります。縮み方が穏やかに見えるぶん、「思ったより大きい」とも「思ったより小さい」とも感じる、不思議な数字です。
すべての水のうち、約97%は海の塩水です。残りの淡水も、大半は南極やグリーンランドの氷と、深い地下水です。湖と川の水を集めると、直径およそ56キロの玉にしかなりません。私たちが毎日の暮らしで使う水は、この小さな粒から、雨と蒸発のくり返しで絶えず補われています。
水は岩や鉄より軽いので、重さでくらべると差はさらに開きます。地球の水をすべて合わせても、地球全体の重さの約0.02%とされています。地球は「水の惑星」というより、「うすく水をかぶった岩の玉」なのです。
まとめ
地球の水を全部集めても、直径およそ1400キロの玉にしかなりません。海は表面の7割をおおっていますが、深さは地球の半径の約1700分の1です。さらに、玉の大きさは量の立方根で決まるため、直径にすると地球の約9分の1になります。川と湖の水だけなら、直径56キロです。
海は、広いのではなく「薄く広がっている」。
私たちの水は、地球の表面にかかった一枚の膜です。
海がしょっぱい理由は「海の水はなぜしょっぱいの?」で、薄い海の底でも水が生き物を押しつぶす力については「深海の生き物は、なぜあの水圧に耐えられるの?」で解説しています。小さな体積に重さが詰まった極端な例は中性子星の記事もどうぞ。
- みかんを1個用意します。直径7センチほどのみかんの体積は、およそ200ミリリットルです。これを「地球」とします。
- その約780分の1にあたる、およそ0.25ミリリットルの水を用意します。スポイトやストローの先で5滴ほどです。これが「地球の水」です。
- 5滴を1か所に集めるようにラップの上へ落とすと、ほぼ丸い水玉になります。みかんの横に並べて、大きさをくらべてみましょう。
量では780分の1なのに、水玉の直径は1センチ弱で、みかんの9分の1ほどです。「量」と「長さ」の感覚がずれるのは、体積が長さの3乗で増えるからです。
もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
- 中学中学校の理科・数学で習う範囲
- 高校高校の「地学」「数学」で習う範囲
- 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
- 大学高校では習わない、大学の専門科目(水文学・地球化学)の内容
- 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話
中学用語:この現象には名前があります
- 水循環:海や陸の水が蒸発して雲になり、雨や雪として降り、川や地下を通って海へ戻るくり返しのこと。
- 淡水:塩分をほとんど含まない水。氷河・地下水・湖・川などにあり、地球の水の約2.5%とされます。
- 相似比と体積比:形が同じで大きさだけ違う立体では、長さが2倍なら体積は8倍になります。体積の比は、長さの比の3乗です。
中学高校式で確かめる:水の玉の直径と、海の薄さ
球の体積の式を逆に使うと、水の量から玉の直径が出せます。主題である「水の玉の直径」そのものを計算し、地球の直径とくらべます。
| 記号で書くと | V = (π ÷ 6) × d³ より d = ∛( 6 × V ÷ π ) |
| 言葉で書くと | 玉の直径 = 「6 × 水の体積 ÷ 円周率」の立方根 |
| どこから来る式か | 球の体積の公式(体積 = 4/3 × 円周率 × 半径の3乗)を、直径で書き直して逆に解いたもの。水の量は形を変えても保存されるので、海に広がっていても玉に集めても同じ体積になる |
| 記号 | 意味と単位 |
| V | 水の体積(立方キロメートル) |
| d | 水を集めた玉の直径(キロメートル) |
| π | 円周率(約3.14) |
| 地球の水の総量(米国地質調査所) | 約13.86億 km³ |
| 湖と川の淡水の量(同) | 約9万3113 km³ |
| 地球の平均半径 | 約6371 km |
| 海の平均の深さ | 約3.7 km |
| 6 × 水の体積(億 km³) | 6 × 13.86 = 83.16 |
| それを円周率で割る | 83.16 ÷ 3.14 ≒ 26.48 |
| その立方根が直径 | 26.48億の立方根は およそ 1384 km とされます |
| 地球の直径 | 6371 × 2 = 12742 |
| 地球と水の玉の直径の比 | 12742 ÷ 1384 ≒ 9.2 |
| 湖と川の水:6 × 体積 | 6 × 93113 = 558678 |
| それを円周率で割る | 558678 ÷ 3.14 ≒ 177924 |
| その立方根が直径 | 177924の立方根は およそ 56.2 km とされます |
| 海の深さ ÷ 地球の半径 | 3.7 ÷ 6371 ≒ 0.00058 |
| 地球儀(半径150ミリ)での海の厚さ | 150 × 0.00058 ≒ 0.087 |
すべての水の玉は直径約1384キロで、地球の約9分の1です。湖と川の水は直径約56キロ。地球儀の上の海は約0.09ミリで、コピー用紙1枚の厚さとほぼ同じです。
高校高校+水はどこに、どれだけあるのか
高校地学では、地球の水の分布を「水圏」として学びます。海水が約97%、淡水が約2.5%で、淡水のうち約7割は南極やグリーンランドの氷床・氷河、約3割が地下水とされます。湖・川・沼などの地表水は、淡水全体の1%にも届きません。
高校+量が少ない場所の水ほど、速く入れかわります。大気中の水蒸気は、平均して10日前後で雨として落ち、入れかわるとされています。一方、海の水が一巡するには数千年かかると考えられています。川と湖の水が少ないのに枯れないのは、この速い入れかわりのおかげです。
大学水文学:水収支と滞留時間
地球上の水の量と流れを扱う分野を水文学といいます。各貯留場所(海・氷床・地下水・大気など)の出入りをつり合わせる水収支の式と、「貯留量 ÷ 出入りの流量」で求める滞留時間が基本の道具です。世界の水の分布表は、旧ソ連の水文学者シクロマノフらが1990年代にまとめた見積もりが広く使われており、米国地質調査所の数値もこれにもとづいています。
📖 式の導出や、さらに先の内容:水循環(ウィキペディア) / 米国地質調査所「地球にはどれだけ水があるか」(英語)
研究まだはっきりとはわかっていないこと
- マントルの中の水:地下数百キロのマントルの鉱物には、水が閉じこめられています。その量は海の水の何倍にもなるという見積もりがありますが、幅が大きく、決着していません。
- 地球の水はどこから来たか:彗星が運んだのか、小惑星のかけらが運んだのか、地球ができたときから含まれていたのか。水素の重さの比を手がかりに、議論が続いています。
- 地下水の総量:深い地下水は直接測れないため、見積もりには大きな幅があります。人が使える浅い地下水が、どの速さで補われているかも研究の途中です。
つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。地表の水の量は精度よく見積もられていますが、地球の奥の水まで含めると、答えは変わるかもしれません。
教科書とのつながり(レベル別)
| レベル | 科目・単元 | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 中学 | 数学「相似な図形」、理科「天気の変化(水の循環)」 | 量が780分の1でも直径は9分の1になる理由 |
| 高校 | 地学基礎「地球の水圏」 | 海水・氷・地下水の割合 |
| 高校+ | 地学「水の循環と滞留」 | 大気の水が10日前後で入れかわる話 |
| 大学 | 水文学・地球化学 | 水収支と滞留時間 |
| 研究 | 惑星科学・地球深部科学 | マントルの水、地球の水の起源 |
| ― | 生活とのつながり | 私たちが使える水は、直径56キロの粒から絶えず補われている |
- U.S. Geological Survey, "How Much Water is There on Earth?"(Water Science School)
- アメリカ航空宇宙局・地球のデータ集(質量・平均密度・半径)
- Shiklomanov, I. A. (1993). World fresh water resources. In P. H. Gleick (Ed.), Water in Crisis: A Guide to the World's Fresh Water Resources. Oxford University Press.
- 国立天文台 編『理科年表』丸善出版(地球の大きさ・海洋の深さ)
※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。水の総量や分布の数値は見積もりであり、資料によって多少異なります。