自然のふしぎ 地球科学 予備知識なしでOK 読了 約6分

地球は、なぜ丸いの?
― 大きくなりすぎると、岩でも自分の重さに逆らえません

地球も、月も、太陽も丸い。でも、探査機はやぶさが訪れた小惑星イトカワは、ピーナッツのような形をしています。同じ岩のかたまりなのに、なぜ形がちがうのでしょう。決め手は「大きさ」です。ある大きさを超えると、岩は自分の重さに負けて、長い時間をかけて丸くなっていきます。

公開:2026.09.28 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、こんな場面を思い浮かべてください

地球儀をくるくる回していた子どもが、ふと聞きます。「どうして地球はボールみたいに丸いの? 四角い星はないの?」

大人はつい「宇宙の星はみんな丸いものだから」と答えてしまいます。でも、それは答えになっていません。

実際、宇宙にはごつごつした岩のかけらのような天体がたくさんあります。丸い天体と、丸くない天体。その分かれ目には、はっきりした理由があります。

丸くなる理由は2つだけ

1
重力は、どこからでも「中心へ」引く

重力は、天体のすべての部分を中心に向かって引っぱります。出っぱったところは中心から遠く、下へ引き戻されます。へこんだところには、まわりから物が寄ってきます。どこから見ても中心まで同じ距離、つまり球の形がいちばん落ち着きます。

2
大きいと、岩が自分の重さに負ける

小さな天体では、重力が弱く、岩の固さが勝ちます。だからごつごつした形のままです。ところが天体が大きくなると、内側にかかる重さは急に増えます。直径数百キロを超えると岩でも耐えきれず、長い年月でゆっくり丸くなります。

引っぱる力と、それに耐える岩の固さ。この「比べっこ」で形が決まります。順に見ていきましょう。

重力は、みんなを真ん中へ集めようとする

地球の上では、どこにいても「下」は地球の中心の方向です。日本でもブラジルでも、ボールを放せば地面へ落ちます。天体のどの部分も、同じように中心へ引っぱられています。

もし地球に、高さ1000キロの巨大な出っぱりがあったらどうでしょう。その出っぱりは強く下へ引かれ、根もとの岩は押しつぶされます。押しつぶされた岩は、横へじわじわ逃げていきます。そうやって高いところが削れ、低いところが埋まっていくと、最後には「どこも中心から同じ距離」の形、つまり球になります。

ポイントは、この変化がとてもゆっくりなことです。人間の目には固い岩でも、何百万年という時間で見ると、水あめのように少しずつ流れます。地球の中の岩(マントル)が、実際に1年に数センチの速さで動いていることが知られています。

大きさで決まる「丸くなる境目」

では、どれくらいの大きさから丸くなるのでしょう。図1を見てください。左から右へ、天体が大きくなっていきます。

岩の天体は、大きくなると丸くなる イトカワ 長さ 約500メートル ピーナッツ形 ベスタ 直径 約525キロ いびつ 丸くなる境目(点線) 直径およそ500〜600キロ ケレス 直径 約940キロ ほぼ丸い 地球 直径 約1万2700キロ ← 岩の固さが勝つ 重力が勝つ → 絵の大きさは実際の比率ではありません
図1:左から右へ、天体が大きくなる順に並べました。いちばん左のイトカワはピーナッツ形、2番目のベスタはいびつな形です。まん中の点線(直径およそ500〜600キロ)より右のケレスと地球は丸くなっています。絵の大きさは実際の比率ではありません。

長さ500メートルほどのイトカワは、重力がとても弱い天体です。岩の固さのほうがずっと勝つので、形はぶつかり合ってできたときのままです。直径約525キロのベスタは、ちょうど境目の手前にあり、いびつな形をしています。直径約940キロのケレスになると、ほぼ丸くなります。

なぜ大きさでこんなに差が出るのでしょう。天体の直径が2倍になると、中心にかかる重さ(圧力)は約4倍になります。体積が増えて重くなるうえに、重力そのものも強くなるからです。一方、岩の固さは大きさによらず同じです。そのため、ある大きさを超えたとたん、重さが岩の固さを追い越します。計算すると、岩の天体ではその境目が直径およそ500〜600キロになります(下の「式で確かめる」)。

💡 氷の天体は、もっと小さくても丸くなります

土星の衛星ミマスは、主に氷でできていて、直径は約400キロです。それでもほぼ丸い形をしています。氷は岩よりやわらかく、自分の重さで形を変えやすいからです。何でできているかで、境目の大きさが変わります。

でも地球は、完全な球ではない

実は、地球はほんの少しだけ横につぶれた形をしています。地球は1日に1回まわっているので、赤道のあたりは外へふくらもうとします。回るコップの水が外側で盛り上がるのと同じです。

赤道の半径は約6378キロ、北極・南極の方向の半径は約6357キロとされています。その差は約21キロです。図2の左のように、ほんのわずかだけ横に広がっています。

回転で、少しだけ横につぶれる 北極 赤道 6378キロ 極 6357キロ つぶれ方は大げさに描いています 直径30センチの地球儀にすると 30センチ エベレスト 約0.2ミリ 赤道のふくらみ 約1ミリ 指でなでても わからないほど
図2:左は、回転のせいで横に少しつぶれた地球の断面(つぶれ方は大げさに描いています)。横向きの線が赤道の半径、縦の線が北極までの半径です。右は、直径30センチの地球儀に縮めたときの大きさ。いちばん高い山も、赤道のふくらみも、ミリ単位にしかなりません。

右の地球儀を見ると、この差がどれほど小さいかがわかります。世界一高いエベレストでさえ、直径30センチの地球儀では約0.2ミリの出っぱりです。地球は、ごつごつした山や深い海を持ちながら、全体としてはとてもなめらかな球なのです。

まとめ

地球が丸いのは、重力が天体のすべての部分を中心へ引き寄せるからです。そして地球は十分に大きいので、岩の固さでもその力に逆らえません。長い年月をかけて、出っぱりはならされ、球の形に落ち着きます。小さな小惑星がいびつなままなのは、重力より岩の固さが勝つからです。

丸い星は、自分の重さに負けた星。
いびつな星は、まだ岩の固さが勝っている星です。

同じ「重さと岩の固さの比べっこ」で山の高さの限界が決まる話は「山は、どこまで高くなれるの?」で、地球の大きさを昔の人がどう測ったかは「地球の大きさは、どうやって測ったの?」で紹介しています。

🧪 「自分の重さで丸くなる」を台所で見てみよう
  1. お皿の上に、はちみつや水あめをスプーンで高く盛ってみます。しばらく待つと、山はひとりでに低くなり、丸く広がっていきます。やわらかい物ほど、自分の重さに逆らえません。
  2. 次に、固めの粘土で同じ高さの山を作ります。こちらはいつまでも形を保ちます。固さが重さに勝っているからです。
  3. 地球儀があれば、直径をものさしではかり、エベレストの高さ(約8.8キロ)がその上で何ミリになるか計算してみましょう。

天体の岩は、何百万年という時間で見ると、はちみつのようにふるまいます。台所の数分間は、宇宙の長い時間を早回しで見ているようなものです。

もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「物理」「地学」で習う範囲
  • 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(惑星科学・地球物理学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:この現象には名前があります

中学高校式で確かめる:どれくらい大きいと丸くなるのか

天体の中心にかかる圧力が、岩の耐えられる強さを超えると、天体は丸くなります。この境目の半径そのものを計算してみます。

⓪ もとになる式
記号で書くとP = (2π ÷ 3) × G × ρ² × R²  丸くなる境目:P = σ
言葉で書くと中心の圧力 = 約2.09 × 万有引力定数 × 密度の2乗 × 半径の2乗。これが岩の強さと等しくなる半径が境目
どこから来る式か天体の各部分で「中心へ引く重力」と「押し返す圧力」がつり合う条件(静水圧平衡)を、密度が一様な球について中心まで足し合わせたもの
記号意味と単位
P天体の中心にかかる圧力(パスカル)
G万有引力定数(約 6.67×10⁻¹¹、単位はニュートン・メートル²毎キログラム²)
ρ天体の密度(キログラム毎立方メートル)
R天体の半径(メートル)
σ岩が長い時間耐えられる強さ(パスカル)

この式では、圧力が半径の2乗に比例します。直径が2倍になると中心の圧力が約4倍になる、と本文で書いたのはこのためです。

① もとになる数値
岩の天体の密度 ρ約 3000 キログラム毎立方メートル
万有引力定数 G約 6.67×10⁻¹¹
2π ÷ 3 の値約 2.09
岩が長い年月耐えられる強さ σ約 1.0×10⁸ パスカル(1億パスカル)とされる目安
② 計算してみる
密度の2乗3000 × 3000 = 9000000
万有引力定数をかける(6.67×10⁻¹¹) × 9000000 ≒ 0.0006
2.09 をかける0.0006 × 2.09 ≒ 0.00125
半径の2乗(強さ ÷ 上の値)(1.0×10⁸) ÷ 0.00125 = 8.0×10¹⁰
その平方根(境目の半径)約 28万メートル、つまり約280キロとされます
直径に直す(キロ)280 × 2 = 560

岩の天体は、直径がおよそ560キロを超えると、自分の重さで丸くなりはじめると見積もれます。直径約525キロのベスタがいびつで、約940キロのケレスが丸いこととよく合います。

③ 実感に直す
エベレストの高さ ÷ 地球の半径(キロ)8.8 ÷ 6378 ≒ 0.0014
直径30センチの地球儀(半径150ミリ)での高さ(ミリ)150 × 0.0014 ≒ 0.21
赤道と極の半径の差(キロ)6378 − 6357 = 21
その差の割合21 ÷ 6378 ≒ 0.0033
地球儀の直径300ミリでのふくらみ(ミリ)300 × 0.0033 ≒ 0.99

世界一高い山は地球儀の上で約0.2ミリ、赤道のふくらみは直径で約1ミリ。地球は、手でさわれば完全な球と区別できないほどなめらかです。

高校高校+なぜ「大きいほど」丸くなりやすいのか

高校高校物理の「万有引力」の単元では、球の外にある物体への引力は、球の全質量が中心に集まったときと同じになることを学びます。天体の表面の重力加速度は、密度が同じなら半径に比例します。重さを支える岩の柱の高さも半径に比例するので、中心の圧力は半径の2乗に比例します。

高校+地球がつぶれているのは、自転による遠心力のためです。赤道では遠心力が重力をわずかに打ち消すので、同じ体重計でも赤道では極より0.5パーセントほど軽く量れるとされています。地球が丸いことの確かめ方は古代からあり、月食のときに月に映る地球の影がいつも丸いことは、アリストテレスも根拠にあげていました。

大学静水圧平衡と、天体の形の分類

自分の重力と内部の圧力がつり合った状態を静水圧平衡と呼びます。2006年の国際天文学連合の決議では、惑星と準惑星の条件として「自己重力で静水圧平衡に近い(ほぼ丸い)形になっていること」が定められました。回転する流体の平衡形はマクローリン回転楕円体として解かれ、地球の扁平率(約298分の1)は、地球内部の密度分布を反映したクレローの定理で説明されます。岩が長い時間で流れる性質は、地球物理学では粘性流動・クリープとして扱われます。

📖 式の導出や、さらに先の内容:静水圧平衡(ウィキペディア)

研究まだはっきりとはわかっていないこと

つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。直径約560キロという境目も、岩の強さの見積もり次第で前後する目安です。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学理科3年「地球と宇宙」、理科1年「力のはたらき」重力は中心へ引くこと、太陽系の天体
高校物理「万有引力」、地学「地球の形と大きさ」中心の圧力と半径の関係、地球だ円体
高校+物理の発展(遠心力)回転による赤道のふくらみ
大学惑星科学・地球物理学静水圧平衡、マクローリン回転楕円体、クレローの定理
研究小天体探査・惑星内部構造丸くなる境目のばらつき、がれきの山の天体
―生活とのつながり地球儀、地図や位置測定の基準
参考・出典
  1. 国立天文台 編『理科年表』丸善出版(地球の赤道半径・極半径、太陽系天体の大きさ)
  2. ウィキペディア「静水圧平衡」
  3. 国際天文学連合(IAU)2006年総会決議 B5「惑星の定義」
  4. 宇宙航空研究開発機構(JAXA)小惑星探査機「はやぶさ」によるイトカワ観測の解説資料
  5. 高校物理・地学の検定教科書(万有引力、地球の形と大きさの単元)

※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。