空気に重さはあるの? 部屋の空気は何キロ?
― 6畳間の空気は、およそ28キロ。小学3年生くらいの子ども1人ぶんです
空気は「からっぽ」の代名詞のように使われます。けれど空気にも、ちゃんと重さがあります。1リットルではたった1.2グラムほどですが、部屋まるごとになると話が変わります。ふだん暮らしている6畳間の空気は、およそ28キロ。それでも重さを感じないのには、はっきりした理由があります。
引っ越しの日、家具をすべて運び出した部屋に立ちます。床も壁もがらんとして、部屋には何も残っていないように見えます。
でもその部屋には、まだ運び出していないものがあります。部屋いっぱいの空気です。もしこれを袋に詰めて体重計にのせられたら、針はどこまで振れるでしょうか。
「ほとんどゼロ」と答える人が多いはずです。実際に計算すると、答えは小さな子どもを抱き上げたくらいの重さになります。
重いのに気づかない理由は、2つだけ
空気1リットルは約1.2グラムで、水の800分の1ほどです。ところが部屋の空気は2万リットルをこえます。小さな重さも、数万回たし合わせれば何十キロにもなります。
空気は上からだけでなく、横からも下からも同じ強さで押してきます。体の中の空気や水も、同じ強さで押し返しています。押し合いがつり合っているので、重さとして感じないのです。
ここからは、まず部屋の空気の重さを実際に見積もります。そのあと、さらに大きな「頭の上の空気」の話に進みます。
部屋の空気は、広さに比例して重くなる
気温20℃くらいのふつうの部屋では、空気1立方メートル(1メートル角のさいころ1つぶん)の重さは約1.2キロとされています。あとは部屋の体積をかければ、空気の重さが出ます。
天井の高さを2.4メートルとすると、6畳間の体積は約23立方メートルです。空気の重さは約28キロになります。小学3年生の平均体重は30キロ弱とされているので、ほぼ同じ重さです。
図1のつまみで、部屋の広さを変えてみてください。20畳のリビングなら約93キロで、大人1人の体重を軽くこえます。学校の教室(縦横8メートル、高さ3メートル)なら約230キロになります。
頭の上には、10トンの空気がのっている
部屋の空気は、空気全体からみればほんの一部です。地面から空のてっぺんまで、空気は何十キロメートルも積み重なっています。地面1平方メートルの上にのる空気の柱の重さは、約10トンとされています。
図2の左がその空気の柱です。右の、高さ10メートルの水の柱とほぼ同じ重さです。この重さが地面を押す力が、天気予報でおなじみの「気圧」です。1気圧は、およそ1013ヘクトパスカルです。
それなら、なぜ私たちはつぶれないのでしょうか。理由は2つめのカードのとおりです。空気の押す力は、上からだけでなくあらゆる向きから同じ強さでかかります。そして体の中の水や空気も、同じ強さで外へ押し返しています。魚が水の重さを感じずに泳いでいるのと同じことです。
空気はあたたまるとふくらみ、同じ体積あたりの重さが減ります。1立方メートルあたり、0℃では約1.29キロ、35℃では約1.15キロとされています。同じ6畳間でも、真冬と真夏で空気が3キロほど入れかわっている計算です。熱気球が浮くのも、この差を使っています。
地球をおおう空気全体の重さは、およそ5000兆トンと見積もられています。とてつもない量ですが、地球そのものの重さとくらべると、100万分の1にも届きません。地球にとって空気は、りんごの皮よりずっと薄いうすい膜です。
まとめ
空気1リットルは約1.2グラムと軽いのですが、部屋の空気は数十キロ、頭の上の空気の柱は1平方メートルあたり約10トンにもなります。それでも重さを感じないのは、空気があらゆる向きから押し、体も同じ強さで押し返しているからです。
空気は軽いのではなく、つり合っているだけ。
何もない部屋にも、子ども1人ぶんの重さが満ちています。
水の中で同じことが起きると何が変わるのかは、深海の生き物は、なぜあの水圧でつぶれないの?で読めます。空に浮かぶ水の重さは、雲1つの重さは、どれくらいあるの?で計算しています。
- コップに水をふちまで入れ、はがきなどの厚紙をのせます。流し台の上で行ってください。
- 厚紙を手で押さえたままコップを逆さにし、そっと手を離します。厚紙は落ちず、水もこぼれません。
- 次にストローを水に入れ、上の口を指でふさいで持ち上げます。指を離すまで、水はストローの中にとどまります。
どちらも、下から押し上げる空気の力が水の重さより大きいからです。空気が「上からだけ押しているわけではない」ことが、目で見て分かります。
もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
- 中学中学校の理科で習う範囲
- 高校高校の「物理」「化学」で習う範囲
- 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
- 大学高校では習わない、大学の専門科目(気象力学・大気物理学)の内容
- 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話
中学用語:この現象には名前があります
- 密度:同じ体積あたりの重さ(質量)。空気は1立方メートルあたり約1.2キロ、水は約1000キロです。
- 大気圧(気圧):空気の重さが、面を押す力の強さ。地上ではおよそ1013ヘクトパスカルです。
- 圧力はあらゆる向きにはたらく:空気や水の中では、押す力が上下左右どの向きにも同じ強さでかかります。
中学高校式で確かめる:6畳間の空気は何キロか
重さは「密度 × 体積」で求まります。部屋の体積を出して、空気の密度をかけるだけです。最後に、頭の上の空気の柱の重さも気圧から逆算します。
| 記号で書くと | m = ρ × V (柱の重さは m = p × A ÷ g) |
| 言葉で書くと | 空気の質量 = 空気の密度 × 部屋の体積 |
| どこから来る式か | 密度の定義そのもの(体積あたりの質量)。柱の式は、空気の重さと地面を押す力(気圧 × 面積)のつり合いから来ます。 |
| m | 空気の質量(kg) |
| ρ | 空気の密度(kg/m³)。20℃・1気圧で約1.2 |
| V | 部屋の体積(m³) |
| p | 地上の気圧(Pa)。約101300 |
| g | 重力加速度(m/s²)。約9.8 |
| 1畳の広さ(不動産の表示ルールでの目安) | 1.62 m² |
| 天井の高さ | 2.4 m |
| 空気の密度(20℃・1気圧) | 約1.2 kg/m³ |
| 地上の気圧 | 約101300 Pa |
| 6畳の床面積 | 6 × 1.62 = 9.72 m² |
| 部屋の体積 | 9.72 × 2.4 ≒ 23.3 m³ |
| 空気の質量(主題の量) | 23.3 × 1.2 ≒ 28 kg |
| 教室の体積(8 m × 8 m の床) | 64 × 3 = 192 m³ |
| 教室の空気の質量 | 192 × 1.2 ≒ 230 kg |
| 1 m² にのる空気の柱 | 101300 ÷ 9.8 ≒ 10337 kg |
6畳間で約28キロ、教室で約230キロ、そして1メートル四方の地面には約10トンの空気がのっています。部屋の空気は、頭の上の柱のごく下の端を切り取ったものにすぎません。
高校高校+空気の密度は、どうやって決まるのか
高校空気の密度は、高校化学で習う「理想気体の状態方程式」から出せます。圧力が高いほど、温度が低いほど、密度は大きくなります。暑い日の空気が軽く、寒い日の空気が重いのはこのためです。
高校+1643年、トリチェリは水銀を満たした管を逆さに立て、水銀が約76センチで止まることを示しました。これが大気圧の発見とされています。水銀は水の約13.6倍重いので、水なら約10メートルの柱に当たります。図2の水の柱と同じ数字です。
大学上空ほど空気が薄くなるしくみ
空気の柱は、下の層ほど上の重さを支えて押し縮められています。この関係を「静水圧平衡」と呼びます。温度が一定と仮定すると、気圧は高さとともに指数関数的に下がり、およそ8キロメートル上がるごとに約3分の1になります。この長さを「スケールハイト」と呼びます。図2の柱が上ほど薄いのはこのためです。
📖 式の導出や、さらに先の内容:大気圧(ウィキペディア) / エヴァンジェリスタ・トリチェリ(ウィキペディア)
研究まだはっきりとはわかっていないこと
- 大気全体の重さの細かな変化 大気の総質量は、含まれる水蒸気の量によって季節ごとにわずかに変わるとされます。その変化を精密に測る研究が続いています。
- 宇宙へ逃げていく空気 大気のいちばん上では、軽い水素などが少しずつ宇宙へ逃げています。その量が太陽の活動でどう変わるかは、観測が続けられています。
- 室内の空気と体調 部屋の空気の「重さ」より、二酸化炭素の濃度や湿度が人の集中力にどう影響するかが調べられています。結論はまだ出そろっていません。
つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。数値は20℃・1気圧を前提にした目安で、天気や標高によって数%変わります。
教科書とのつながり(レベル別)
| レベル | 科目・単元 | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 中学 | 理科1年「密度」、2年「大気圧」 | 部屋の空気の重さ、気圧の正体 |
| 高校 | 化学「気体の状態方程式」 | 暑い日と寒い日の密度の差 |
| 高校+ | 物理「流体の圧力」(発展) | トリチェリの実験、水10メートルとの対応 |
| 大学 | 気象力学・大気物理学 | 静水圧平衡、スケールハイト |
| 研究 | 大気科学・室内環境学 | 大気総質量の変動、大気の散逸 |
| ― | 生活とのつながり | 天気予報の気圧、熱気球、コップの実験 |
- ウィキペディア「大気圧」
- 国立天文台 編『理科年表』丸善出版(空気の密度・標準大気)
- 小倉義光『一般気象学』東京大学出版会
- Trenberth, K. E. & Smith, L. (2005) The Mass of the Atmosphere: A Constraint on Global Analyses. Journal of Climate, 18, 864–875.
- ウィキペディア「エヴァンジェリスタ・トリチェリ」
※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。コップの実験は流し台の上で行い、割れにくいコップを使ってください。