日常のふしぎ 流体 予備知識なしでOK 読了 約6分

空気に重さはあるの? 部屋の空気は何キロ?
― 6畳間の空気は、およそ28キロ。小学3年生くらいの子ども1人ぶんです

空気は「からっぽ」の代名詞のように使われます。けれど空気にも、ちゃんと重さがあります。1リットルではたった1.2グラムほどですが、部屋まるごとになると話が変わります。ふだん暮らしている6畳間の空気は、およそ28キロ。それでも重さを感じないのには、はっきりした理由があります。

公開:2026.10.10 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、こんな場面を思い浮かべてください

引っ越しの日、家具をすべて運び出した部屋に立ちます。床も壁もがらんとして、部屋には何も残っていないように見えます。

でもその部屋には、まだ運び出していないものがあります。部屋いっぱいの空気です。もしこれを袋に詰めて体重計にのせられたら、針はどこまで振れるでしょうか。

「ほとんどゼロ」と答える人が多いはずです。実際に計算すると、答えは小さな子どもを抱き上げたくらいの重さになります。

重いのに気づかない理由は、2つだけ

1
1つぶんは軽いが、量がけた違いに多い

空気1リットルは約1.2グラムで、水の800分の1ほどです。ところが部屋の空気は2万リットルをこえます。小さな重さも、数万回たし合わせれば何十キロにもなります。

2
私たちは空気の「中」にいる

空気は上からだけでなく、横からも下からも同じ強さで押してきます。体の中の空気や水も、同じ強さで押し返しています。押し合いがつり合っているので、重さとして感じないのです。

ここからは、まず部屋の空気の重さを実際に見積もります。そのあと、さらに大きな「頭の上の空気」の話に進みます。

部屋の空気は、広さに比例して重くなる

気温20℃くらいのふつうの部屋では、空気1立方メートル(1メートル角のさいころ1つぶん)の重さは約1.2キロとされています。あとは部屋の体積をかければ、空気の重さが出ます。

天井の高さを2.4メートルとすると、6畳間の体積は約23立方メートルです。空気の重さは約28キロになります。小学3年生の平均体重は30キロ弱とされているので、ほぼ同じ重さです。

図1のつまみで、部屋の広さを変えてみてください。20畳のリビングなら約93キロで、大人1人の体重を軽くこえます。学校の教室(縦横8メートル、高さ3メートル)なら約230キロになります。

部屋の空気の重さ(天井の高さ 2.4 m、気温20℃) 米袋1つ 10 kg 大人1人 60 kg 0 25 50 75 100 125 150 kg 6 畳の部屋の空気は、約 28 kg 左の青い棒が空気の重さ。点線は重さの目安
つまみを動かすと、部屋の空気の重さが変わります
図1:部屋の空気の重さ。左から伸びる棒が空気の重さで、縦の点線が米袋1つと大人1人の目安です。つまみで畳の数を変えると、6畳で約28キロ、20畳で約93キロと、広さに比例して重くなるのが分かります。

頭の上には、10トンの空気がのっている

部屋の空気は、空気全体からみればほんの一部です。地面から空のてっぺんまで、空気は何十キロメートルも積み重なっています。地面1平方メートルの上にのる空気の柱の重さは、約10トンとされています。

図2の左がその空気の柱です。右の、高さ10メートルの水の柱とほぼ同じ重さです。この重さが地面を押す力が、天気予報でおなじみの「気圧」です。1気圧は、およそ1013ヘクトパスカルです。

それなら、なぜ私たちはつぶれないのでしょうか。理由は2つめのカードのとおりです。空気の押す力は、上からだけでなくあらゆる向きから同じ強さでかかります。そして体の中の水や空気も、同じ強さで外へ押し返しています。魚が水の重さを感じずに泳いでいるのと同じことです。

空のてっぺんまで続く 左:空気の柱 約10トン (高さ数十キロ以上) 右:水の柱 約10トン 高さ約10 m = 底はどちらも1 m 四方 (高さの縮尺は実際と違います)
図2:地面1メートル四方にのる重さの比較。左の、上に行くほど薄くなる空気の柱と、右の高さ約10メートルの水の柱は、どちらも約10トンです。空気は薄いぶん、ずっと高く積み重なっています。
💡 暑い日の部屋の空気は、少しだけ軽い

空気はあたたまるとふくらみ、同じ体積あたりの重さが減ります。1立方メートルあたり、0℃では約1.29キロ、35℃では約1.15キロとされています。同じ6畳間でも、真冬と真夏で空気が3キロほど入れかわっている計算です。熱気球が浮くのも、この差を使っています。

💡 地球の空気をぜんぶ集めると

地球をおおう空気全体の重さは、およそ5000兆トンと見積もられています。とてつもない量ですが、地球そのものの重さとくらべると、100万分の1にも届きません。地球にとって空気は、りんごの皮よりずっと薄いうすい膜です。

まとめ

空気1リットルは約1.2グラムと軽いのですが、部屋の空気は数十キロ、頭の上の空気の柱は1平方メートルあたり約10トンにもなります。それでも重さを感じないのは、空気があらゆる向きから押し、体も同じ強さで押し返しているからです。

空気は軽いのではなく、つり合っているだけ。
何もない部屋にも、子ども1人ぶんの重さが満ちています。

水の中で同じことが起きると何が変わるのかは、深海の生き物は、なぜあの水圧でつぶれないの?で読めます。空に浮かぶ水の重さは、雲1つの重さは、どれくらいあるの?で計算しています。

🧪 空気が押す力を、台所で確かめてみよう
  1. コップに水をふちまで入れ、はがきなどの厚紙をのせます。流し台の上で行ってください。
  2. 厚紙を手で押さえたままコップを逆さにし、そっと手を離します。厚紙は落ちず、水もこぼれません。
  3. 次にストローを水に入れ、上の口を指でふさいで持ち上げます。指を離すまで、水はストローの中にとどまります。

どちらも、下から押し上げる空気の力が水の重さより大きいからです。空気が「上からだけ押しているわけではない」ことが、目で見て分かります。

もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「物理」「化学」で習う範囲
  • 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(気象力学・大気物理学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:この現象には名前があります

中学高校式で確かめる:6畳間の空気は何キロか

重さは「密度 × 体積」で求まります。部屋の体積を出して、空気の密度をかけるだけです。最後に、頭の上の空気の柱の重さも気圧から逆算します。

⓪ もとになる式
記号で書くとm = ρ × V (柱の重さは m = p × A ÷ g)
言葉で書くと空気の質量 = 空気の密度 × 部屋の体積
どこから来る式か密度の定義そのもの(体積あたりの質量)。柱の式は、空気の重さと地面を押す力(気圧 × 面積)のつり合いから来ます。
m空気の質量(kg)
ρ空気の密度(kg/m³)。20℃・1気圧で約1.2
V部屋の体積(m³)
p地上の気圧(Pa)。約101300
g重力加速度(m/s²)。約9.8
① もとになる数値
1畳の広さ(不動産の表示ルールでの目安)1.62 m²
天井の高さ2.4 m
空気の密度(20℃・1気圧)約1.2 kg/m³
地上の気圧約101300 Pa
② 計算してみる
6畳の床面積6 × 1.62 = 9.72 m²
部屋の体積9.72 × 2.4 ≒ 23.3 m³
空気の質量(主題の量)23.3 × 1.2 ≒ 28 kg
教室の体積(8 m × 8 m の床)64 × 3 = 192 m³
教室の空気の質量192 × 1.2 ≒ 230 kg
1 m² にのる空気の柱101300 ÷ 9.8 ≒ 10337 kg

6畳間で約28キロ、教室で約230キロ、そして1メートル四方の地面には約10トンの空気がのっています。部屋の空気は、頭の上の柱のごく下の端を切り取ったものにすぎません。

高校高校+空気の密度は、どうやって決まるのか

高校空気の密度は、高校化学で習う「理想気体の状態方程式」から出せます。圧力が高いほど、温度が低いほど、密度は大きくなります。暑い日の空気が軽く、寒い日の空気が重いのはこのためです。

高校+1643年、トリチェリは水銀を満たした管を逆さに立て、水銀が約76センチで止まることを示しました。これが大気圧の発見とされています。水銀は水の約13.6倍重いので、水なら約10メートルの柱に当たります。図2の水の柱と同じ数字です。

大学上空ほど空気が薄くなるしくみ

空気の柱は、下の層ほど上の重さを支えて押し縮められています。この関係を「静水圧平衡」と呼びます。温度が一定と仮定すると、気圧は高さとともに指数関数的に下がり、およそ8キロメートル上がるごとに約3分の1になります。この長さを「スケールハイト」と呼びます。図2の柱が上ほど薄いのはこのためです。

📖 式の導出や、さらに先の内容:大気圧(ウィキペディア) / エヴァンジェリスタ・トリチェリ(ウィキペディア)

研究まだはっきりとはわかっていないこと

つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。数値は20℃・1気圧を前提にした目安で、天気や標高によって数%変わります。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学理科1年「密度」、2年「大気圧」部屋の空気の重さ、気圧の正体
高校化学「気体の状態方程式」暑い日と寒い日の密度の差
高校+物理「流体の圧力」(発展)トリチェリの実験、水10メートルとの対応
大学気象力学・大気物理学静水圧平衡、スケールハイト
研究大気科学・室内環境学大気総質量の変動、大気の散逸
―生活とのつながり天気予報の気圧、熱気球、コップの実験
参考・出典
  1. ウィキペディア「大気圧」
  2. 国立天文台 編『理科年表』丸善出版(空気の密度・標準大気)
  3. 小倉義光『一般気象学』東京大学出版会
  4. Trenberth, K. E. & Smith, L. (2005) The Mass of the Atmosphere: A Constraint on Global Analyses. Journal of Climate, 18, 864–875.
  5. ウィキペディア「エヴァンジェリスタ・トリチェリ」

※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。コップの実験は流し台の上で行い、割れにくいコップを使ってください。