自然のふしぎ 気象 予備知識なしでOK 読了 約7分

雷の音は、なぜ「バリバリッ」と「ゴロゴロ」があるの?
― 音は一瞬で生まれ、何秒もかけて耳に届きます

雷の音は、稲妻が光ったその一瞬に、通り道の全体から同時に生まれています。それなのに、音は何秒も鳴り続けます。近いと鋭く裂けるように聞こえ、遠いと低くうなるように聞こえます。違いをつくっているのは雷そのものではなく、あなたの耳までの「道のり」です。

公開:2026.10.26 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、こんな場面を思い浮かべてください

夏の夕方、窓の外がピカッと光ります。1、2、3…と数えていると、やがて「ゴロゴロゴロ…」と低い音が届きます。音はなかなか終わらず、5秒、10秒と続きます。

別の日、すぐ近くに落ちたときは違いました。光とほぼ同時に「バリバリッ!」と、空が裂けるような鋭い音がしました。

同じ雷なのに、なぜこんなに聞こえ方が違うのでしょう。そもそも稲妻は一瞬なのに、なぜ音は長く続くのでしょう。

理由は2つだけ

1
通り道のあちこちから、届く時刻がずれる

稲妻の通り道は、数kmもの長さがあります。音はその全体から同時に出ますが、耳までの距離はそれぞれ違います。近い所の音が先に、遠い所の音があとから届くので、音が長くのびます。

2
遠くから来る音ほど、高い音が先に弱まる

空気は、高い音ほどよく吸いこんで弱めます。遠くの雷では、鋭さをつくる高い音が途中で失われます。耳に残るのは低い音だけになり、「ゴロゴロ」と聞こえます。

つまり耳が聞いているのは、雷が出した音そのものではありません。道のりによって引きのばされ、けずられたあとの音です。1つずつ見ていきましょう。

一瞬の音が、なぜ何秒も続くの?

稲妻が光るとき、通り道の空気は一瞬で非常に高い温度に熱せられます。熱せられた空気は急に膨らみ、まわりの空気を押しのけます。この押しのけた揺れが、雷の音の正体です。

ここで大事なのは、音が出るのは通り道の全体からほぼ同時だという点です。稲妻は地面から雲の中まで、縦に数kmのびています。地面に近い所はあなたに近く、雲の中の所はあなたから遠くにあります。

音の速さは、1秒に約340メートルです。光に比べればとても遅いので、距離の違いがそのまま「届く時刻の違い」になります。図1を見てください。地面に近い所の音が最初に届き、てっぺんの音が最後に届きます。そのあいだ、途中の所からの音が次々に届き続けます。

5 km 10 km 15 km あなた 雷が落ちた所まで 3.0 km(通り道の高さは 4 km とする) 最初の音が届くまで 8.8 秒 ゴロゴロが鳴り続ける時間 5.9 秒 実線:いちばん近い根もと 点線:いちばん遠いてっぺん
つまみを動かすと、最初の音が届くまでの時間と、鳴り続ける時間が変わります
図1:横から見た雷と、あなたの耳までの道のり。根もとへの実線より、てっぺんへの点線のほうが長いぶん、その音は遅れて届きます。つまみで雷までの距離を変えると、近い雷ほど2本の線の長さの差が大きく、音が長く鳴り続けることが分かります。この図は縦にまっすぐのびる部分だけを考えた単純なものです。

図1で雷を近づけると、2本の線の長さの差が広がります。近くに落ちた雷は、真上に近いてっぺんと足もとの根もとで距離が大きく違うからです。逆に遠い雷では、この差は小さくなります。

ただし実際の稲妻は、縦の1本だけではありません。雲の中で横に何kmも枝分かれし、その枝からも音が出ます。山や建物に跳ね返った音も遅れて重なります。そのため遠い雷でも、ゴロゴロは長く続くことが多いのです。

遠い雷は、なぜ低い「ゴロゴロ」になるの?

雷が出す音には、高い音から低い音までがまざっています。近くで聞くと、高い音が鋭さをつくり、「バリバリッ」「ピシャッ」と裂けるように聞こえます。

ところが空気は、音を少しずつ吸いこんで熱に変えています。しかも高い音ほど、吸いこまれ方が大きいのです。数kmを旅するうちに高い音が先に弱まり、低い音だけが残ります。図2を見てください。左の近い雷は、とがった鋭い波です。右の遠い雷は、角が取れたゆるやかな波になっています。

近くの雷(1 km ほど) 遠くの雷(10 km ほど) 鋭い一撃 → 「バリバリッ」 なめらかなうねり → 「ゴロゴロ」 時間 時間 空気は高い音ほどよく吸いこむので、遠くまで旅するうちに角が取れていく
図2:耳に届く音の波の形(ようすを示した模式図)。左の近い雷は、最初にとがった大きな山があり、そのあとも細かくぎざぎざした揺れが続きます。右の遠い雷は、細かい揺れが消え、ゆるやかなうねりだけが長く続きます。

もう1つ、耳のほうの事情もあります。人の耳は、とても低い音を感じにくいつくりです。雷の音には、耳に聞こえないほど低い音もふくまれているとされています。遠い雷が「音は小さいのに、窓がビリビリ揺れる」のは、このためと考えられています。

💡 光ってから何秒?で、距離が分かる

光はほぼ一瞬で届き、音は1秒に約340メートル進みます。光ってから音が聞こえるまでの秒数を数え、3で割ると、おおよその距離(km)になります。9秒なら約3kmです。音が聞こえない遠くの稲光は、音が届く前に弱まったり、上空へ曲がって逃げたりしているためとされています。

じゃあ、どうすればいいの?

雷の音が聞こえるということは、その雷が音の届く範囲、つまり十数km以内にあるということです。気象庁も、雷鳴が聞こえたら落雷が差し迫っているとして、すぐに安全な場所へ避難するよう呼びかけています。「まだ遠いゴロゴロだから大丈夫」とは考えないでください。

✅ 子どもにも伝えたい3つのこと
  1. ゴロゴロが聞こえたら、すぐ建物か車の中へ避難する屋根のない場所や広い野原には、とどまらない。
  2. 高い木や電柱には近づかない木の真下で雨宿りをしない。幹や枝から4m以上離れる。
  3. 最後の音から30分ほどは外に出ない音が遠ざかっても、すぐには安心しない。
⚠ 雷に打たれた人がいたら

すぐに119番に通報してください。雷に打たれた人の体に電気は残っていないので、触れても感電しません。呼吸がなければ、指示に従って胸骨圧迫を行い、近くにAEDがあれば使います。救助する人自身も、まだ雷が続いているときは安全な場所を確保してください。

まとめ

雷の音は、稲妻が光った一瞬に通り道全体から生まれます。何秒も鳴り続けるのは、通り道の各所から耳までの距離が違い、届く時刻がずれるからです。遠い雷が低く聞こえるのは、高い音が空気に吸いこまれ、途中で先に弱まるからです。

ゴロゴロの長さは、稲妻の長さ。
音の低さは、そこまでの遠さです。

光ってから音までの秒数で距離を測るしくみは「雷1回のエネルギーで、家の電気はどれくらいまかなえるの?」で、夜に遠くの音がよく届く理由は「なぜ夜は、遠くの音がよく聞こえるの?」で紹介しています。雷から身を守る方法は「雷のとき、木の下に隠れてはいけないのはなぜ?」もあわせてどうぞ。

🧪 安全な建物の中から、雷の音を聞きくらべてみよう
  1. 雷が鳴っている日、必ず建物の中にいる状態で、光ってから音が聞こえ始めるまでの秒数を数えます。
  2. 続けて、音が鳴り始めてから聞こえなくなるまでの秒数も数え、メモしておきます。
  3. 何回か記録し、「始まるまでの秒数が短い(近い)雷」と「長い(遠い)雷」で、音の鋭さや低さがどう違うかをくらべます。

観察は窓から離れた室内で行い、外には出ないでください。近い雷ほど最初に鋭い音が混じり、遠い雷ほど低いうなりだけになることに気づくはずです。

もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「物理基礎・物理」で習う範囲
  • 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(音響学・大気物理学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:この現象には名前があります

中学高校式で確かめる:ゴロゴロは何秒続く?

図1と同じ条件で、雷が3km先に落ち、通り道が真上へ4kmのびているとします。いちばん近い根もとと、いちばん遠いてっぺんから、音が届く時刻の差を計算します。

⓪ もとになる式
記号で書くとT = ( √( d² + h² ) − d ) ÷ v
言葉で書くと鳴り続ける時間 =(てっぺんまでの距離 − 根もとまでの距離)÷ 音の速さ
どこから来る式か音は一定の速さで進むので「かかる時間 = 距離 ÷ 速さ」。通り道の全体で同時に音が出るので、届く時刻の差は距離の差だけで決まります。てっぺんまでの距離は三平方の定理で求めます。
記号意味と単位
T音が鳴り続ける時間(秒)
d雷が落ちた所(根もと)までの水平の距離(m)
h通り道の縦の高さ(m)
v音の速さ(m/秒)
① もとになる数値
雷が落ちた所までの距離 d3 km(3000 m)
通り道の高さ h(雲の中の、電気がたまった所まで)4 km と仮定(実際は数km程度とされます)
気温15℃での音の速さ v秒速 約340 m
② 計算してみる
音の速さを気温から求める(0.6 × 気温)0.6 × 15 = 9
0℃での速さに足す331.5 + 9 = 340.5
距離の2乗3 × 3 = 9
高さの2乗4 × 4 = 16
2つを足す9 + 16 = 25
てっぺんまでの距離25 の平方根で 5 km(5000 m)
最初の音(根もと)が届くまで3000 ÷ 340 ≒ 8.8 秒
最後の音(てっぺん)が届くまで5000 ÷ 340 ≒ 14.7 秒
鳴り続ける時間 T14.7 − 8.8 = 5.9 秒

稲妻は一瞬なのに、縦の4kmぶんだけでも音は約6秒にのびます。雲の中で横に10km以上枝分かれした稲妻なら、ゴロゴロは数十秒続くこともある計算です。

高校高校+音の速さと、音が曲がるしくみ

高校空気中の音速は、およそ「331.5 + 0.6 × 気温(℃)」メートル毎秒で表されます。音の速さは空気の温度で決まり、温かい空気ほど速く伝わります。

高校+昼間は地面の近くほど暖かいので、音は上に曲がって空へ逃げていきます。これを音の屈折といいます。雷鳴がおおむね十数kmより先で聞こえにくくなるのは、吸収に加えて、この屈折で地上に音が届かない「音の影」ができるためとされています。

大学衝撃波から音へ、そして大気による吸収

稲妻の通り道は、数マイクロ秒のうちに約3万℃まで熱せられるとされ、その膨張は最初衝撃波として広がります。衝撃波は数mほど進むうちに弱まり、ふつうの音波に変わります。その後の伝わり方では、空気の粘性と熱伝導による古典吸収と、酸素や窒素の分子の振動緩和による吸収が効きます。吸収係数はおおむね周波数の2乗に比例して大きくなるため、遠い雷鳴ほど低い成分だけが残ります。通り道の形を、雷鳴の届く時刻の分布から逆算する研究もあります。

📖 式の導出や、さらに先の内容:雷鳴(ウィキペディア) / 音速(ウィキペディア)

研究まだはっきりとはわかっていないこと

つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。ゴロゴロの長さと低さの大筋は確かですが、細かな音色の理由には、まだ答えの出ていない部分が残っています。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学中1 理科「音の性質」光ってから音までの秒数で距離を出す
高校物理基礎「音波」音速と気温の関係、時刻の差の計算
高校+物理「波の屈折」雷鳴が届かなくなる「音の影」
大学音響学・大気物理学衝撃波、古典吸収と振動緩和
研究大気電気学低い音の発生のしくみ、音による通り道の再現
―生活とのつながり雷鳴が聞こえたらすぐ避難する理由
参考・出典
  1. 気象庁「雷の観測と統計」
  2. ウィキペディア「雷鳴」
  3. Rakov, V. A. & Uman, M. A. "Lightning: Physics and Effects", Cambridge University Press, 2003
  4. Few, A. A. "Power spectrum of thunder", Journal of Geophysical Research, 1969
  5. 国立天文台 編『理科年表』丸善出版(音速の値)

※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。雷の際は、気象庁の情報や消防・自治体等の指示に従って行動してください。