地球に届く太陽の光は、どれくらいのエネルギーなの?
― 1時間ぶんの光で、人類が1年に使う量に届きます
日なたに出ると、顔がじんわり温かくなります。あの温かさを数字にしてみると、思った以上に大きな量です。晴れた日の昼なら、地面1平方メートルに届く光だけで電気ケトル1台ぶん。それを地球全体で足し合わせると、たった1時間で、人類が1年間に使うエネルギーとほぼ同じになります。
秋晴れの昼休み、ベンチに座って日なたぼっこをしています。風は少し冷たいのに、日が当たる背中だけはぽかぽか温かい。
雲が太陽の前を横切ると、とたんに肌寒くなります。雲が通り過ぎると、また温かさが戻ってきます。
この「ぽかぽか」の正体は、1億5000万kmの旅をしてきた光のエネルギーです。では、その量は、いったいどれくらいなのでしょうか。
けた外れの量になる理由は、2つだけ
太陽が高い晴れた昼、地面1平方メートルに届く光は、およそ1000ワットとされています。電気ケトルやドライヤー1台ぶんの勢いです。
地球が光を受け止める面積は、およそ1億2700万平方キロメートル。その全体に、昼も夜も休みなく光が降り注いでいます。
「1平方メートルあたりの量」と「受け止める面積」。この2つをかけ合わせるだけで、驚くほど大きな数字が出てきます。順に見ていきましょう。
1平方メートルに届く光は、電気ケトル1台ぶん
地球の空気の外側で、太陽にまっすぐ向けた1平方メートルの板には、毎秒およそ1361ジュールの光が届くとされています。これを太陽定数と呼びます。1秒あたり1361ジュールなので、1361ワットです。
空気の中を通るあいだに、光の一部ははね返されたり、吸い込まれたりします。そのため、晴れた日に太陽が真上近くにあるとき、地面に届くのは1平方メートルあたりおよそ1000ワットになります。太陽光パネルの性能も、この「1000ワット」を基準にして測られています。
ただし、これは太陽が高いときの話です。図1を見てください。太陽が低くなると、同じ太さの光の束が、地面の上で長く引き伸ばされます。光の量は同じなのに、広い面積に薄く広がるので、1平方メートルあたりの量は減ります。
東京の正午の太陽の高さは、夏至のころでおよそ78度、冬至のころでおよそ31度です。地面1平方メートルあたりで比べると、冬の昼の光は夏のおよそ半分しかありません。冬が寒いのは、太陽が遠くなるからではありません。光が斜めに当たって、薄く広がってしまうからです。
地球全体では、1時間で人類の1年ぶん
次に、地球全体が受け止める光を考えます。太陽はとても遠いので、地球に届く光はほぼ平行に並んでやってきます。図2を見てください。地球は丸い球ですが、光から見ると、地球と同じ半径の「円盤」が1枚、光をさえぎっているのと同じです。
この円盤の面積は、およそ1億2700万平方キロメートル。そこに、空気の外側で1平方メートルあたり1361ワットの光が当たり続けます。かけ合わせると、地球が受け止める光はおよそ1億7000万ギガワット。大きな発電所1基を1ギガワットとすると、その1億7000万基ぶんです。
1時間ぶんの光を集めると、およそ620エクサジュールになります(エクサは10の18乗)。世界じゅうの人が1年間に使うエネルギーは、600エクサジュール前後とされています。つまり、地球に届く1時間ぶんの太陽の光が、人類の1年ぶんのエネルギーとほぼ同じなのです。
理由は「薄さ」です。光はとても広い面積に、うすく広がって届きます。地球全体で昼と夜、赤道と極地をならすと、空気の外側で1平方メートルあたりおよそ340ワット(1361ワットの4分の1)です。さらにその約3割は、雲や氷にはね返されて宇宙へ戻るとされています。植物でさえ、届いた光のうち栄養に変えられるのは1パーセント前後とされています。集めるのが大変なのです。
まとめ
地面1平方メートルに届く太陽の光は、晴れた昼なら電気ケトル1台ぶんです。地球はそれを、1億2700万平方キロメートルの円盤で休みなく受け止めています。その結果、1時間ぶんの光だけで、人類が1年間に使うエネルギーに届きます。一方で、光は斜めに当たると薄く広がり、季節の寒暖もそこから生まれます。
太陽の光は、量では足りすぎている。
難しいのは、うすく広がった光を集めることのほうです。
日なたの温度がどれほど上がるかは「アスファルトはなぜ60℃を超えるの?」と「日なたに停めた車の中は、なぜ暑くなるの?」で、太陽の傾きと季節の関係は「季節のしくみ」で詳しく紹介しています。
- 晴れた日の日なたで、手のひらを太陽にまっすぐ向けて、30秒ほど温かさを感じます。
- 次に、手のひらを大きく傾けて、光が斜めにかすめるように当てます。さっきより温かさが弱く感じられるはずです。
- 長さ1メートルの棒を地面に立てて、影の長さを測ります。影が棒と同じ長さなら太陽の高さは45度、影が短いほど太陽は高い位置にあります。
太陽を直接見ないでください。目を傷める危険があります。影の長さを夏と冬で比べると、図1の違いを自分の目で確かめられます。
もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
- 中学中学校の理科で習う範囲
- 高校高校の「物理」「地学」で習う範囲
- 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
- 大学高校では習わない、大学の専門科目(気象学・大気放射学)の内容
- 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話
中学用語:この現象には名前があります
- 太陽定数:地球の空気の外側で、太陽に垂直な面1平方メートルが1秒間に受ける光のエネルギー。およそ1361ワット毎平方メートルとされています。
- 日射(太陽放射):太陽から届く光のエネルギーのこと。地面で測った値は「日射量」と呼ばれ、気象台でも観測されています。
- 南中高度:太陽が1日のうちでいちばん高くなるときの、地平線からの角度。季節によって変わります。
中学高校式で確かめる:地球が1時間に受け取る光のエネルギー
地球が受け止める光の総量を、円盤の面積と太陽定数から求めます。記号の意味は次のとおりです。
| 記号 | 意味と単位 |
| P | 地球が受け止める光の仕事率(ワット) |
| S | 太陽定数(ワット毎平方メートル) |
| R | 地球の半径(メートル) |
| E | 時間 t のあいだに受け取るエネルギー(ジュール) |
| 記号で書くと | P = S × π × R² 、 E = P × t |
| 言葉で書くと | 受け止める光 = 1平方メートルあたりの光 × 円盤の面積(円周率 × 半径 × 半径)、エネルギー = 光の勢い × 時間 |
| どこから来る式か | 平行な光をさえぎる面積は、球の「影」の円の面積に等しい(図2)。エネルギーは仕事率に時間をかけたもの、という定義から来ています。 |
| 太陽定数 S | 1361 ワット毎平方メートル |
| 地球の半径 R | 6370 キロメートル |
| 1平方キロメートル | 1000000 平方メートル |
| 1時間 | 3600 秒 |
| 世界の1年間のエネルギー消費 | 600エクサジュール前後とされる |
| 半径 × 半径(平方キロメートル) | 6370 × 6370 = 40576900 |
| 円盤の面積(平方キロメートル) | 40576900 × 3.14 ≒ 127000000 |
| 1平方キロメートルあたりの光(ワット) | 1361 × 1000000 = 1361000000 |
| 同じ量をギガワットで表す | 1361000000 ÷ 1000000000 ≒ 1.36 |
| 地球全体の光 P(ギガワット) | 127000000 × 1.36 ≒ 172700000 |
| 1時間ぶん(ギガジュール) | 172700000 × 3600 ≒ 621700000000 |
| エクサジュールに直す | 621700000000 ÷ 1000000000 ≒ 622 |
地球が1時間に受け取る光は約622エクサジュール。人類の1年間の消費(600エクサジュール前後)とほぼ同じです。
| 畳1枚(約1.6平方メートル)に届く晴れた昼の光(ワット) | 1000 × 1.6 = 1600 |
| 冬至の正午の東京では(太陽の高さ31度の正弦はおよそ0.52とされる) | 1000 × 0.52 = 520 |
畳1枚の日なたには、電気ケトル1台ぶんを少し上回る光が届いています。冬至の昼には、同じ地面1平方メートルあたりの光が約半分になります(図1と同じ単純化した計算です)。
高校高校+傾きと、地球全体の平均
高校光が地面に斜めに当たると、地面1平方メートルあたりの量は「太陽の高さの正弦」の割合に減ります。図1の式(1000ワット × 正弦)がこれです。季節によって太陽の高さが変わることが、夏と冬の気温差のおもな原因です。
高校+球の表面積は円盤の面積の4倍なので、地球全体でならした光の量は太陽定数の4分の1、約340ワット毎平方メートルになります。このうち約3割(アルベド)がはね返され、残りが地球を温めます。この収支から、地球の「放射平衡温度」がおよそマイナス18℃と求められます。実際の平均気温が約15℃なのは、温室効果によるものです。
大学大気を通る道のりと、エアマス
実際には、太陽が低いほど光は空気の層を斜めに長く通り、散乱や吸収で弱まります。この道のりの長さを、真上から来るときを1として表したものを「エアマス」と呼びます。光が空気を通るときの弱まり方は、ランベルト・ベールの法則で表されます。図1の計算は、この効果を省いた単純化したものです。地球全体の光の出入りは「地球のエネルギー収支」として、大気放射学で扱われます。
📖 式の導出や、さらに先の内容:太陽定数(ウィキペディア) / ランベルト・ベールの法則(ウィキペディア)
研究まだはっきりとはわかっていないこと
- 太陽定数の正確な値 人工衛星の観測で、2000年代に約1365から約1361ワットへと見直されました。測定器の違いによるずれの検証は今も続いています。
- 太陽の明るさの長期変化 太陽の明るさは約11年の周期でわずかに変わりますが、数百年単位の変化の大きさは、はっきりしていません。
- 雲がはね返す光の量 地球が光を何割はね返すかは雲に大きく左右され、温暖化で雲がどう変わるかは、気候予測の大きな不確かさの一つとされています。
つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。数値は、しくみを理解するための目安として受け取ってください。
教科書とのつながり(レベル別)
| レベル | 科目・単元 | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 中学 | 理科3年「地球と宇宙」(季節の変化と南中高度)、電力とエネルギー | 図1・冬と夏の光の量 |
| 高校 | 地学基礎「地球の熱収支」、物理基礎「エネルギー」 | 地球全体の受け取る光の計算 |
| 高校+ | 地学「放射平衡」 | 4分の1の平均とアルベド |
| 大学 | 気象学・大気放射学 | エアマス、ランベルト・ベールの法則 |
| 研究 | 衛星による太陽放射観測、雲と気候 | 太陽定数の見直し、雲の影響 |
| ― | 生活とのつながり | 日なたぼっこ、季節の寒暖、太陽光パネル |
- Kopp, G. and Lean, J. L. (2011) A new, lower value of total solar irradiance: Evidence and climate significance. Geophysical Research Letters 38
- 太陽定数 - ウィキペディア
- 太陽放射(日射) - ウィキペディア
- 国立天文台 編『理科年表』丸善出版(太陽定数・地球の半径)
- Energy Institute, Statistical Review of World Energy(世界の一次エネルギー消費)
※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。太陽は直接見ないでください。