自然のふしぎ エネルギー 予備知識なしでOK 読了 約6分

地球に届く太陽の光は、どれくらいのエネルギーなの?
― 1時間ぶんの光で、人類が1年に使う量に届きます

日なたに出ると、顔がじんわり温かくなります。あの温かさを数字にしてみると、思った以上に大きな量です。晴れた日の昼なら、地面1平方メートルに届く光だけで電気ケトル1台ぶん。それを地球全体で足し合わせると、たった1時間で、人類が1年間に使うエネルギーとほぼ同じになります。

公開:2026.10.14 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、こんな場面を思い浮かべてください

秋晴れの昼休み、ベンチに座って日なたぼっこをしています。風は少し冷たいのに、日が当たる背中だけはぽかぽか温かい。

雲が太陽の前を横切ると、とたんに肌寒くなります。雲が通り過ぎると、また温かさが戻ってきます。

この「ぽかぽか」の正体は、1億5000万kmの旅をしてきた光のエネルギーです。では、その量は、いったいどれくらいなのでしょうか。

けた外れの量になる理由は、2つだけ

1
1平方メートルでも、家電1台ぶん

太陽が高い晴れた昼、地面1平方メートルに届く光は、およそ1000ワットとされています。電気ケトルやドライヤー1台ぶんの勢いです。

2
地球は、巨大な円盤で受け止め続けている

地球が光を受け止める面積は、およそ1億2700万平方キロメートル。その全体に、昼も夜も休みなく光が降り注いでいます。

「1平方メートルあたりの量」と「受け止める面積」。この2つをかけ合わせるだけで、驚くほど大きな数字が出てきます。順に見ていきましょう。

1平方メートルに届く光は、電気ケトル1台ぶん

地球の空気の外側で、太陽にまっすぐ向けた1平方メートルの板には、毎秒およそ1361ジュールの光が届くとされています。これを太陽定数と呼びます。1秒あたり1361ジュールなので、1361ワットです。

空気の中を通るあいだに、光の一部ははね返されたり、吸い込まれたりします。そのため、晴れた日に太陽が真上近くにあるとき、地面に届くのは1平方メートルあたりおよそ1000ワットになります。太陽光パネルの性能も、この「1000ワット」を基準にして測られています。

ただし、これは太陽が高いときの話です。図1を見てください。太陽が低くなると、同じ太さの光の束が、地面の上で長く引き伸ばされます。光の量は同じなのに、広い面積に薄く広がるので、1平方メートルあたりの量は減ります。

地面 オレンジの線 = 光が当たる地面の長さ 太陽の高さ 46° 地面1平方メートルあたり 約 720 ワット 光の束の太さは、いつも同じ 低い太陽ほど、横に長く広がる
つまみを動かすと、光の当たる長さと、1平方メートルあたりの量が変わります
図1:同じ太さの光の束(黄色の帯)が地面に当たる様子。つまみで太陽の高さを変えてみてください。太陽が低いほど下のオレンジの線が長く伸び、1平方メートルあたりの量が減ります(空気の層を通る道のりが長くなる効果は省いた、単純化した計算です)。

東京の正午の太陽の高さは、夏至のころでおよそ78度、冬至のころでおよそ31度です。地面1平方メートルあたりで比べると、冬の昼の光は夏のおよそ半分しかありません。冬が寒いのは、太陽が遠くなるからではありません。光が斜めに当たって、薄く広がってしまうからです。

地球全体では、1時間で人類の1年ぶん

次に、地球全体が受け止める光を考えます。太陽はとても遠いので、地球に届く光はほぼ平行に並んでやってきます。図2を見てください。地球は丸い球ですが、光から見ると、地球と同じ半径の「円盤」が1枚、光をさえぎっているのと同じです。

太陽の光(ほぼ平行にやってくる) 半径 右半分 = 夜の側 (光は当たらない) 点線の円盤 = 光を受け止める面 (半径は地球と同じ) 地球の表面積は この円盤の4倍
図2:左からほぼ平行にやってくる太陽の光(矢印)。地球は球ですが、光をさえぎる大きさは、左の点線で描いた「地球と同じ半径の円盤」1枚ぶんです。右半分は光の当たらない夜の側です。

この円盤の面積は、およそ1億2700万平方キロメートル。そこに、空気の外側で1平方メートルあたり1361ワットの光が当たり続けます。かけ合わせると、地球が受け止める光はおよそ1億7000万ギガワット。大きな発電所1基を1ギガワットとすると、その1億7000万基ぶんです。

1時間ぶんの光を集めると、およそ620エクサジュールになります(エクサは10の18乗)。世界じゅうの人が1年間に使うエネルギーは、600エクサジュール前後とされています。つまり、地球に届く1時間ぶんの太陽の光が、人類の1年ぶんのエネルギーとほぼ同じなのです。

💡 それなら、なぜエネルギーは足りないの?

理由は「薄さ」です。光はとても広い面積に、うすく広がって届きます。地球全体で昼と夜、赤道と極地をならすと、空気の外側で1平方メートルあたりおよそ340ワット(1361ワットの4分の1)です。さらにその約3割は、雲や氷にはね返されて宇宙へ戻るとされています。植物でさえ、届いた光のうち栄養に変えられるのは1パーセント前後とされています。集めるのが大変なのです。

まとめ

地面1平方メートルに届く太陽の光は、晴れた昼なら電気ケトル1台ぶんです。地球はそれを、1億2700万平方キロメートルの円盤で休みなく受け止めています。その結果、1時間ぶんの光だけで、人類が1年間に使うエネルギーに届きます。一方で、光は斜めに当たると薄く広がり、季節の寒暖もそこから生まれます。

太陽の光は、量では足りすぎている。
難しいのは、うすく広がった光を集めることのほうです。

日なたの温度がどれほど上がるかは「アスファルトはなぜ60℃を超えるの?」と「日なたに停めた車の中は、なぜ暑くなるの?」で、太陽の傾きと季節の関係は「季節のしくみ」で詳しく紹介しています。

🧪 手のひらで「光の傾き」を感じてみよう
  1. 晴れた日の日なたで、手のひらを太陽にまっすぐ向けて、30秒ほど温かさを感じます。
  2. 次に、手のひらを大きく傾けて、光が斜めにかすめるように当てます。さっきより温かさが弱く感じられるはずです。
  3. 長さ1メートルの棒を地面に立てて、影の長さを測ります。影が棒と同じ長さなら太陽の高さは45度、影が短いほど太陽は高い位置にあります。

太陽を直接見ないでください。目を傷める危険があります。影の長さを夏と冬で比べると、図1の違いを自分の目で確かめられます。

もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「物理」「地学」で習う範囲
  • 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(気象学・大気放射学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:この現象には名前があります

中学高校式で確かめる:地球が1時間に受け取る光のエネルギー

地球が受け止める光の総量を、円盤の面積と太陽定数から求めます。記号の意味は次のとおりです。

記号意味と単位
P地球が受け止める光の仕事率(ワット)
S太陽定数(ワット毎平方メートル)
R地球の半径(メートル)
E時間 t のあいだに受け取るエネルギー(ジュール)
⓪ もとになる式
記号で書くとP = S × π × R² 、 E = P × t
言葉で書くと受け止める光 = 1平方メートルあたりの光 × 円盤の面積(円周率 × 半径 × 半径)、エネルギー = 光の勢い × 時間
どこから来る式か平行な光をさえぎる面積は、球の「影」の円の面積に等しい(図2)。エネルギーは仕事率に時間をかけたもの、という定義から来ています。
① もとになる数値
太陽定数 S1361 ワット毎平方メートル
地球の半径 R6370 キロメートル
1平方キロメートル1000000 平方メートル
1時間3600 秒
世界の1年間のエネルギー消費600エクサジュール前後とされる
② 計算してみる
半径 × 半径(平方キロメートル)6370 × 6370 = 40576900
円盤の面積(平方キロメートル)40576900 × 3.14 ≒ 127000000
1平方キロメートルあたりの光(ワット)1361 × 1000000 = 1361000000
同じ量をギガワットで表す1361000000 ÷ 1000000000 ≒ 1.36
地球全体の光 P(ギガワット)127000000 × 1.36 ≒ 172700000
1時間ぶん(ギガジュール)172700000 × 3600 ≒ 621700000000
エクサジュールに直す621700000000 ÷ 1000000000 ≒ 622

地球が1時間に受け取る光は約622エクサジュール。人類の1年間の消費(600エクサジュール前後)とほぼ同じです。

③ 実感に直す
畳1枚(約1.6平方メートル)に届く晴れた昼の光(ワット)1000 × 1.6 = 1600
冬至の正午の東京では(太陽の高さ31度の正弦はおよそ0.52とされる)1000 × 0.52 = 520

畳1枚の日なたには、電気ケトル1台ぶんを少し上回る光が届いています。冬至の昼には、同じ地面1平方メートルあたりの光が約半分になります(図1と同じ単純化した計算です)。

高校高校+傾きと、地球全体の平均

高校光が地面に斜めに当たると、地面1平方メートルあたりの量は「太陽の高さの正弦」の割合に減ります。図1の式(1000ワット × 正弦)がこれです。季節によって太陽の高さが変わることが、夏と冬の気温差のおもな原因です。

高校+球の表面積は円盤の面積の4倍なので、地球全体でならした光の量は太陽定数の4分の1、約340ワット毎平方メートルになります。このうち約3割(アルベド)がはね返され、残りが地球を温めます。この収支から、地球の「放射平衡温度」がおよそマイナス18℃と求められます。実際の平均気温が約15℃なのは、温室効果によるものです。

大学大気を通る道のりと、エアマス

実際には、太陽が低いほど光は空気の層を斜めに長く通り、散乱や吸収で弱まります。この道のりの長さを、真上から来るときを1として表したものを「エアマス」と呼びます。光が空気を通るときの弱まり方は、ランベルト・ベールの法則で表されます。図1の計算は、この効果を省いた単純化したものです。地球全体の光の出入りは「地球のエネルギー収支」として、大気放射学で扱われます。

📖 式の導出や、さらに先の内容:太陽定数(ウィキペディア) / ランベルト・ベールの法則(ウィキペディア)

研究まだはっきりとはわかっていないこと

つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。数値は、しくみを理解するための目安として受け取ってください。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学理科3年「地球と宇宙」(季節の変化と南中高度)、電力とエネルギー図1・冬と夏の光の量
高校地学基礎「地球の熱収支」、物理基礎「エネルギー」地球全体の受け取る光の計算
高校+地学「放射平衡」4分の1の平均とアルベド
大学気象学・大気放射学エアマス、ランベルト・ベールの法則
研究衛星による太陽放射観測、雲と気候太陽定数の見直し、雲の影響
―生活とのつながり日なたぼっこ、季節の寒暖、太陽光パネル
参考・出典
  1. Kopp, G. and Lean, J. L. (2011) A new, lower value of total solar irradiance: Evidence and climate significance. Geophysical Research Letters 38
  2. 太陽定数 - ウィキペディア
  3. 太陽放射(日射) - ウィキペディア
  4. 国立天文台 編『理科年表』丸善出版(太陽定数・地球の半径)
  5. Energy Institute, Statistical Review of World Energy(世界の一次エネルギー消費)

※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。太陽は直接見ないでください。