星はなぜ、何十億年も光り続けられるの?
たき火は数時間で消えます。それなのに太陽は、46億年たっても同じ明るさで光っています。もし太陽が「燃えている」のなら、とっくに燃えつきているはずです。実際、太陽は燃えていません。まったく別のことが起きています。そして同じ明るさが保たれているのは、偶然ではなく、つりあいの結果です。
晴れた夜、空にはたくさんの光る点があります。どれも同じ「星」に見えます。
ところが、あの点は2種類が混ざっています。自分で光っているものと、太陽の光をはね返しているだけのものです。後者が惑星で、金星や木星がそれにあたります。鏡が光って見えるのと同じで、自分では光っていません。
この記事で扱うのは、前者です。太陽もその一つで、いちばん近くにある、自分で光っている星です。
では、何をエネルギー源にして光っているのでしょうか。たき火のように何かが燃えているのだとしたら、答えは合いません。燃料が続かないからです。
中心では、水素の原子核が4つくっついてヘリウムに変わっています。このときほんの少しだけ軽くなり、減った分がエネルギーになります。
自分の重さでつぶれようとする力と、中心から押し返す力がつりあっています。しかもこれは、ひとりでに元に戻る性質を持っています。
この2つがそろって、はじめて「何十億年も、ほぼ同じ明るさ」という状態が説明できます。順に見ていきます。
「燃える」と、星の中で起きていることは別物です
たき火やろうそくで起きているのは、物質が酸素と結びつく変化です。原子の組み合わせが変わるだけで、原子そのものは変わりません。取り出せるエネルギーには限りがあり、酸素がなければ止まります。
星の中心で起きているのは、まったく別です。原子核そのものがくっついて、別の種類の原子核に変わっています。水素の原子核が4つ集まって、ヘリウムの原子核1つになります。酸素は関係ありません。
ここで不思議なことが起こります。できあがったヘリウムは、材料の水素4つ分より、わずかに軽いのです。行方不明になった分は、消えたのではありません。エネルギーに変わりました。
この「わずか」は、全体のおよそ0.7%です。小さく見えますが、同じ重さの燃料を燃やしたときとは、けたが何桁も違うエネルギーが出ます。だから何十億年も続きます。
日常では「太陽が燃えている」と言いますし、それで困ることはありません。ただ、しくみを考えるときにこの言葉に引きずられると、行き止まりになります。燃えているのだとすれば、燃料も酸素も足りず、とうに消えているはずだからです。
実際、19世紀にはこれが本当に問題でした。当時知られていたどのエネルギー源で計算しても、太陽の寿命は数千万年ほどにしかならず、地質学が示す地球の年齢と合いませんでした。原子核のしくみがわかって、ようやくつじつまが合ったとされています。
なぜ、明るさが変わらないのか
エネルギー源がわかっても、まだ疑問が残ります。なぜ、途中で暴走したり、急に暗くなったりしないのでしょうか。
星は、自分の重さでつぶれようとしています。それに逆らっているのが、中心が熱いために外へ押し返す力です。この2つがつりあった状態で止まっています。
大事なのは、このつりあいが、ずれても自分で元に戻ることです。
中心が縮むと熱くなり、反応が速くなります。押し返す力が増えるのでふくらんで元に戻ります。
ふくらむと冷えて、反応がゆるやかになります。押し返す力が減るので縮んで元に戻ります。
アクセルとブレーキが自動でつながっているようなものです。速くなりすぎれば冷えて遅くなり、遅くなりすぎれば熱くなって速くなる。この性質のおかげで、星は長いあいだ同じ明るさを保ちます。
燃料が多いからではなく、行きすぎを自分で打ち消すからです。
そして、この状態は永遠ではありません。中心の水素を使い切ると、つりあいの条件が変わります。星は膨らんだり縮んだりと、姿を変えていきます。その道すじは星の重さでほぼ決まっているとされています。重い星ほど激しく光り、寿命は短くなります。
太陽の光は、目に回復しない傷を残すことがあります。とくに望遠鏡や双眼鏡で太陽を見ることは、絶対に避けてください。ごく短い時間でも危険とされています。
日食のときも同じです。サングラスや黒い下じき、すすをつけたガラスでは防げません。観察するなら日食専用の器具を使い、販売元や天文台などの説明に従ってください。目に異常を感じたら、自己判断せず眼科を受診してください。
自分の目で確かめられること
- 晴れた夜、街灯から少し離れた場所で、空を5分ほど眺める
- チカチカとまたたいて見える点と、またたかず落ち着いて光る点があることに気づく
- またたいているほうが星、落ち着いているほうが惑星であることが多いとされています
- 色にも注目する。赤っぽい点、青白い点があります。これは表面の温度の違いを見ていることになります
またたきの差は、光が点として届くか、小さな面として届くかの違いによるとされています。惑星は近いぶん見かけの大きさがあり、空気のゆらぎで打ち消し合うため、またたきが目立ちません。肉眼で十分わかります。
まとめ
星が光っているのは、中心で原子核どうしがくっついて、わずかに軽くなった分がエネルギーに変わっているからです。燃えているのとは、まったく別の変化です。そして何十億年も明るさが変わらないのは、つぶれる力と押し返す力のつりあいが、ずれても自分で元に戻るためです。
夜空の点の多くは、
いまも自分でつりあいを取りながら光っています。
もっと知りたい人へ ― 用語・数値・教科書とのつながり中学理科から研究中の話題まで、どのレベルの話かを明示しています
- 中学中学校の理科で習う範囲
- 高校高校の「物理基礎」「化学基礎」「地学基礎」で習う範囲
- 高校+高校の「物理」「地学」、または教科書の発展・コラム扱いの内容
- 大学高校では習わない、大学の専門科目(天体物理学)の内容
- 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話
中学用語:星をめぐる言葉
- 恒星:自分で光っている星。太陽もその一つです。本文で「星」と書いてきたものです。
- 惑星:恒星のまわりを回り、自分では光らない天体。地球や金星がこれにあたります。
- 核融合:軽い原子核どうしがくっついて、重い原子核になる変化。本文の「くっつく」です。
- 質量欠損:くっついたあとのほうが軽くなること。減った分がエネルギーになります。
- 静水圧平衡:つぶれようとする力と押し返す力がつりあった状態。本文の「つりあい」です。
高校式で確かめる:太陽は1秒で何kg軽くなっているか
ここからは、実際に手を動かして解きます。使う式は1本だけです。高校の物理「原子」で出てくる、いちばん有名な式です。
E = m c²
| E 出てくるエネルギー | 単位は J(ジュール) |
| m 消えた質量 | 単位は kg |
| c 光の速さ | 3.0 × 10⁸ m/s |
読み方はこうです。質量が m だけ消えると、そのかわりに m に c² を掛けた分のエネルギーが出てくる。
c は 3億 m/s。それを2乗するので、c² は 9京(けい)という桁になります。ここが効きます。質量が 1 g 消えるだけでも、掛かる相手が桁違いに大きいので、出てくるエネルギーは莫大になります。
| わかっていること 太陽が1秒間に出すエネルギー | E = 3.8 × 10²⁶ J |
| 知りたいこと 1秒間に消える質量 | m = ? |
| まず、式を m について解く | m = E ÷ c² |
| c² を先に計算する | (3.0 × 10⁸)² = 9.0 × 10¹⁶ |
| 代入する | m = (3.8 × 10²⁶) ÷ (9.0 × 10¹⁶) |
| 答え | m ≒ 4.2 × 10⁹ kg |
式を変形して、数を入れて、割り算をしただけです。それだけで、太陽の中で1秒間に何が起きているかが出てきます。
4.2 × 10⁹ kg は、42億 kg = 約420万トンです。大型タンカー10隻分ほどの質量が、1秒ごとに、質量としては消えていることになります。
では、46億年ではどうなるでしょうか。ここも計算できます。
| 1年を秒に直す | およそ 3.15 × 10⁷ 秒 |
| 46億年は何秒か | 4.6 × 10⁹ × 3.15 × 10⁷ ≒ 1.45 × 10¹⁷ 秒 |
| その間に消えた質量 | 4.2 × 10⁹ × 1.45 × 10¹⁷ ≒ 6.1 × 10²⁶ kg |
| 太陽全体の質量 | およそ 2.0 × 10³⁰ kg |
| 全体に対する割合 | ((6.1 × 10²⁶) ÷ (2.0 × 10³⁰)) × 100 = 約0.03 % |
ここが、この記事でいちばん腹に落ちるところだと思います。1秒に420万トンという、想像もつかない量を46億年間も出し続けて、それでもまだ全体の0.03%ほどしか減っていない。星が長生きなのは、燃料をけちっているからではなく、ごくわずかな質量から取り出せるエネルギーが、それほど大きいからです。
本文で「およそ0.7%だけ軽くなる」と書きました。これも同じやり方で確かめられます。原子核の質量を比べて、減った分が元の何%かを出すだけです。
| 水素の原子核 4つ分 | およそ 4.032 |
| ヘリウムの原子核 1つ | およそ 4.003 |
| 減った分 | 4.032 − 4.003 = 0.029 |
| 全体に対する割合 | ((4.032 − 4.003) ÷ 4.032) × 100 = 約0.7 % |
※ 質量は原子質量単位での代表値です。実際の反応はいくつかの段階を経て進みます。
| 1秒間に出すエネルギー | およそ 3.8 × 10²⁶ J |
| 質量 | およそ 2.0 × 10³⁰ kg |
| 中心の温度 | およそ 1500万 ℃ とされています |
| 表面の温度 | およそ 6000 ℃ とされています |
| 年齢 | およそ 46億年 とされています |
| 今の状態が続くと見られる期間 | あと およそ 50億年 とされています |
| 光が地球に届くまで | およそ 8分 |
高校+くっつくのに、なぜ高い温度が要るのか
原子核はどれもプラスの電気を帯びているので、近づけようとすると強く反発します。くっつくには、この反発を押し切るだけの勢いが必要です。だから中心のような高温・高圧の場所でしか起こりません。
ただし、古典的に計算した勢いは、実は足りません。それでも反応が進むのは、粒子が壁を通り抜けたようにふるまう現象があるためだと説明されています。星が光っているという事実そのものが、この現象の証拠の一つになっています。
もう一つ重要なのは反応の速さの、温度への強い依存です。温度が少し上がるだけで反応は大きく速くなります。本文で「ひとりでに元に戻る」と書いたはたらきは、この鋭さがあってこそ成り立ちます。
大学中心の光は、すぐには出てこない
中心で生まれたエネルギーは、まっすぐ表面へ抜けるわけではありません。周囲の物質に何度も吸収されては出しなおされ、少しずつ外へ運ばれます。この過程を経るため、表面に届くまでには長い時間がかかります。見積もりには幅がありますが、数万年以上とされることが多いようです。
一方、同じ反応から出るニュートリノという粒子は、物質とほとんど反応せずに素通りします。こちらは中心から約8分で地球に届きます。つまり私たちは、太陽の中心のいまを、ニュートリノでだけ直接のぞけることになります。
星の内部は、場所によってエネルギーの運ばれ方が変わります。放射で運ばれる層と、物質そのものが上下に動いて運ぶ層(対流層)があり、その境目がどこに来るかは星の質量や年齢で変わります。この扱いは、恒星の模型を作るうえで難しい部分の一つです。
研究いちばん近い星でも、わかっていないことがあります
- 太陽の中身の組成が、二つの方法で食い違っています。太陽の振動から内部構造を推定する方法と、表面の光を分析して元素の量を求める方法があり、両者の結果が合いません。太陽組成問題と呼ばれ、決着していないとされています。いちばんよく調べられた星でこの状態です。
- 約11年の活動周期のしくみが、完全には説明できていません。黒点の増減や磁場の向きの反転がほぼ周期的に起きることは知られていますが、周期の長さや強さを前もって当てることは、いまだに困難とされています。
- 最初に生まれた星は、まだ直接には見つかっていません。重い元素をほとんど含まない第一世代の星は、理論では予想されていますが、観測での確認は今後の課題とされています。
- 星の内部の対流と自転の扱いは、いまも改良が続いています。これらは星の寿命の見積もりに効いてくるため、「星の年齢」は方法によって答えが変わりうる数値です。
星が光るしくみの骨格は確立していますが、細部にはまだ手つかずの部分が残っています。教科書に書いてあることと、いまわかっていることは、同じではありません。
教科書とのつながり(レベル別)
| レベル | 科目・単元 | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 中学 | 理科・太陽系と恒星 | 恒星と惑星の違い、太陽のすがた |
| 高校 | 物理基礎・エネルギーとその移り変わり | 質量が減った分がエネルギーになること |
| 高校 | 地学基礎・太陽と恒星の進化 | 星の一生が質量でほぼ決まること |
| 高校+ | 物理・原子核/量子の性質 | 反発を越えてくっつくしくみ、反応の温度依存 |
| 大学 | 天体物理学・恒星構造論 | エネルギーの運ばれ方、放射層と対流層 |
| 研究 | 太陽物理学・恒星進化(未解決) | 太陽組成問題、活動周期、第一世代の星 |
| ― | 安全 | 太陽を直接見ない、日食観察の注意 |
- 国立天文台による太陽および恒星に関する解説資料。
- Bahcall, J. N. & Pinsonneault, M. H. ほか、標準太陽模型に関する一連の研究。
- Asplund, M. et al., The chemical composition of the Sun, ARA&A 47, 2009(太陽組成問題の発端となった再解析)。
- Kippenhahn, R. & Weigert, A., Stellar Structure and Evolution(恒星構造の標準的な教科書)。
- 日本眼科学会および国立天文台による、日食観察時の目の安全に関する注意喚起。
※ 温度・年齢・質量の数値は、模型や観測方法によって幅があります。本記事では一般に引用される目安を示しました。
※本記事は一般向けの科学解説です。太陽の観察については、日食専用の器具の説明や、天文台・眼科などの専門機関が示す注意に従ってください。掲載した数値は、しくみを理解するための目安です。