自然のふしぎ 天文・宇宙 予備知識なしでOK 読了 約6分

星には色があるのに、なぜ夜空の星はほとんど白く見えるの?
― 色が消えるのは、星ではなく、あなたの目の中です

図鑑では、星は赤や青白い色で描かれています。ところが実際に夜空を見上げると、ほとんどの星はただの白い点です。星が色を失ったわけではありません。暗い光を受け取ったとき、私たちの目が「色を読む係」を休ませてしまうのです。

公開:2026.10.11 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、こんな場面を思い浮かべてください

秋の夜、ベランダから空を見上げます。街の明かりが少ない場所なら、数十個の星が見えるはずです。

理科の授業で「星には赤い星も青い星もある」と習った覚えがあります。でも目の前の星は、どれも白っぽく光っているだけです。

よく見ると、ひときわ明るい星の中に、ほんのりオレンジ色のものがあります。色が分かるのは、なぜか明るい星だけなのです。

星が白く見える理由は、2つだけ

1
星の光は、もともと全部の色のまぜ物

赤い星も青い星も、虹の全色を少しずつ出しています。色の差は「どの色が少し多いか」だけで、絵の具ほどはっきりしません。

2
暗い光では、目の色センサーが働かない

目には、色が分かる細胞と、暗さに強いけれど色が分からない細胞があります。暗い星の光は、後者しか反応させられません。

1つめは星の側の事情、2つめは目の側の事情です。2つが重なると、夜空はほとんど白黒の世界になります。順番に見ていきましょう。

赤い星も青い星も、虹の全色を出している

星の色は、表面の温度で決まります。温度が低い星はオレンジ色、太陽くらいなら白っぽい黄色、とても熱い星は青白く光ります。炭火やストーブの赤い光と同じしくみで、熱いものほど青い側の光が増えていきます。

ただし、熱いものが出す光は、1つの色ではありません。図1を見てください。山のような曲線が、星が出す光の強さを色(光の波の長さ)ごとに表しています。山はとても横に広く、目に見える範囲(虹色の帯)をまるごと覆っています。

つまみで温度を変えてみると、山のてっぺんの位置は動きます。けれども、虹色の帯の中の曲線は、どの温度でもなだらかな坂になるだけです。赤も緑も青もそろって入っているので、目にはまざり合って白に近く映ります。

目に見える範囲 光の強さ 紫外線側 赤外線側 光の波の長さ(右ほど長い)→ 星の見た目の色 山のてっぺん およそ 500 nm (縦の点線)
つまみを動かすと、山のてっぺんの位置と、右の星の色が変わります
図1:星が出す光の強さを、波の長さごとに描いた曲線(白い実線)。中ほどの虹色の帯が、目に見える範囲です。縦の点線が山のてっぺんで、つまみで温度を下げると右(赤外線側)へ、上げると左(紫外線側)へ動きます。どの温度でも帯の中には全部の色が入っていて、右の丸い星の色は、濃い赤や真っ青にはならないことが分かります。

オレンジ色に見えるベテルギウスでも、山のてっぺんは目に見えない赤外線の側にあるとされます。青白いシリウスでは、てっぺんは紫外線の側です。どちらの星も、私たちに見えているのは山の「すそ野」の一部だけなのです。

暗い光では、目の「色のセンサー」が休んでいる

目の奥には、光を受け取る細胞が2種類並んでいます。1つは色を見分ける細胞で、赤・緑・青に強く反応する3つのタイプがあります。もう1つは暗さに強い細胞で、とても弱い光にも反応します。ただし、こちらは1種類しかないので、色を見分けられません。

色を見分ける細胞は、ある程度の明るさがないと働きません。夜空のほとんどの星は、その明るさに届いていません。そのため、暗さに強い細胞だけが反応して、星は「明るいか暗いか」だけの白い点として見えます。

図2は、星が実際に出している色(上の列)と、肉眼で見える色(下の列)を比べたものです。左側の明るい星だけが色のセンサーを動かせるので、下の列でも色が残ります。右側の暗い星は、もとの色に関係なく白っぽい灰色になります。

星が出している色 肉眼で見える色 シリウス ベテルギウス アンタレス 3等星 4等星 5等星 6等星 ← 明るい星:色が少し残る 暗い星:白っぽい灰色になる →
図2:上の列は星が出している色、下の列は肉眼で見える色です(左ほど明るい星)。下向きの矢印で上から下へ移ると、縦の点線より左の明るい星だけ色が残り、右の暗い星はもとの色にかかわらず白っぽい灰色になります。点線の位置は目安で、空の暗さや人によって変わります。
💡 双眼鏡を向けると、星に色がつく

双眼鏡は、ひとみよりずっと大きなレンズで光を集めます。星の光が明るくなるので、色のセンサーが働き出し、肉眼では白かった星にオレンジや青の色が見えてきます。はくちょう座のくちばしにあるアルビレオは、オレンジと青の2つの星が並んだ姿で知られています。

💡 ピントをわざとずらす観察法

星の色を見たいとき、望遠鏡のピントをわざと少しぼかす人がいます。光が点ではなく小さな円に広がり、より多くの色のセンサーに光が当たるので、色が分かりやすくなるとされています。

まとめ

星は温度に応じた色の光を出しています。ただ、その光は虹の全色をまぜたもので、色の差はもともと控えめです。さらに暗い星の光は、目の色のセンサーを働かせるほど強くありません。だから夜空の星は、ほとんどが白く見えるのです。

星が色を失ったのではありません。
暗い夜、目が色を読むのを休んでいるのです。

暗い所で目が慣れていくしくみは「明るい所から暗い部屋に入ると、なぜしばらく何も見えないの?」で、熱いものの色と温度の関係は「鍛冶職人は、なぜ温度計なしで鉄の温度がわかるの?」で詳しく紹介しています。星がまたたく理由はこちらの記事へ。

🧪 今夜、星の色を探してみよう
  1. 街灯の少ない場所で、10分ほど目を暗さに慣らします。スマートフォンの画面は見ないようにします。
  2. いちばん明るい星をいくつか選び、色を比べます。秋なら、夜遅くに東の空へ昇るオレンジ色のアルデバランが目印になります。
  3. 次に、暗い星を見て、色が分かるか試します。双眼鏡があれば、同じ星を双眼鏡で見て、色がどう変わるかを比べます。

明るい星ほど色が分かり、双眼鏡で色が濃くなれば、この記事の2つめの理由を自分の目で確かめたことになります。夜の観察は足元に気をつけ、大人と一緒に行いましょう。

もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「物理」「地学」「生物」で習う範囲
  • 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(天体物理学・視覚科学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:この現象には名前があります

中学高校式で確かめる:星の光の「山のてっぺん」はどこにある?

熱いものが出す光がいちばん強くなる波の長さは、温度だけで決まります。これを使って、オレンジ色の星と青白い星の「てっぺん」の位置を計算してみます。

⓪ もとになる式
記号で書くとλmax = b ÷ T
言葉で書くといちばん強い光の波の長さ = 決まった定数 ÷ 表面の温度
どこから来る式か熱いものが出す光の強さを色ごとに表した「プランクの式」の、山のてっぺんを求めると出てくる関係(ウィーンの変位則)です
λmax光がいちばん強くなる波の長さ。単位はナノメートル(nm)
bウィーンの変位定数。単位は nm・K
T星の表面温度。単位はケルビン(K)
① もとになる数値
ウィーンの変位定数およそ 2898000 nm・K
ベテルギウスの表面温度およそ 3500 K とされます
シリウスの表面温度およそ 9900 K とされます
太陽の表面温度およそ 5800 K
目に見える光の範囲およそ 380〜780 nm
② 計算してみる
ベテルギウスのてっぺん2898000 ÷ 3500 ≒ 828 nm
見える範囲の赤い端からのはみ出し828 − 780 = 48 nm
シリウスのてっぺん2898000 ÷ 9900 ≒ 293 nm
見える範囲の紫の端からのはみ出し380 − 293 = 87 nm
太陽のてっぺん2898000 ÷ 5800 ≒ 500 nm

オレンジ色の星のてっぺんは赤外線の側に、青白い星のてっぺんは紫外線の側にはみ出しています。目に見える範囲に入ってくるのは、どちらも山の斜面だけです。だから色の差は「赤い」「青い」ではなく、「白にオレンジが少し」「白に青が少し」程度になります。

高校高校+星の色と温度、明るさの目盛り

高校地学では、星の色(スペクトル型)と表面温度の関係を学びます。O・B・A・F・G・K・M の順に温度が下がり、色は青白から白、黄、オレンジ、赤へと移ります。生物では、網膜の錐体と杆体の役割の違いを学びます。

高校+等級は、明るさの比を対数で表した目盛りです。5等級の差がちょうど100倍になるように決められていて、1等級の差はおよそ2.512倍になります。この決め方は、提案者の名から「ポグソンの式」と呼ばれます。天文学では、青と黄緑のフィルターで測った明るさの差(色指数)で、星の色を数で表します。

大学黒体放射と、薄明視・暗所視

星の光は、おおむね「黒体放射」として扱えます。光の強さの分布はプランクの放射則で表され、その極大の位置を求めるとウィーンの変位則が得られます。視覚の側では、錐体だけが働く状態を明所視、杆体だけが働く状態を暗所視、両方が働く中間を薄明視と呼びます。肉眼で星の色が分かるかどうかは、星の光がどこまで錐体の反応する明るさに届くかで決まります。さらに、目の中心の「中心窩」には錐体が集まり、杆体はほとんどありません。そのため、暗い星を見るときと色を見るときでは、使っている網膜の場所が違います。

📖 式の導出や、さらに先の内容:ウィーンの変位則(ウィキペディア) / 等級(天文)(ウィキペディア)

研究まだはっきりとはわかっていないこと

つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。星の色の見え方には、星の物理と目のしくみの両方がからんでいます。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学理科:光の性質、目のつくり星の光が全色のまぜ物であること、目の2種類の細胞
高校地学:恒星の色と温度/生物:視覚図1の温度と色、錐体と杆体
高校+地学の発展:等級と色指数1等星と6等星の明るさの比
大学天体物理学・視覚科学プランクの放射則、明所視・暗所視・薄明視
研究視覚心理物理学薄明視での色の感じ方、個人差
―生活とのつながり夜に花や服の色が分かりにくいのも、同じ目のしくみです
参考・出典
  1. ウィーンの変位則 - ウィキペディア
  2. 等級(天文) - ウィキペディア
  3. 国立天文台 編『理科年表』丸善出版(恒星の表面温度・スペクトル型)
  4. 日本視覚学会 編『視覚情報処理ハンドブック』朝倉書店(錐体・杆体と明所視・暗所視)

※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。星の表面温度は資料によって幅があります。