自然のふしぎ 地球科学 予備知識なしでOK 読了 約6分

砂浜の砂粒と宇宙の星、多いのはどっち?
― 星のほうが数十倍以上。でも、コップ1杯の水の分子には負けます

「宇宙の星は、地球の砂浜の砂粒より多い」という話を聞いたことがあるかもしれません。数えることはできませんが、かけ算だけで見積もることはできます。やってみると、答えはたしかに星の勝ちです。そして、もっと身近なところに、星よりはるかに多いものが見つかります。

公開:2026.10.25 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、こんな場面を思い浮かべてください

夏の海辺で、砂をひとすくい手に取ります。指のすき間から、さらさらと粒がこぼれていきます。

見わたすと、砂浜は何キロも続いています。その向こうにも、世界じゅうに同じような浜があります。

夜、同じ浜で空を見上げると、星が一面に見えます。この砂粒と星、本当に多いのはどちらでしょうか。

勝負を決めるのは、2つのかけ算です

1
砂粒は、浜の体積を粒の体積で割れば出る

砂の粒は小さいですが、浜の大きさには限りがあります。浜の長さ・幅・深さをかけて体積を出し、1粒の体積で割れば、粒の数がおおよそ分かります。答えは「10の20乗」ほどです。

2
星は、銀河1つの星の数に、銀河の数をかければ出る

私たちの天の川銀河には、1000億個をこえる星があるとされます。そうした銀河が、見える範囲の宇宙に数千億個以上あります。かけると「10の22乗」をこえます。

10の20乗と、10の22乗。どちらも想像できないほど大きな数ですが、肩の数字が2つ違うだけで、100倍の差になります。ここが、この勝負のいちばんおもしろいところです。

砂浜の砂粒は、どうやって数えるの?

1粒ずつ数えるのは無理です。そこで、大きさの分かるものを、かけ算で組み立てていきます。こういう見積もりの方法を、フェルミ推定と呼びます。

世界の海岸線は、合わせて約36万キロあるとされます。そのうち砂浜は、およそ3割だという調査があります。砂浜の幅を50メートル、砂の深さを5メートルと仮定すると、世界の浜の砂は約275億立方メートルになります。

一方、砂粒1つの直径はおよそ0.5ミリです。1立方メートルの箱には、この粒が約80億個入る計算です。2つをかけると、砂浜の砂粒は約2×10の20乗、つまり2垓(がい)個ほどになります。

図1を見てください。横の目盛りは、右へ1つ進むたびに10倍になります。つまみで砂粒の大きさを変えると、粒の数がどう動くかが分かります。

数の大きさを並べると(右へ1目盛り進むと10倍) 浜の砂粒 約 2.2×10²⁰ 粒 宇宙の星 10²²〜10²⁴ 個 見積もりの幅 コップ1杯の水の分子 約 6×10²⁴ 個 10¹⁸10¹⁹10²⁰ 10²¹10²²10²³ 10²⁴10²⁵10²⁶ 浜の砂は、長さ・幅・深さを仮定した見積もり(くわしくは最後の折りたたみ)
つまみを動かすと、浜の砂粒の数が変わります
図1:横軸は、右へ1目盛り進むたびに10倍になる目盛りです。上の段の浜の砂粒(粒の直径0.5ミリ)は左寄りにあり、中の段の宇宙の星の幅(濃い部分)より100倍ほど少なくなります。下の段のコップ1杯の水の分子は、いちばん右まで伸びています。つまみで粒を細かくすると、上の段が右へ伸びていきます。

粒の大きさが半分になると、粒の数は8倍になります。体積は、長さを3回かけたものだからです。とても細かい砂の浜ばかりなら、砂粒は星の数の下限に近づきます。それでも、星の見積もりの幅を追い越すことはありません。

宇宙の星は、どうやって数えるの?

星も1つずつは数えられません。そこで、2段階のかけ算にします。まず、銀河1つにある星の数です。天の川銀河の星は、1000億から4000億個ほどと見積もられています。

次に、望遠鏡で見える範囲の宇宙にある銀河の数です。こちらは数千億個から2兆個ほどとされ、研究者のあいだでも見積もりに幅があります。少なめに見て、1000億個の星が入った銀河が1000億個あるとすると、星は10の22乗個です。

これを砂粒の約2×10の20乗と比べると、星のほうが約45倍多くなります。多めの見積もりを使えば、差は何万倍にも広がります。「星は砂粒より多い」は、見積もりのとり方を変えても崩れにくい結論です。

💡 星よりも多いものが、手もとにあります

コップ1杯、180ミリリットルの水を考えます。水の分子は、それだけで約6×10の24乗個あります。宇宙の星の見積もりの上のほうと比べても、まだ多い数です。目に見えないほど小さいものは、数がけた違いに増えます。

💡 砂漠の砂を入れると、勝負は分からなくなります

この記事で数えたのは、海辺の砂浜だけです。広い砂漠には、浜とは比べものにならない量の砂があります。砂漠の砂まで含めると、見積もりは何千倍にもふくらみ、星との勝負はつかなくなるとされます。「どこまでを砂と数えるか」で答えが変わるのです。

まとめ

数えきれないものも、大きさの分かるものに分けて、かけ算でつなげば見積もれます。世界の砂浜の砂粒は10の20乗ほど、宇宙の星は10の22乗以上です。そして、コップ1杯の水の分子は、その星をさらに上回ります。

数えられない数も、かけ算なら比べられる。
宇宙の星より多いものは、あなたのコップの中にあります。

砂粒そのものの性質は、砂は乾いていると崩れるのに、濡らすとなぜ固まるの?で読めます。星の光が目に届くしくみは、人の目は、光の粒いくつで「見えた」と分かるの?もどうぞ。

🧪 自分で確かめてみる:小さじ1杯の砂粒を見積もる
  1. 乾いた砂を小さじ(5ミリリットル)ですり切り1杯とり、黒い紙の上に広げます。
  2. そのうち、つまようじで米粒ほどのひと山を取り分け、粒を数えます。残りの砂が、そのひと山の何倍あるかを目で見積もります。
  3. 「ひと山の粒の数 × 何倍か」で、小さじ1杯の粒の数が出ます。数千粒から数万粒になるはずです。

これが、フェルミ推定の最小の練習です。砂の粒の大きさで、答えが大きく変わることも体験できます。

もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「化学基礎・地学」で習う範囲
  • 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(堆積学・天文学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:この現象には名前があります

中学高校式で確かめる:砂粒と星の数を見積もる

砂粒の数は「全体の体積 ÷ 1粒の体積」、星の数は「1つの銀河の星 × 銀河の数」で出します。大きな数は、10の何乗かで書くと計算が楽になります。かけ算では、10の肩の数字を足し算すればよいからです。

⓪ もとになる式
記号で書くとN = ( L × W × H ) ÷ d³ / N★ = n × G
言葉で書くと砂粒の数 = 浜の体積 ÷ 1粒の体積。星の数 = 銀河1つの星の数 × 銀河の数
どこから来る式か体積は小さな部分の足し合わせなので、全体を1粒の大きさで割れば個数になります(粒のすき間は無視)。星は、同じような集団がいくつあるかのかけ算です
記号意味と単位
L世界の砂浜の長さの合計(m)
W砂浜の幅(m)
H砂の深さ(m)
d砂粒1つの直径。粒を一辺 d の立方体とみなす(mm)
n、G銀河1つの星の数、銀河の数(個)
① もとになる数値
世界の海岸線の長さ約36万km とされる
そのうち砂浜の割合約31% とする調査がある
砂浜の幅と砂の深さ(仮定)幅50m、深さ5m
砂粒の直径0.5mm
銀河1つの星、銀河の数(少なめ)どちらも1000億、つまり10の11乗
水1モル(18グラム)の分子の数約6.0×10の23乗個(アボガドロ定数)
② 計算してみる
砂浜の長さ(km)360000 × 0.31 ≒ 110000
メートルに直す110000 × 1000 = 110000000
砂浜の面積(m²)110000000 × 50 = 5500000000
砂の体積(m³)、約275億5500000000 × 5 = 27500000000
粒1つの体積(mm³)の途中0.5 × 0.5 = 0.25
粒1つの体積(mm³)0.25 × 0.5 = 0.125
1m³(10億mm³)に入る粒の数1000000000 ÷ 0.125 = 8000000000
砂粒の数:2.75×10の10乗 と 8×10の9乗 の、数字の部分2.75 × 8 = 22
同じく、10の肩の数字の部分(足し算)10 + 9 = 19
星の数:10の11乗 × 10の11乗 の肩の数字11 + 11 = 22
星は砂粒の何倍か(10の22乗 ÷ 2.2×10の20乗)100 ÷ 2.2 ≒ 45
コップの水(180g)は何モルか180 ÷ 18 = 10
水の分子の数(数字の部分。10の23乗がつく)10 × 6.0 = 60

砂粒は 22×10の19乗、つまり約2.2×10の20乗個です。星は10の22乗個以上で、砂粒の約45倍です。水の分子は60×10の23乗、つまり約6×10の24乗個で、星の見積もりの上限(10の24乗)よりも多くなります。

高校高校+見積もりは、どこがいちばんあやしいのか

高校粒の数は、直径の3乗に反比例します。直径が10倍違えば、数は1000倍違います。砂浜の砂は場所によって細かさがかなり違うため、この見積もりでいちばん結果を左右するのは粒の大きさです。図1のつまみは、その感度を体験するためのものです。

高校+実際の砂は立方体ではなく丸みがあり、粒と粒のあいだに体積の3〜4割ほどのすき間があるとされます。すき間を考えると粒の数は少し減りますが、減り方は2倍にも届きません。けたの勝負では、深さや幅の仮定のほうがずっと大きく効きます。

大学粒径分布と、銀河の数の数え方

堆積学では、砂の大きさを「粒径」と呼び、ふるいで分けた重さの割合(粒径分布)で表します。対数で表したファイ尺度という目盛りも使われます。天文学では、深い宇宙の写真に写る銀河を数え、明るさごとの個数(光度関数)から、暗くて写らない銀河の数まで補って見積もります。観測可能な宇宙の大きさそのものも、宇宙の膨張の歴史から決まる量です。

📖 式の導出や、さらに先の内容:フェルミ推定(ウィキペディア) / 観測可能な宇宙(ウィキペディア)

研究まだはっきりとはわかっていないこと

つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。見積もりの数字は変わっても、「星は浜の砂粒より多い」というけたの関係は、当面くつがえりそうにありません。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学理科「大地の変化」(れき・砂・泥)、数学「体積」砂の定義、浜の体積
高校化学基礎「物質量(モル)」、地学「銀河と宇宙」水の分子の数、銀河の星の数
高校+粒の詰まり方とすき間すき間を考えた補正
大学堆積学(粒径分布)、天文学(光度関数)見積もりの精度を上げる方法
研究銀河の総数、砂浜の変化まだ幅のある数字
―生活とのつながり大きな数を「10の何乗か」でつかむ感覚
参考・出典
  1. Luijendijk, A. ほか (2018) The State of the World's Beaches. Scientific Reports 8, 6641
  2. CIA, The World Factbook(世界の海岸線の長さ)
  3. Conselice, C. J. ほか (2016) The Evolution of Galaxy Number Density at z < 8 and Its Implications. The Astrophysical Journal 830, 83
  4. アボガドロ定数(ウィキペディア)
  5. 国立天文台 編『理科年表』丸善出版

※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。砂浜の幅や深さは説明のための仮定で、実際の値は場所によって大きく異なります。