霜柱は、なぜ土の中から生えてくるの?
― 上から降るのではなく、下から押し上げられています
冬の朝、地面を踏むとサクサクと崩れる細い氷の柱。あれは空から降ってきたものではありません。土の中にあった水が、細いすき間を通って上へ運ばれ、地面のすぐ上で凍り続けた結果できたものとされています。氷は柱の下の端に足されていきます。だから柱は、下から押し上げられるように伸びていきます。
よく晴れた冬の朝、校庭のすみや畑のわきを歩くと、足の下でサクサクと音がします。
しゃがんで見ると、細い氷の柱がびっしりと立っています。高さは数センチ、白くて、少し曲がっているものもあります。
よく見ると、柱のいちばん上に、土のかけらがちょこんと乗っています。ここが不思議なところです。
霜柱ができる理由は、2つだけ
土のつぶとつぶのあいだには、髪の毛よりずっと細いすき間があります。水はこの細い道を、自分から登っていく性質を持っています。
登ってきた水は、地面のすぐ上の冷たい場所で凍ります。凍る場所がそこに保たれるので、先にできた氷は上へ押し上げられます。
この2つが同時に起きているあいだ、柱は伸び続けます。柱の上に土が乗っているのは、いちばん最初に持ち上げられた地面の表面が、そのまま天井として運ばれているからです。順番に見ていきます。
水は、細い道ほど高く登る
細いガラス管の先を水につけると、水は管の中をひとりでに登っていきます。管が細いほど、高く登ります。水どうしが引き合う力と、水が管の壁に引かれる力の、つり合いで決まる現象です。土のつぶのすき間も、同じ細い管のはたらきをします。
冬の朝の地面では、この「登る水」が氷の材料になります。地表の水が凍ってなくなると、そのぶんを埋めるように、下の湿った土から水が引かれて登ってきます。地面の下は0℃より高いことが多く、水はまだ凍っていません。つまり材料は、下からいくらでも供給されるのです。
氷は、柱の「下の端」で新しくできる
図1の右を見てください。柱の上に土が乗っているのは、氷が上に積もったのではない証拠です。もし空から降ってきたのなら、土は氷の下になります。
実際に起きているのはこうです。まず、地面のいちばん上の水が凍り、うすい氷の層になります。その氷が、下から登ってきた水を受け取って、氷の下側に新しい氷を足していきます。凍る場所は地面のすぐ上に保たれたままなので、先にできた氷は行き場を失い、上へ押し上げられます。地面の表面にあった土のかけらも、いっしょに持ち上がります。
柱がまっすぐ縦の筋になるのは、水が登ってくる道と、押し上げられる向きが、どちらも上下方向だからです。一晩で数センチメートル、条件がそろえば10センチメートル近くまで伸びることもあるとされています。
すき間が太すぎても細すぎても、うまくいきません。砂はつぶが大きく、すき間が太いので、水を高く引き上げる力が弱くなります。逆に粘土はすき間が細かすぎて、水がなかなか流れません。畑の土や関東ローム層のような、その中間の細かさの土でよく育つとされています。
地面の中で同じことが大きな規模で起きると、氷のかたまりが層をつくり、地面全体をゆっくり押し上げます。これは「凍上(とうじょう)」と呼ばれ、寒い地方では道路の舗装が波打つ原因になるとされています。霜柱は、その小さな見本です。
まとめ
霜柱は、空から降った氷ではありません。土の中の水が細いすき間を登ってきて、地面のすぐ上で凍り続けます。その氷が柱の下の端に足されるので、先にできた部分が上へ押し上げられます。柱の先に土が乗っているのは、その動かぬ証拠です。
霜柱は、降ってきた氷ではありません。
土の中の水が、下から押し上げてつくった氷です。
同じ冬の朝でも、草の上につく水滴や氷は、まったく別のしくみです。空気中の水蒸気が冷たい面で水に変わる話は「雨も降っていないのに、朝の草はなぜ濡れているの?」で、氷の結晶が六角形になる理由は「雪はなぜ六角形なの?」で説明しています。氷が水に浮く不思議については「なぜ氷は水に浮くの?」もどうぞ。
- よく晴れて風の弱かった翌朝、最低気温が0℃前後の日を選びます。日が当たる前の時間帯が狙い目です。
- 花壇や畑のような、細かい土の地面を探します。砂場やアスファルトのわきでは、ほとんど見つかりません。
- 柱を1本そっとつまみ上げ、いちばん上に土のかけらが乗っているか確かめます。乗っていれば、下から押し上げられた証拠です。
よその家の庭や畑には入らないでください。また、霜柱がとけた地面はぬかるんで滑りやすくなります。足元に気をつけて観察してください。
もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
- 中学中学校の理科で習う範囲
- 高校高校の「物理基礎・化学基礎」で習う範囲
- 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
- 大学高校では習わない、大学の専門科目(地盤工学・低温科学)の内容
- 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話
中学用語:この現象には名前があります
- 霜柱(しもばしら):地面から立ち上がる細い氷の柱。土の中の水が地表付近で凍り続けてできます。
- 毛管現象(もうかんげんしょう):細い管やすき間の中を、水がひとりでに登っていく現象。
- 凍上(とうじょう):地面の中に氷の層ができて、地面全体が持ち上げられること。
- 分離氷(ぶんりひょう):土のつぶを押しのけてできる、まとまった氷の層。霜柱も、地表に出たその一種と考えられています。
中学高校式で確かめる:細いすき間ほど、水はどこまで登れるか
土のつぶのすき間を、半径0.01ミリメートルの細い管に見立てて計算してみます。使うのは、水の表面張力と重さのつり合いだけです。
| 水の表面張力(0℃付近) | 約 0.073 ニュートン毎メートル |
| 水の密度 | 約 1000 キログラム毎立方メートル |
| 重力の大きさ | 約 9.8 メートル毎秒毎秒 |
| すき間の半径 | 0.00001 メートル(0.01ミリメートル) |
| 記号 | 意味と単位 |
| 表面張力 | 水面が縮もうとする力の強さ[ニュートン毎メートル] |
| 密度 | 1立方メートルあたりの重さ[キログラム] |
| 重力の大きさ | 落ちるときに1秒ごとに増える速さ[メートル毎秒毎秒] |
| すき間の半径 | 土のつぶのあいだの細い通り道の太さ[メートル] |
| 持ち上げる側のもと | 0.073 × 2 = 0.146 |
| 重さの側のもと | 1000 × 9.8 = 9800 |
| すき間の細さを反映する | 9800 × 0.00001 = 0.098 |
| 登れる高さ(メートル) | 0.146 ÷ 0.098 ≒ 1.49 |
| センチメートルに直す | 1.49 × 100 = 149 |
半径0.01ミリメートルのすき間なら、水は計算上149センチメートルまで登れることになります。霜柱の高さは数センチメートルですから、材料を運び上げる力としては十分すぎるほどです。実際の土では通り道が曲がりくねっているので、これほど速くは動きません。それでも「下から水が来る」ことは、無理のない話だとわかります。
高校高校+なぜ氷は「下の端」で育つのか
高校水が氷に変わるとき、熱を出します。この熱は、冷たい空気に向かって上へ逃げていきます。つまり、いちばん熱を捨てやすいのは、すでにできている氷のすぐ下です。氷が育つ場所がそこに落ち着くのは、このためです。
高校+もうひとつ、土のつぶの表面には、0℃より低くても凍りきらない、ごく薄い水の膜が残るとされています。この膜を通って、下の水が凍る面へ引かれていきます。氷は土のつぶを押しのけて成長し、そのぶん上のものを持ち上げます。押しのける力は、条件によっては1平方センチメートルあたり数キログラム相当にもなるとされています。
大学地盤工学から見た凍上
地盤工学では、地面の中に氷の層ができて土を押し上げる現象を「凍上」と呼び、寒冷地の設計で必ず考えます。凍る面へ水を引き寄せる働きは「凍結吸引」と呼ばれ、薄い水の膜の圧力の差で説明されます。土の細かさ、水の供給、冷え方の速さという3つの条件がそろったときに強く起こるとされ、逆に水を切る層を入れると抑えられます。霜柱は、この現象が地表に出て、押し上げる相手が空気しかない場合にあたります。
研究まだはっきりとはわかっていないこと
- 薄い水の膜の厚さ。 氷と土のつぶのあいだに残る水の膜が、温度によってどれだけ薄くなるのかは、測るのが難しく、値に幅があるとされています。
- 凍上の量の予測。 土の種類ごとに、どれだけ地面が持ち上がるかを事前に精度よく予測することは、いまも簡単ではないとされています。
- 気候の変化との関係。 冬の冷え込みや積雪の変化が、地面の凍り方や凍上の起こり方をどう変えるのかは、地域ごとに調べられている最中です。
つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。足元の小さな氷の柱にも、まだ研究の続いている部分が残っています。
教科書とのつながり(レベル別)
| レベル | 科目・単元 | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 中学 | 理科・状態変化/水のすがた | 水が氷に変わること、凍る温度 |
| 高校 | 物理基礎・化学基礎(表面張力、凝固と熱) | 細いすき間を水が登る計算、氷が下で育つ理由 |
| 高校+ | 発展・コラム(界面の水、細い管の圧力) | 凍りきらない薄い水の膜、押し上げる力 |
| 大学 | 地盤工学・低温科学(凍上、凍結吸引) | 氷の層と、寒冷地の設計 |
| 研究 | 低温科学・寒地土木(進行中) | 水の膜の厚さ、凍上の量の予測、気候変化との関係 |
| ― | 生活とのつながり | 花壇の土は浮き、砂場は変わらない。冬の道路の傷み |
- 気象庁の気象観測に関する解説(霜・霜柱・最低気温の観測について)。
- 寒地土木研究所ほかによる、寒冷地の道路の凍上と凍上を抑える層に関する技術資料。
- 高校「物理基礎」「化学基礎」教科書の、表面張力・毛管現象・状態変化の項。
- Taber, S., "The Mechanics of Frost Heaving", Journal of Geology, 1930.(氷の層が育つしくみを示した古典的な研究)
※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。霜柱のできやすさは、土の種類・水分・冷え方によって大きく変わります。凍った地面や、とけた直後の地面は滑りやすくなることがあります。足元に十分注意し、自治体や施設の注意表示に従ってください。