日常のふしぎ 人体 予備知識なしでOK 読了 約6分

しもやけは、なぜ真冬より「寒暖差の大きい日」にできるの?
― 指先の血管は、縮むのは速く、もとに戻るのは遅いのです

しもやけは、指が凍ってできるものではありません。冷えて細くなった血管が、温まったときに「出口だけ」もとに戻りきらない。その間に血がたまり、にじみ出す。冷えと温まりを何度もくり返す季節の変わり目にこそ、できやすくなります。

公開:2026.11.02 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、こんな場面を思い浮かべてください

朝は息が白いのに、昼には上着がいらないほど暖かい。そんな初冬の日が何日か続いたころです。

夜、お風呂上がりにこたつへ足を入れると、足の指がむずむずとかゆくなってきました。見ると、小指が赤紫にふくらんでいます。

雪国の真冬でもないのに、なぜでしょう。しかも、かゆくなるのは冷えているときではなく、温まったときなのです。

理由は、大きく分けて2つあります

1
冷えると、指先の細い血管がぎゅっと縮む

体は熱を逃がさないよう、手足の先の血管を細くします。血管の太さが半分になると、流れる血の量は16分の1まで減ります。

2
温まると、入口が先に開き、出口が遅れる

血を送りこむ側の血管はすぐ開くのに、血を戻す側の血管はなかなか開きません。行き場をなくした血がたまり、血管の外へにじみ出ます。

つまりしもやけは、「寒さ」そのものより「冷える→温まる」の切りかえで起きます。1日の中で何度も、気温の上下に振りまわされることが引き金になるのです。

血管が少し細くなるだけで、血の流れはがくんと減ります

指先や耳たぶ、鼻の先は、体の中心から遠く、外に突き出しています。熱がいちばん逃げやすい場所です。そこで体は寒さを感じると、皮ふの近くを通る細い血管をしぼり、温かい血を体の奥にとどめます。

このしぼり方の効き目は、思った以上に大きいものです。管を流れる液体の量は、管の太さ(半径)の4乗に比例するとされています。半径が半分になれば、流れは半分ではなく16分の1です。図1のつまみで、血管の太さを変えてみてください。

血管の断面(左) 外の輪=血管の壁、内側=血の通り道 流れる血の量(右の横棒) ふだん(温かいとき)=100% いまの太さでの流れ 流れ 100.0%(1/1.0)
つまみを左へ動かすと、血管が細くなり、流れが急に減ります
図1:血管の太さと、流れる血の量の関係。左の内側の円が血の通り道、右の下の横棒がその太さで流れる量です。つまみで太さを半分(0.50)にすると、横棒は16分の1まで縮むことが分かります。

これは体にとって、熱を守るための正しい反応です。困るのは、そのあと温まったときです。

温まると、入口だけが先に開いてしまいます

指先の血の通り道は、ざっくり言えば「入口」と「出口」の2本立てです。心臓から血を運んでくる細い動脈が入口、血を心臓へ戻す静脈が出口にあたります。

冷えた指を急に温めると、入口の動脈はすばやく開きます。ところが出口の側は、冷えて縮んだままの状態がしばらく続くと考えられています。図2を見てください。入ってくる血は増えたのに、出ていく道は細いまま。指先に血がたまって、赤紫にふくらみます。

冷えた指を急に温めた直後 入口(動脈):すぐ開く 指先の細かい血管 血がたまる 出口(静脈):開くのが遅い 点線の矢印:血管の外へ水分がにじみ出し、腫れとかゆみに
図2:しもやけが起きるときの指先の模式図。左の入口からは太い矢印で血が入るのに、右の出口からは細い矢印でしか出ていきません。真ん中にたまった血から、点線の矢印のように水分がしみ出して腫れます。

血がたまって管の中の圧力が上がると、血の中の水分が血管の壁からしみ出します。これが腫れです。さらに、くり返し冷やされた血管のまわりでは炎症が起き、かゆみや痛みが出ると考えられています。

だから「寒い日が1日だけ」ではなりにくいのです。日本では、最低気温が4〜5℃前後で、1日の寒暖差が10℃をこえるような時期に多いとされています。凍るほど寒い真冬より、初冬や春先に増えるのはこのためです。

💡 濡れた靴下は、気温より手ごわい

水は空気よりずっと速く熱を奪います。汗で湿った靴下や、雪遊びで濡れた手袋のまま過ごすと、気温がそれほど低くなくても指先は強く冷えます。しもやけが子どもの足に多いのは、外遊びで濡れやすいことも一因とされています。

💡 「凍傷」とは別のもの

凍傷は、皮ふや肉が実際に凍って傷むものです。しもやけは凍らない温度で起きる、血の流れの乱れです。ただし、紫が黒っぽく変わる、水ぶくれがやぶれて治らない、といった場合は皮ふ科を受診してください。

じゃあ、どうすればいいの?

しくみが分かると、防ぎ方もはっきりします。ポイントは「冷やさない」「濡れたままにしない」「急に温めない」の3つです。冷えた足をいきなり熱いお湯やストーブに近づけると、入口と出口のずれが最も大きくなります。ぬるめのお湯で、ゆっくり戻しましょう。

まとめ

しもやけは、寒さに耐えられなかった跡ではありません。冷えるたびに血管を細くし、温まるたびに広げ直す。その切りかえを何度も強いられた指先が、出口の遅れについていけなくなった跡です。

しもやけをつくるのは、寒さではなく「寒さと暖かさの往復」。
ゆっくり温めるのが、いちばんの予防です。

寒さで指先がうまく動かなくなるしくみは「寒い日に手がかじかむと、なぜボタンひとつ留められないの?」で、もっと寒い場合の危険は「低体温症は、なぜ『そこまで寒くない日』でも起きるの?」で解説しています。

🧪 自分の指で、血管の「しぼり」と「戻り」を見てみよう
  1. 片手の指先を、冷たい水(水道水に氷を数個入れた程度)に30秒ほどつけます。冷たすぎて痛いときはすぐやめます。
  2. 取り出して、もう片方の手と爪の色をくらべます。冷やした指の爪は白っぽく、血の気が引いて見えるはずです。
  3. そのまま室温で数分待ちます。爪の色がだんだん赤みを取りもどし、一時はもう片方より赤くなることもあります。

白くなるのが血管のしぼり、赤みが戻るのが血管の開き直しです。しもやけがある人や、指の色が強く変わる体質の人は試さないでください。

もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「生物」「物理」で習う範囲
  • 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(生理学・流体力学・皮膚科学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:この現象には名前があります

中学高校式で確かめる:血管が半分の太さになると、流れはどれだけ減る?

細い管をゆっくり流れる液体の量は、管の半径の4乗に比例します。血の流れにもおおよそ当てはまるとして、指先の血管がしぼられたときの流れを計算します。

⓪ もとになる式
記号で書くとQ = π × r⁴ × ΔP ÷ ( 8 × η × L )
言葉で書くと流れる量 = 円周率 × 半径の4乗 × 両端の圧力差 ÷(8 × 液体のねばりけ × 管の長さ)
どこから来る式か管の両端の圧力差で押す力と、管の壁ぞいに液体がこすれる「ねばりけ」の力がつり合う、という条件から導かれる(ハーゲン・ポアズイユの式)
① もとになる数値
記号 Q流れる量(1秒あたりの体積)
記号 r管の半径。ここでは「ふだんを1とした比」で考える
記号 ΔP、η、L圧力差・ねばりけ・長さ。しぼる前後で変わらないとみなす
しぼられた血管の半径ふだんの 0.5 倍(説明のための例)
少しだけしぼられた血管の半径ふだんの 0.8 倍(説明のための例)
② 計算してみる
半径0.5倍:まず2乗0.5 × 0.5 = 0.25
さらに2乗して4乗に0.25 × 0.25 = 0.0625
ふだんの何分の1か1 ÷ 0.0625 = 16
半径0.8倍:まず2乗0.8 × 0.8 = 0.64
さらに2乗して4乗に0.64 × 0.64 ≒ 0.41
1日の寒暖差の例(最高12℃・最低2℃)12 − 2 = 10

半径を2割しぼるだけで、流れは約4割に落ちます。半分にすれば16分の1です。ほんの少しの太さの変化で、指先に届く熱の量は大きく変わります。だからこそ、出口側の戻りが少し遅れるだけで、入ってくる血と出ていく血の量に大きな差が生まれ、血がたまるのです。

高校高校+体温を守るしくみと、その副作用

高校皮ふの血管の太さは、自律神経のうち交感神経が調節しています。寒いと交感神経がはたらいて血管がしぼられ、暑いとゆるんで熱を逃がします。高校生物の「恒常性(ホメオスタシス)」の典型例です。

高校+指先には、動脈と静脈を毛細血管を通さずに直接つなぐ「動静脈吻合(ふんごう)」という近道があります。寒いときにはここが閉じ、温まると大きく開きます。この近道の開け閉めが、指先の血の流れを大きく揺れ動かすとされています。

大学微小循環と寒冷血管反応

大学の生理学では、細い血管での血の流れを「微小循環」として扱います。細い管の流れの基本はハーゲン・ポアズイユの式で、半径の4乗則はここから出てきます。ただし血液は赤血球を含むため、とても細い血管では見かけのねばりけが変わる(ファーレウス・リンドクヴィスト効果)などの補正が必要です。また、指を冷水につけ続けると、いったん縮んだ血管が周期的に開いては閉じる寒冷血管拡張反応(ハンティング反応)が知られています。皮膚科学では、しもやけは凍瘡として、寒冷刺激に対する血管の異常な反応と炎症として説明されます。

📖 式の導出や、さらに先の内容:ハーゲン・ポアズイユ流れ(ウィキペディア) / 凍瘡(ウィキペディア)

研究まだはっきりとはわかっていないこと

つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。入口と出口の戻りの速さのずれという説明も、よく使われる考え方の一つとして読んでください。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学理科2年「血液の循環」動脈と静脈、入口と出口の話
高校生物「自律神経と恒常性」寒いと皮ふの血管がしぼられるしくみ
高校+生物の発展「体温調節」指先の動静脈吻合
大学生理学・流体力学・皮膚科学ハーゲン・ポアズイユの式、寒冷血管拡張反応、凍瘡
研究血管生物学・皮膚科学体質の差、炎症の始まり方
―生活とのつながり濡れた靴下を替える、冷えた足はぬるめのお湯でゆっくり温める
参考・出典
  1. ウィキペディア「凍瘡」
  2. ウィキペディア「ハーゲン・ポアズイユ流れ」
  3. 本郷利憲・廣重力ほか監修『標準生理学』医学書院(体温調節・循環の章)
  4. 清水宏『あたらしい皮膚科学』中山書店(凍瘡の項)

※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。症状が強い、長引く、色が黒っぽく変わるといった場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。