自然のふしぎ 天文・宇宙 予備知識なしでOK 読了 約6分

流れ星は、なぜ真夜中すぎのほうがたくさん見えるの?
― 明け方の空は、地球が進んでいく「前の窓」です

流星群のニュースでは、決まって「夜半すぎから明け方がおすすめ」と言われます。夜ふかしさせたいわけではありません。真夜中をすぎると、あなたの立っている場所は、宇宙を突き進む地球の「進行方向」へ回り込んでいくのです。

公開:2026.10.27 難易度:★☆☆(予備知識なしで読めます) 数式が出てくるのは最後の折りたたみだけ
まず、こんな場面を思い浮かべてください

10月の下旬、オリオン座流星群の日。夜9時にベランダへ出て30分見上げたのに、流れ星は1つも見えませんでした。

ところが翌朝、明け方4時ごろに起きた家族は「3つも見えたよ」と言います。同じ空、同じ流星群なのに、時間が違うだけです。

運が悪かったのでしょうか。じつは、そうではありません。夜の早い時間と明け方とでは、空の「向き」そのものが違っているのです。

明け方に多く見える理由は、2つあります

1
明け方の空は、地球の進む向きを向いている

地球は太陽のまわりを、秒速およそ30キロメートルで進んでいます。明け方の空はその進行方向を向いているので、宇宙のかけらに正面からぶつかっていきます。

2
流れ星が出てくる点が、空の高くへ昇ってくる

流星群の流れ星は、星座の中の1点から飛び出すように見えます。この点が地平線の近くにあるうちは、流れ星の多くが地面の下に隠れてしまいます。

1つ目は、流星群でなくても、ふだんの夜にいつも働いているしくみです。2つ目は、流星群ごとに決まった時刻の事情です。順番に見ていきます。

雨の日の車と同じ。前の窓には、たくさん当たる

雨の中を車で走ると、前の窓にはたくさんの雨粒が当たります。後ろの窓には、ほとんど当たりません。車が雨粒に向かって進んでいるからです。

宇宙空間には、砂粒ほどの小さなかけらが無数に漂っています。地球はその中を、秒速およそ30キロメートルで突き進んでいます。地球にとっての「前の窓」は、どこでしょうか。

図1を見てください。地球は自転もしています。その結果、地球の進行方向を向くのは、ちょうど朝6時ごろの場所になります。真夜中をすぎると、あなたの頭の上の空は、だんだん「前の窓」へ回り込んでいくのです。

太陽 太陽の光 地球 正午 真夜中 明け方6時 夕方6時 地球の進む向き(秒速 約30km) 上側=前の窓(明け方の空) 正面から次々にぶつかる ぶつかる速さも大きい 下側=後ろの窓(夕方の空) 追いついてきたものだけ ぶつかる速さも小さい 北極の上から見た図
図1:太陽のまわりを進む地球を、北極の上から見た図。左の太陽に照らされた側が昼です。地球は上へ進んでいるので、上側の「明け方6時」の空が前の窓になり、実線の矢じりのないかけらが正面から当たります。下側の「夕方6時」の空には、点線の矢印のように、後ろから追いついたものだけが届きます。

前の窓に当たるかけらは、数が多いだけではありません。地球の速さが上乗せされるので、ぶつかる速さも大きくなります。速くぶつかるほど明るく光るので、暗い流れ星まで見えやすくなります。夕方の空にくらべ、明け方の空の流れ星は2倍以上になるとされています。

流れ星の「ふき出し口」が、空を昇ってくる

流星群の流れ星は、彗星などが通り道に残していったかけらの帯に、地球が飛び込むことで起きます。かけらはみな同じ向きから平行に飛んでくるので、空の1点から四方へ飛び出すように見えます。この点を「放射点」と呼びます。

線路が遠くの1点に集まって見えるのと同じで、見かけの効果です。放射点は星座といっしょに、東から昇って西へ沈みます。

図2のつまみで、放射点の高さを変えてみてください。放射点が地平線すれすれのとき、流れ星の半分近くは地面の下へ向かって飛び、見えません。放射点が高く昇るほど、空全体に流れ星が広がり、見える数が増えます。

地平線(この下に向かう流れ星は見えない) 見ている人 黄色い点=放射点 白い線=流れ星の飛ぶ向き 天頂なら 20個 約10個 1時間に見える数 (よく晴れた暗い空での目安)
つまみを動かすと、放射点の位置と、1時間に見える流れ星の数が変わります
図2:放射点の高さと、見える流れ星の数。左の弧の上を動く黄色い点が放射点で、白い線は流れ星の飛ぶ向きです。放射点が低いと、下向きの線は地平線の下に隠れます。右の棒は、放射点が真上にあれば1時間に20個見える流星群のとき、実際に見える数の目安です。つまみで高さを変えると、低いほど棒が短くなることが分かります。

オリオン座流星群の放射点は、オリオン座の近くにあります。日本では夜10時ごろに東から昇り、明け方にいちばん高くなります。1つ目の「前の窓」と2つ目の「放射点の高さ」が、どちらも明け方に味方するのです。

💡 冬至のころの「ふたご座流星群」は例外

12月のふたご座流星群は、放射点が夜8時ごろにはもう東の空に昇っています。そのため、夜の早い時間からよく見えるとされています。流星群ごとに、放射点が昇る時刻を確かめるのがコツです。

まとめ

明け方の空は、宇宙を進む地球の「前の窓」です。かけらに正面からぶつかるので数が多く、速くぶつかるので明るく光ります。さらに流星群では、流れ星が飛び出してくる放射点が、夜がふけるほど高く昇ります。

流れ星は、待つものではなく、迎えにいくもの。
明け方の地球は、かけらの雨の中へ顔から飛び込んでいます。

流れ星そのものの正体が砂粒ほどの大きさだという話は「流れ星は、どれくらいの大きさなの?」で、空から石が降ってくることを人々がなかなか信じなかった歴史は「隕石の記事」で読めます。

🧪 夜の早い時間と明け方で、流れ星の数をくらべる
  1. 流星群の日に、街灯の少ない安全な場所を選びます。子どもは必ず大人といっしょに、暖かい服装で出かけます。
  2. 夜9時ごろと、明け方4時ごろに、それぞれ15分ずつ空を広く見上げ、見えた流れ星の数を数えます。目が暗さに慣れるまで、最初の数分は数えません。
  3. 流れ星の飛んだ向きを、手を伸ばして後ろへたどってみます。何本かをたどると、1つの点から出ているように見えるはずです。

月が明るい夜や雲の多い夜は、数が大きく減ります。数がばらつくのは自然なことなので、何回かくり返してくらべてみてください。

もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
この先に出てくるラベルの見方
  • 中学中学校の理科で習う範囲
  • 高校高校の「物理基礎」「地学」で習う範囲
  • 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
  • 大学高校では習わない、大学の専門科目(天文学・惑星科学)の内容
  • 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話

中学用語:この現象には名前があります

中学高校式で確かめる:1時間に、いくつ見えるのか

オリオン座流星群の天頂出現数は、およそ20とされています。放射点の高さで見える数がどう変わるかを、式で出してみます。あわせて、前の窓と後ろの窓で、ぶつかる速さがどれだけ違うかも計算します。

⓪ もとになる式
記号で書くとN = ZHR × sin h  (ぶつかる速さ v = u ± V)
言葉で書くと1時間に見える数 = 天頂出現数 × 放射点の高さの正弦(サイン)。ぶつかる速さ = かけらの速さ ± 地球の速さ
どこから来る式か斜めから降る雨が、水平な地面の単位面積に当たる量が減るのと同じ「斜めの入射」の考え方。速さのほうは、向かい合えば足し、同じ向きなら引く、相対速度の考え方です。
① もとになる数値
記号の意味N:1時間に見える数、ZHR:天頂出現数、h:放射点の高さ(度)
オリオン座流星群の天頂出現数およそ 20 個/時 とされる
放射点の高さ 30度の正弦0.5
放射点の高さ 70度の正弦(東京付近での最も高い位置)およそ 0.94
地球の公転の速さ V秒速 約 30 km
地球の位置で、太陽系にとどまれる最大の速さ u秒速 約 42 km
② 計算してみる
放射点が30度のとき20 × 0.5 = 10 個/時
放射点が70度のとき(明け方)20 × 0.94 = 18.8 個/時
明け方は、30度のときの何倍か18.8 ÷ 10 ≒ 1.9 倍
前の窓で、正面からぶつかる最大の速さ42 + 30 = 72 km/秒
後ろの窓で、追いついてくる最小の速さ42 - 30 = 12 km/秒
速さの比72 ÷ 12 = 6 倍
運動のエネルギーは速さの2乗に比例するので6 × 6 = 36 倍

同じ大きさのかけらでも、前の窓に飛び込むものは、後ろの窓のものの最大36倍ものエネルギーを光と熱に変えます。実際には地球の引力で少し加速されるため、最も遅い流れ星でも秒速11km程度とされ、流れ星の速さはおよそ秒速11〜72kmの範囲に収まります。オリオン座流星群は秒速約66kmと、とくに速い流星群です。

高校高校+速さの足し算と、遠近法

高校物理基礎で学ぶ「相対速度」そのものです。地球から見たかけらの速さは、かけらの速さから地球の速さを引いたもの(向きを含めたベクトルの引き算)になります。運動エネルギーは質量×速さの2乗÷2で表されるので、速さの差は明るさの差として大きく効きます。

高校+放射点は、平行な直線が遠くの1点に集まって見える「消失点」と同じ見かけの効果です。放射点の位置は、地球の公転による向きのずれも含めて決まります。そのため、同じ流星群なら毎年ほぼ同じ星座の中に現れます。

大学天頂出現数の補正と、母天体

観測した数から天頂出現数(ZHR)を出すときは、放射点の高さに加えて、その夜に肉眼で見えるいちばん暗い星の等級(最微光星等級)や、雲で隠れた割合も補正します。オリオン座流星群と5月のみずがめ座エータ流星群は、どちらもハレー彗星が残したかけらが母天体とされています。地球はハレー彗星の軌道の近くを、1年に2回通り抜けているのです。流星群に属さない「散在流星」の数が明け方に多くなることは、地球の向点の向きと結びつけて説明されます。

📖 式の導出や、さらに先の内容:ウィキペディア「天頂出現数」 / ウィキペディア「流星群」

研究まだはっきりとはわかっていないこと

つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。流星群の数は年によって大きく変わるので、ここでの数は目安として受け取ってください。

教科書とのつながり(レベル別)

レベル科目・単元この記事のどこ
中学理科・地球と宇宙(地球の自転と公転)明け方の空が地球の進行方向を向くこと
高校物理基礎・相対速度、地学・太陽系の小天体ぶつかる速さの足し算と引き算
高校+遠近法と消失点、運動エネルギー放射点が1点に見える理由、明るさの差
大学天文学・惑星科学(流星天文学)天頂出現数の補正、母天体、向点
研究ダストトレイルの計算、散在流星の起源大出現の予報、暗い流れ星の観測
―生活とのつながり流星群を見に行く時刻の選び方
参考・出典
  1. 国立天文台 編『理科年表』丸善出版(流星群の一覧)
  2. 国立天文台「ほしぞら情報」(各流星群の解説)
  3. International Meteor Organization, "Meteor Shower Calendar"
  4. ウィキペディア「天頂出現数」
  5. 長沢工『流星と流星群』地人書館

※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。夜間の観察は、足元の安全な場所で、子どもは大人といっしょに行ってください。