流れ星は、なぜ真夜中すぎのほうがたくさん見えるの?
― 明け方の空は、地球が進んでいく「前の窓」です
流星群のニュースでは、決まって「夜半すぎから明け方がおすすめ」と言われます。夜ふかしさせたいわけではありません。真夜中をすぎると、あなたの立っている場所は、宇宙を突き進む地球の「進行方向」へ回り込んでいくのです。
10月の下旬、オリオン座流星群の日。夜9時にベランダへ出て30分見上げたのに、流れ星は1つも見えませんでした。
ところが翌朝、明け方4時ごろに起きた家族は「3つも見えたよ」と言います。同じ空、同じ流星群なのに、時間が違うだけです。
運が悪かったのでしょうか。じつは、そうではありません。夜の早い時間と明け方とでは、空の「向き」そのものが違っているのです。
明け方に多く見える理由は、2つあります
地球は太陽のまわりを、秒速およそ30キロメートルで進んでいます。明け方の空はその進行方向を向いているので、宇宙のかけらに正面からぶつかっていきます。
流星群の流れ星は、星座の中の1点から飛び出すように見えます。この点が地平線の近くにあるうちは、流れ星の多くが地面の下に隠れてしまいます。
1つ目は、流星群でなくても、ふだんの夜にいつも働いているしくみです。2つ目は、流星群ごとに決まった時刻の事情です。順番に見ていきます。
雨の日の車と同じ。前の窓には、たくさん当たる
雨の中を車で走ると、前の窓にはたくさんの雨粒が当たります。後ろの窓には、ほとんど当たりません。車が雨粒に向かって進んでいるからです。
宇宙空間には、砂粒ほどの小さなかけらが無数に漂っています。地球はその中を、秒速およそ30キロメートルで突き進んでいます。地球にとっての「前の窓」は、どこでしょうか。
図1を見てください。地球は自転もしています。その結果、地球の進行方向を向くのは、ちょうど朝6時ごろの場所になります。真夜中をすぎると、あなたの頭の上の空は、だんだん「前の窓」へ回り込んでいくのです。
前の窓に当たるかけらは、数が多いだけではありません。地球の速さが上乗せされるので、ぶつかる速さも大きくなります。速くぶつかるほど明るく光るので、暗い流れ星まで見えやすくなります。夕方の空にくらべ、明け方の空の流れ星は2倍以上になるとされています。
流れ星の「ふき出し口」が、空を昇ってくる
流星群の流れ星は、彗星などが通り道に残していったかけらの帯に、地球が飛び込むことで起きます。かけらはみな同じ向きから平行に飛んでくるので、空の1点から四方へ飛び出すように見えます。この点を「放射点」と呼びます。
線路が遠くの1点に集まって見えるのと同じで、見かけの効果です。放射点は星座といっしょに、東から昇って西へ沈みます。
図2のつまみで、放射点の高さを変えてみてください。放射点が地平線すれすれのとき、流れ星の半分近くは地面の下へ向かって飛び、見えません。放射点が高く昇るほど、空全体に流れ星が広がり、見える数が増えます。
オリオン座流星群の放射点は、オリオン座の近くにあります。日本では夜10時ごろに東から昇り、明け方にいちばん高くなります。1つ目の「前の窓」と2つ目の「放射点の高さ」が、どちらも明け方に味方するのです。
12月のふたご座流星群は、放射点が夜8時ごろにはもう東の空に昇っています。そのため、夜の早い時間からよく見えるとされています。流星群ごとに、放射点が昇る時刻を確かめるのがコツです。
まとめ
明け方の空は、宇宙を進む地球の「前の窓」です。かけらに正面からぶつかるので数が多く、速くぶつかるので明るく光ります。さらに流星群では、流れ星が飛び出してくる放射点が、夜がふけるほど高く昇ります。
流れ星は、待つものではなく、迎えにいくもの。
明け方の地球は、かけらの雨の中へ顔から飛び込んでいます。
流れ星そのものの正体が砂粒ほどの大きさだという話は「流れ星は、どれくらいの大きさなの?」で、空から石が降ってくることを人々がなかなか信じなかった歴史は「隕石の記事」で読めます。
- 流星群の日に、街灯の少ない安全な場所を選びます。子どもは必ず大人といっしょに、暖かい服装で出かけます。
- 夜9時ごろと、明け方4時ごろに、それぞれ15分ずつ空を広く見上げ、見えた流れ星の数を数えます。目が暗さに慣れるまで、最初の数分は数えません。
- 流れ星の飛んだ向きを、手を伸ばして後ろへたどってみます。何本かをたどると、1つの点から出ているように見えるはずです。
月が明るい夜や雲の多い夜は、数が大きく減ります。数がばらつくのは自然なことなので、何回かくり返してくらべてみてください。
もっと知りたい人へ ― 用語・数式・教科書とのつながり中学理科から大学の専門科目まで、どのレベルの話かを明示しています
- 中学中学校の理科で習う範囲
- 高校高校の「物理基礎」「地学」で習う範囲
- 高校+高校の発展、または教科書のコラム扱いの内容
- 大学高校では習わない、大学の専門科目(天文学・惑星科学)の内容
- 研究大学でも「定説」として教わらない、いま研究者が調べている最中の話
中学用語:この現象には名前があります
- 流星群:彗星などが軌道に残したかけらの帯を地球が通り抜けるとき、毎年ほぼ同じ時期に流れ星が増える現象。
- 放射点(輻射点):流星群の流れ星が飛び出してくるように見える、空の1点。平行に飛ぶかけらが、遠近法で1点に集まって見えるもの。
- 向点(こうてん):地球が公転で進んでいく向きにあたる空の点。地方時の朝6時ごろ、南の空の高いところを通る。
- 天頂出現数:放射点が真上にあり、よく晴れた暗い空で、1人が1時間に見られるとした流れ星の数。流星群の「強さ」をくらべる物差し。
中学高校式で確かめる:1時間に、いくつ見えるのか
オリオン座流星群の天頂出現数は、およそ20とされています。放射点の高さで見える数がどう変わるかを、式で出してみます。あわせて、前の窓と後ろの窓で、ぶつかる速さがどれだけ違うかも計算します。
| 記号で書くと | N = ZHR × sin h (ぶつかる速さ v = u ± V) |
| 言葉で書くと | 1時間に見える数 = 天頂出現数 × 放射点の高さの正弦(サイン)。ぶつかる速さ = かけらの速さ ± 地球の速さ |
| どこから来る式か | 斜めから降る雨が、水平な地面の単位面積に当たる量が減るのと同じ「斜めの入射」の考え方。速さのほうは、向かい合えば足し、同じ向きなら引く、相対速度の考え方です。 |
| 記号の意味 | N:1時間に見える数、ZHR:天頂出現数、h:放射点の高さ(度) |
| オリオン座流星群の天頂出現数 | およそ 20 個/時 とされる |
| 放射点の高さ 30度の正弦 | 0.5 |
| 放射点の高さ 70度の正弦(東京付近での最も高い位置) | およそ 0.94 |
| 地球の公転の速さ V | 秒速 約 30 km |
| 地球の位置で、太陽系にとどまれる最大の速さ u | 秒速 約 42 km |
| 放射点が30度のとき | 20 × 0.5 = 10 個/時 |
| 放射点が70度のとき(明け方) | 20 × 0.94 = 18.8 個/時 |
| 明け方は、30度のときの何倍か | 18.8 ÷ 10 ≒ 1.9 倍 |
| 前の窓で、正面からぶつかる最大の速さ | 42 + 30 = 72 km/秒 |
| 後ろの窓で、追いついてくる最小の速さ | 42 - 30 = 12 km/秒 |
| 速さの比 | 72 ÷ 12 = 6 倍 |
| 運動のエネルギーは速さの2乗に比例するので | 6 × 6 = 36 倍 |
同じ大きさのかけらでも、前の窓に飛び込むものは、後ろの窓のものの最大36倍ものエネルギーを光と熱に変えます。実際には地球の引力で少し加速されるため、最も遅い流れ星でも秒速11km程度とされ、流れ星の速さはおよそ秒速11〜72kmの範囲に収まります。オリオン座流星群は秒速約66kmと、とくに速い流星群です。
高校高校+速さの足し算と、遠近法
高校物理基礎で学ぶ「相対速度」そのものです。地球から見たかけらの速さは、かけらの速さから地球の速さを引いたもの(向きを含めたベクトルの引き算)になります。運動エネルギーは質量×速さの2乗÷2で表されるので、速さの差は明るさの差として大きく効きます。
高校+放射点は、平行な直線が遠くの1点に集まって見える「消失点」と同じ見かけの効果です。放射点の位置は、地球の公転による向きのずれも含めて決まります。そのため、同じ流星群なら毎年ほぼ同じ星座の中に現れます。
大学天頂出現数の補正と、母天体
観測した数から天頂出現数(ZHR)を出すときは、放射点の高さに加えて、その夜に肉眼で見えるいちばん暗い星の等級(最微光星等級)や、雲で隠れた割合も補正します。オリオン座流星群と5月のみずがめ座エータ流星群は、どちらもハレー彗星が残したかけらが母天体とされています。地球はハレー彗星の軌道の近くを、1年に2回通り抜けているのです。流星群に属さない「散在流星」の数が明け方に多くなることは、地球の向点の向きと結びつけて説明されます。
📖 式の導出や、さらに先の内容:ウィキペディア「天頂出現数」 / ウィキペディア「流星群」
研究まだはっきりとはわかっていないこと
- 突発的な大出現の予報 母天体の彗星が回帰ごとに残したかけらの筋(ダストトレイル)を計算し、ある年だけ流れ星が急に増える時刻を予報する研究が進んでいます。当たる例も増えましたが、数まで正確に当てるのはまだ難しいとされています。
- 散在流星の「出どころ」 流星群に属さない流れ星も、空のいくつかの方向から多めに来ることが分かっています。それぞれのかけらが、どの彗星や小惑星から来たのかは、まだ調べられている最中です。
- 暗い流れ星の数え方 目では見えない暗い流れ星は、レーダーや高感度カメラで数えられています。目視の天頂出現数と、機械で数えた数をどうつなげるかは、今も議論があります。
つまりこの記事の内容も、「いまわかっている範囲での説明」です。流星群の数は年によって大きく変わるので、ここでの数は目安として受け取ってください。
教科書とのつながり(レベル別)
| レベル | 科目・単元 | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 中学 | 理科・地球と宇宙(地球の自転と公転) | 明け方の空が地球の進行方向を向くこと |
| 高校 | 物理基礎・相対速度、地学・太陽系の小天体 | ぶつかる速さの足し算と引き算 |
| 高校+ | 遠近法と消失点、運動エネルギー | 放射点が1点に見える理由、明るさの差 |
| 大学 | 天文学・惑星科学(流星天文学) | 天頂出現数の補正、母天体、向点 |
| 研究 | ダストトレイルの計算、散在流星の起源 | 大出現の予報、暗い流れ星の観測 |
| ― | 生活とのつながり | 流星群を見に行く時刻の選び方 |
- 国立天文台 編『理科年表』丸善出版(流星群の一覧)
- 国立天文台「ほしぞら情報」(各流星群の解説)
- International Meteor Organization, "Meteor Shower Calendar"
- ウィキペディア「天頂出現数」
- 長沢工『流星と流星群』地人書館
※本記事は一般向けの科学解説です。掲載した数値は、しくみを理解するための目安・概算です。夜間の観察は、足元の安全な場所で、子どもは大人といっしょに行ってください。